ご主人様は若い女性が苦手なのです。

鼻血の親分

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第二章〜ご主人様をワタワタさせます〜

12. ご主人様は私に興味が…?

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 ※ブルクハルト視点(回想の続き)

「伯爵様、お土産ですよー」

 やっと城へ戻って来たか。エリク。一週間と言ったはずだが半月も何してたんだ? 半分はバカンスだろ。と、言いたいところだが『安息玉』のお土産を前にして咎めるのは保留した。先に報告を聞かねば。

「気が利くじゃないか。で、どうだった?」
「ええ。あの一帯は子爵家の領地でしたね」
「子爵だと?」
「アルベール子爵です。あのボロっちい薬草屋も経営してました。もう破産寸前ですけどね。だって子息、令嬢自ら売り子や薬草作ってるんだから」

 ほう。気品あると思っていたが、まさか貴族だったとは。……ん、破産寸前?

 エリクの調査ではアルベール家は借金苦で没落するのは時間の問題らしい。

 そうなれば『安息玉』はどうなる? 二度と手に入らないかもしれないぞ。それは困る。大いに困る。これまで色んな薬草を試みたが、あの女性の作った生薬の効果は抜群なのだ。

 ここは支援するべきか。辺境地の領主が王都の親戚関係でもない落ちぶれた貴族を……か。

 何か手立てはないものかな?

「あの姉弟、貧乏ながらも貴族院出てますね。特に姉のディアナって娘、薬学部首席だったとか」

 ふむむ。なんと素晴らしい子爵令嬢だ。美しく才能ある女性を失うのは勿体無い。借金のカタに何処かへ嫁がれては僕にとって大損失だ。

 『我 が 妻 と し た い』

 結婚はもうするまいと思っていたが彼女を誰にも渡したくない。いつも側へ置いときたい。独占したい。

 ーーそう強く願った。

「エリク。報告ありがとう」

 個人的な願望をこれ以上彼の仕事にさせてはいけないな。ベルトン家のことは執事ドミニクに頼むとしよう。


 ……あれから。

 僕は渋るドミニクを説得し半年がかりで結婚の準備を進めさせた。アルベール家の借金肩代わり、別邸薬草園の定植、そして婚姻。

 彼女はお家のために承諾したのだろう。優しい言葉でもかけてやりたいが、あれほどの美人の前では緊張して動揺を隠しきれない。無理だ。

 ディアナには申し訳ないと思ってるよ。

 ただ、僕は彼女が好きなのか? それとも彼女の才能に惚れてるだけなのか? いざ婚姻するとどっちだって考えてしまう。無論彼女と話したことも無ければどんな性格なのかも分からない。こんな状況では答えも見つからないと思う。

 だが。

 だがあの美しさに惹かれたのは間違いない。そうでなければ妻ではなく『薬剤師』として雇えば済む話だった。

 やはり僕はディアナの全てに興味があるのだ。

 逢いたい。話がしたい。ともに笑ってみたい。あぁそれができる性格ならどんなに素晴らしいことか……

 明日はドミニクにさりげなく彼女の様子を聞いてみよう。
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