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16話 弟様を愛するのは禁断の恋では…?
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週末、いつもなら安息の地から一歩も出ず、自由に寛いでいたけど今回は違う。ヘアサロンで初めて髪を染めてしまった。トーンは低いけどブラウンだ。それからネイルサロンでジェルネイルとやらを施術して、お花のアートをのせた押し花ネイルまでやってしまった。
『見違えるくらい女子力アップしたわね、花』
『ララ様、お陰様で懐が寂しくなりましたが』
『まぁでも、これから翔に会いに行くのでしょう。綺麗になった花を見て、びっくりするわよー』
う、うん。そうだといいな。
翔様から連絡があった時は嬉しかった。こんなに早く戻って来るなんて思ってもなかったから。
──会いたいよ。
私はいつの間にか彼を心の拠り所にしていたようだ。
『謝恩会に着ていくドレスを持って帰ろう。ちょうどいいタイミングだったわねー』
そんな厚顔無恥なお願いなんて……でも確かに着ていく服がないのは事実だ。
彼はララ様のマンションを売らず、そこへ引っ越すことになり、私はお手伝いと遺品整理を頼まれていたのだ。少しでも彼のお役に立ちたい。心からそう思っていた。
「綾坂さーん!」
マンションの前で翔様から声をかけられた。相変わらずのハンサムな御方だ。
「あれ、ちょっと雰囲気変わりました?」
「そうですか、それはお化粧してるから」
今日はララ様にメイクのレクチャーを受けていた。マスクはしてるけど伊達眼鏡は掛けていない。だからと思ったけど、よく考えたらあれから“ララ化”が進んだのだった。
「綾坂さんは、心なしか姉に似てますね」
い、いかん。
似てると言うより、私は殆どララ様そのものではないだろうか。このままでは翔様に怪しまれる。いえ、もっと大切なことが頭をよぎった。
弟様を愛するのは禁断の恋では……?
「綾坂さん?」
「え?あ、そう。よく言われてました。あはは」
取り敢えず笑って誤魔化すしかない。
「あ、でもいいかもしれません。サイズも合いそうだから姉の洋服など自由に使ってくれれば……」
『流石は我が弟ねー。花、遠慮なくいっぱい持って帰りましょう』
い、いやでも……?
それから私は翔様とお部屋に入り、引越し屋が家具の移動をしている最中に“断捨離”を敢行することにした。勿論、ララ様の指示に従ってだ。なるべく処分しなければ翔様の荷物が入らない。そこはララ様も承知の上で思い切った整理をした。
まぁ、殆どがフリマやお持ち帰りだけどね。
その作業の途中でララ様に教えられた通帳や印鑑、現金などの貴重品を見つけたふりをして、翔様に預けた。
「ところで翔様、あ、伊集院さん」
しまった。つい心の呼び方を口にしてしまった。
「ああ、翔でいいですよ。じゃ僕も花さんで」
「で、では……翔さん」
は、恥ずい。真っ赤になってるかもしれない。
「はい。何ですか?花さん」
確認してみたいことがあるのだ。
「あの、お仕事の話で恐縮ですが、我が部主宰の謝恩会に御主席なさるのですか?」
「ああ、そうだった。確か来週末だったよね。急遽、課長の代理で行けって言われてたよ」
「やっぱり。私、席表作成してまして、翔さんの名前があったものだから」
「花さんが携わってるの?」
「はい。私、今回に限り会計担当なのです」
「そっかー、じゃ準備とか大変でしょう。何か手伝うことがあったら言ってね」
「い、いえ、ゲストに手伝わせるなんて」
「お礼がしたいんだ。困ったことがあったら何時でいいからね。花さん」
熱い眼差しをモロに受けてしまった。私は男性に優しくされた記憶が皆無……
ヤバい。好きになりそう。いえ、もう好きです。例えそれが、“禁断の恋”だろうと──
『見違えるくらい女子力アップしたわね、花』
『ララ様、お陰様で懐が寂しくなりましたが』
『まぁでも、これから翔に会いに行くのでしょう。綺麗になった花を見て、びっくりするわよー』
う、うん。そうだといいな。
翔様から連絡があった時は嬉しかった。こんなに早く戻って来るなんて思ってもなかったから。
──会いたいよ。
私はいつの間にか彼を心の拠り所にしていたようだ。
『謝恩会に着ていくドレスを持って帰ろう。ちょうどいいタイミングだったわねー』
そんな厚顔無恥なお願いなんて……でも確かに着ていく服がないのは事実だ。
彼はララ様のマンションを売らず、そこへ引っ越すことになり、私はお手伝いと遺品整理を頼まれていたのだ。少しでも彼のお役に立ちたい。心からそう思っていた。
「綾坂さーん!」
マンションの前で翔様から声をかけられた。相変わらずのハンサムな御方だ。
「あれ、ちょっと雰囲気変わりました?」
「そうですか、それはお化粧してるから」
今日はララ様にメイクのレクチャーを受けていた。マスクはしてるけど伊達眼鏡は掛けていない。だからと思ったけど、よく考えたらあれから“ララ化”が進んだのだった。
「綾坂さんは、心なしか姉に似てますね」
い、いかん。
似てると言うより、私は殆どララ様そのものではないだろうか。このままでは翔様に怪しまれる。いえ、もっと大切なことが頭をよぎった。
弟様を愛するのは禁断の恋では……?
「綾坂さん?」
「え?あ、そう。よく言われてました。あはは」
取り敢えず笑って誤魔化すしかない。
「あ、でもいいかもしれません。サイズも合いそうだから姉の洋服など自由に使ってくれれば……」
『流石は我が弟ねー。花、遠慮なくいっぱい持って帰りましょう』
い、いやでも……?
それから私は翔様とお部屋に入り、引越し屋が家具の移動をしている最中に“断捨離”を敢行することにした。勿論、ララ様の指示に従ってだ。なるべく処分しなければ翔様の荷物が入らない。そこはララ様も承知の上で思い切った整理をした。
まぁ、殆どがフリマやお持ち帰りだけどね。
その作業の途中でララ様に教えられた通帳や印鑑、現金などの貴重品を見つけたふりをして、翔様に預けた。
「ところで翔様、あ、伊集院さん」
しまった。つい心の呼び方を口にしてしまった。
「ああ、翔でいいですよ。じゃ僕も花さんで」
「で、では……翔さん」
は、恥ずい。真っ赤になってるかもしれない。
「はい。何ですか?花さん」
確認してみたいことがあるのだ。
「あの、お仕事の話で恐縮ですが、我が部主宰の謝恩会に御主席なさるのですか?」
「ああ、そうだった。確か来週末だったよね。急遽、課長の代理で行けって言われてたよ」
「やっぱり。私、席表作成してまして、翔さんの名前があったものだから」
「花さんが携わってるの?」
「はい。私、今回に限り会計担当なのです」
「そっかー、じゃ準備とか大変でしょう。何か手伝うことがあったら言ってね」
「い、いえ、ゲストに手伝わせるなんて」
「お礼がしたいんだ。困ったことがあったら何時でいいからね。花さん」
熱い眼差しをモロに受けてしまった。私は男性に優しくされた記憶が皆無……
ヤバい。好きになりそう。いえ、もう好きです。例えそれが、“禁断の恋”だろうと──
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