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58.愚妹
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※ブリス視点
「カリーヌ様、此処がアニエスの屋敷です」
俺は面倒くさいオンナを連れていた。だが、今日の屋敷はいつもと違って物々しい雰囲気に包まれている。殿下の采配でアニエスを守るために、警護の者が見張りをしているのだ。これは返って好都合というもの。
「ふーーん、特別待遇だけど厳重なのねー」
「はい。罪人ですからね」
「普段は何してるの?まさか、お屋敷で監禁じゃないよね?」
「アニエスは早朝から漁港で地引網漁をしてます。勿論、監視を付けてね」
「じっ、地引網りょおお!?」
「はい。魚を採ってるのです」
「はあーー!?それって強制労働ってやつう?」
「いえ、自発的にやってますよ」
「な…!」
カリーヌは絶句した。これでも数ヶ月前までは王太子の婚約者で公爵令嬢だったのだ。罪人とは言え、島から出られないだけで自由に過ごせる特別待遇のはずなのに「何のため?」と、思っているのだろう。最も、それを聞かれても上手く答える自信はない。
余程、地引網漁がショックだったのか、彼女は固まってしまった。話題を変えよう。
「その後は大衆食堂を手伝ってました。あ、最近は敷地内に造った牧場や畑の世話をしてますね」
「し…信じられないわ。何が楽しくて平民みたいに労働してるわけぇ?」
「さあ。色々と興味がある様ですが…」
いや、平民ではなく罪人だろ。今、彼女は公爵令嬢ではない。そんなことも分からないのか?
「ねえ、ブリス。お姉様を一目見たいわ」
「一目…ですか」
アニエスの居る屋敷へ入れるわけにはいかない。できるだけ対面させたくはないのだ。何とか時間を伸ばそうと俺は牧場ヘと案内してみた。だが、薬草畑でソフィアやバルナバとともにアニエスの姿を捉えてしまう。
おい、屋敷で大人しくしてろって言っただろ!何やってんだ。ったく。まあ、畑まで距離もあるし、アニエスが気づかないことを祈ろう。
「ねえねえ、アレってお姉様よね?」
「ええ、その様です」
「うわー、労働者みたーい!かっこわるう!」
作業着のアニエスが薬草畑に追肥してる姿を眺めながら馬鹿にしてる様だ。そして一段とウキウキした気分になったカリーヌだったが、直ぐに顔をしかめた。
「ううっ…なんかくさ~い!」
確かに肥料の匂いが風に乗って漂ってくる。それに羊やニワトリの獣臭も感じる。まあ、牧場とはそんなものだが、この令嬢は耐えられない様だ。
「ああっ…よくこんな臭い環境で平然としてられるわね!」
「カリーヌ様、そろそろ城へ戻りましょう」
「う…ん。でもその前に…」
ん?何だ?何をする気だ?
彼女は我慢しながら胸いっぱいに臭い空気を吸い込む。そして、徐に叫んだのだ。
「お姉様ああああああああーー!!」
アニエスに向かって両手を大きく振り、自分の存在を最大限アピールする。
「ご苦労さまああああああーー!!」
や、やめろ!馬鹿かお前は!そんなことして喜ぶとでも思っているのか!
その感覚に怒りを通り越して呆れてしまう。
当然、その大声はアニエスにも届く。ニコニコするカリーヌとは対象的に、彼女は俺と同じく呆然と立ち尽していた。
いかん。ショックを受けてるに違いない。突然、現れるはずのない憎っくき愚妹を見てしまったのだ。
「さ、もういいでしよう」
俺は半強制的にカリーヌを連れて帰ることにした。アニエスを、これ以上傷つけたくはない…。
「カリーヌ様、此処がアニエスの屋敷です」
俺は面倒くさいオンナを連れていた。だが、今日の屋敷はいつもと違って物々しい雰囲気に包まれている。殿下の采配でアニエスを守るために、警護の者が見張りをしているのだ。これは返って好都合というもの。
「ふーーん、特別待遇だけど厳重なのねー」
「はい。罪人ですからね」
「普段は何してるの?まさか、お屋敷で監禁じゃないよね?」
「アニエスは早朝から漁港で地引網漁をしてます。勿論、監視を付けてね」
「じっ、地引網りょおお!?」
「はい。魚を採ってるのです」
「はあーー!?それって強制労働ってやつう?」
「いえ、自発的にやってますよ」
「な…!」
カリーヌは絶句した。これでも数ヶ月前までは王太子の婚約者で公爵令嬢だったのだ。罪人とは言え、島から出られないだけで自由に過ごせる特別待遇のはずなのに「何のため?」と、思っているのだろう。最も、それを聞かれても上手く答える自信はない。
余程、地引網漁がショックだったのか、彼女は固まってしまった。話題を変えよう。
「その後は大衆食堂を手伝ってました。あ、最近は敷地内に造った牧場や畑の世話をしてますね」
「し…信じられないわ。何が楽しくて平民みたいに労働してるわけぇ?」
「さあ。色々と興味がある様ですが…」
いや、平民ではなく罪人だろ。今、彼女は公爵令嬢ではない。そんなことも分からないのか?
「ねえ、ブリス。お姉様を一目見たいわ」
「一目…ですか」
アニエスの居る屋敷へ入れるわけにはいかない。できるだけ対面させたくはないのだ。何とか時間を伸ばそうと俺は牧場ヘと案内してみた。だが、薬草畑でソフィアやバルナバとともにアニエスの姿を捉えてしまう。
おい、屋敷で大人しくしてろって言っただろ!何やってんだ。ったく。まあ、畑まで距離もあるし、アニエスが気づかないことを祈ろう。
「ねえねえ、アレってお姉様よね?」
「ええ、その様です」
「うわー、労働者みたーい!かっこわるう!」
作業着のアニエスが薬草畑に追肥してる姿を眺めながら馬鹿にしてる様だ。そして一段とウキウキした気分になったカリーヌだったが、直ぐに顔をしかめた。
「ううっ…なんかくさ~い!」
確かに肥料の匂いが風に乗って漂ってくる。それに羊やニワトリの獣臭も感じる。まあ、牧場とはそんなものだが、この令嬢は耐えられない様だ。
「ああっ…よくこんな臭い環境で平然としてられるわね!」
「カリーヌ様、そろそろ城へ戻りましょう」
「う…ん。でもその前に…」
ん?何だ?何をする気だ?
彼女は我慢しながら胸いっぱいに臭い空気を吸い込む。そして、徐に叫んだのだ。
「お姉様ああああああああーー!!」
アニエスに向かって両手を大きく振り、自分の存在を最大限アピールする。
「ご苦労さまああああああーー!!」
や、やめろ!馬鹿かお前は!そんなことして喜ぶとでも思っているのか!
その感覚に怒りを通り越して呆れてしまう。
当然、その大声はアニエスにも届く。ニコニコするカリーヌとは対象的に、彼女は俺と同じく呆然と立ち尽していた。
いかん。ショックを受けてるに違いない。突然、現れるはずのない憎っくき愚妹を見てしまったのだ。
「さ、もういいでしよう」
俺は半強制的にカリーヌを連れて帰ることにした。アニエスを、これ以上傷つけたくはない…。
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