島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

文字の大きさ
58 / 105

58.愚妹

しおりを挟む
※ブリス視点

「カリーヌ様、此処がアニエスの屋敷です」

俺は面倒くさいオンナを連れていた。だが、今日の屋敷はいつもと違って物々しい雰囲気に包まれている。殿下の采配でアニエスを守るために、警護の者が見張りをしているのだ。これは返って好都合というもの。

「ふーーん、特別待遇だけど厳重なのねー」
「はい。罪人ですからね」
「普段は何してるの?まさか、お屋敷で監禁じゃないよね?」
「アニエスは早朝から漁港で地引網漁をしてます。勿論、監視を付けてね」
「じっ、地引網りょおお!?」
「はい。魚を採ってるのです」
「はあーー!?それって強制労働ってやつう?」
「いえ、自発的にやってますよ」
「な…!」
 
カリーヌは絶句した。これでも数ヶ月前までは王太子の婚約者で公爵令嬢だったのだ。罪人とは言え、島から出られないだけで自由に過ごせるのはずなのに「何のため?」と、思っているのだろう。最も、それを聞かれても上手く答える自信はない。

余程、地引網漁がショックだったのか、彼女は固まってしまった。話題を変えよう。

「その後は大衆食堂を手伝ってました。あ、最近は敷地内に造った牧場や畑の世話をしてますね」
「し…信じられないわ。何が楽しくてみたいに労働してるわけぇ?」
「さあ。色々と興味がある様ですが…」

いや、平民ではなく罪人だろ。今、彼女は公爵令嬢ではない。そんなことも分からないのか?

「ねえ、ブリス。お姉様を一目見たいわ」
「一目…ですか」

アニエスの居る屋敷へ入れるわけにはいかない。できるだけ対面させたくはないのだ。何とか時間を伸ばそうと俺は牧場ヘと案内してみた。だが、薬草畑でソフィアやバルナバとともにアニエスの姿を捉えてしまう。

おい、屋敷で大人しくしてろって言っただろ!何やってんだ。ったく。まあ、畑まで距離もあるし、アニエスが気づかないことを祈ろう。

「ねえねえ、アレってお姉様よね?」
「ええ、その様です」
「うわー、労働者みたーい!かっこわるう!」

作業着のアニエスが薬草畑に追肥してる姿を眺めながら馬鹿にしてる様だ。そして一段とウキウキした気分になったカリーヌだったが、直ぐに顔をしかめた。

「ううっ…なんかくさ~い!」

確かに肥料の匂いが風に乗って漂ってくる。それに羊やニワトリの獣臭も感じる。まあ、牧場とはそんなものだが、この令嬢は耐えられない様だ。

「ああっ…よくこんな臭い環境で平然としてられるわね!」
「カリーヌ様、そろそろ城へ戻りましょう」
「う…ん。でもその前に…」

ん?何だ?何をする気だ?

彼女は我慢しながら胸いっぱいに臭い空気を吸い込む。そして、徐に叫んだのだ。

「お姉様ああああああああーー!!」

アニエスに向かって両手を大きく振り、自分の存在を最大限アピールする。

「ご苦労さまああああああーー!!」

や、やめろ!馬鹿かお前は!そんなことして喜ぶとでも思っているのか!

その感覚に怒りを通り越して呆れてしまう。

当然、その大声はアニエスにも届く。ニコニコするカリーヌとは対象的に、彼女は俺と同じく呆然と立ち尽していた。

いかん。ショックを受けてるに違いない。突然、現れるはずのない憎っくき愚妹を見てしまったのだ。

「さ、もういいでしよう」

俺は半強制的にカリーヌを連れて帰ることにした。アニエスを、これ以上傷つけたくはない…。



しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

処理中です...