婚約破棄された悪役令嬢は、階段から突き落とされ記憶を失う。気がつけば召使いに〜。

第１９話 さあ、この私を捕まえなさい！！

「どういうことかしら⁈　騎士団同士が争ってるってこと⁈」


　そこへ１人の団員が慌てて注進に来る。

「ラ、ララコスティさま、申し訳ございません！　団長殿がタカフミィーニ副団長とララコスティさまの身柄を確保すると仰せになられ、我々も抵抗してますが多勢に無勢、もはや守りきれません！」
「ララコスティさま、早く逃げましょう！」
「タ、タカフミィーニさまは今、どちらへ⁈」
「それが、わからないのです……」

　ああ、どうしましょう⁈　このお屋敷は団長の軍隊に囲われてるのね。タカフミィーニさま、危険です！　今はお戻りにならないでください！

「アプレンは隠れて。わたくしが投降すれば軍隊も撤収するでしょう。その後で逃げるのよ！」
「そ、そんなのダメです！　僕も一緒がいい！」

　わたくしは思わずアプレンを抱きしめた。

「ありがとう、アプレン。でもお願い。これ以上巻き込みたくないの」
「ヤダ、ヤダ、ヤダーー！　うわーん！」
「……大好きよ、アプレン」
「ララコスティさまあ、うわーん！」

　その時であった。騒がしい物音とともに複数の騎士が部屋へ乱入してきた。抵抗する団員を騎士らが乱暴に突き放す。そして肩章の装飾が１段と煌びやかな上級騎士と思われる男が、わたくしの前に立ちはだかる。

「ふん！　我らに歯向かうのか⁈　愚かなことだ」
「乱暴はよしなさい！　わたくしがララコスティです。さあ、捕まえなさい。それでここから撤収するのよ！」
「お前がゼアス家の召使いだな？　私は団長のセェレだ。……で、タカフミィーニはどこに居る？」
「このお屋敷にはいらっしゃいません」
「仕方ない。おい、探せ！」
「ははっ！」

　騎士らがありとあらゆるお部屋へ散らばっていった。

「もう１度聞こう。奴はどこだ？」
「存じ上げません！」
「チッ！　おい、この奴隷を確保しろ！」
「ははっ！」

　騎士らが一斉にわたくしに襲いかかった。腕を掴まれ縄で縛られそうになる。

「やめろーー！」

　アプレンが騎士へ体当たりした。

「な、何だ、この小僧⁈」
「その子は関係ないの！　アプレン、逃げるのよ！」
「ヤダーー！　ララコスティさまから離れろー！」

　アプレンの抵抗も虚しく、わたくしたちは罪人のように縄を後ろ手に縛られた。

　しかし、ここで奇跡が起こった──。

「団長殿、大変です！　この屋敷に軍隊が攻撃を仕掛けています！」
「何だと⁈　馬鹿な⁈　何かの間違いだろう！」

　ドカドカドカッと大きな物音が聞こえる。暫くすると別の騎士が伝令に来た。

「わ、我々は全滅です！　ほぼ捕まりました！」
「誰がそんな勝手なことを！　私が騎士団のトップであるぞ！」
「敵の大将は……タ、タカフミィーニ副団長！」
「なっ⁈」
「えっ⁈」

　コツコツコツと足音がする。扉が開くと夕陽に照らされたあの御方が神々しく登場した。

「セェレ元団長、貴方を反逆の罪で捕らえます」

　あーあーあーっ、またしても、タカフミィーニさまあーー！