貴方に幸福を

真友

文字の大きさ
2 / 18

幸せを届けに

しおりを挟む
「はい、と言う事で早速明日から……いや、もう今日からやりますか!」
「いきなり!?さっきから突然すぎるんだけど!」
「善は急げっていうでしょ?」
「またことわざかよ!そもそもコレが善かどうか怪しいけどね?ひょっとしたら悪かも知れないからね?」
「ほら、早く着替えて!不幸な人間を探しに行くぞー!」
「無視かーい!」

 やたら気合の入ったクニハルを尻目に、ふと、時計を見た。針は午後七時を指していた。正直、この時間から人探しの為に外に出るのは面倒だった。
 重い体を動かして、俺は仕方なくタンスを開けた。

「早くしないと日が暮れちゃうよ!」

 クニハルが言う。最も、もうとっくに日なんて暮れているのだが。
 俺は、ネイビーの長ズボンにグレーのパーカーというシンプルな服装に着替えを済ませ、嫌々ながら外に出る準備を早々に終えた。

「おぉ……何というか、モノトーンな人なんだね」
「それ褒めてんの?ちょっと馬鹿にしてるよね?」
「イヤだなぁ、褒めてるに決まってるじゃん!ヒューヒュー!オシャレー!」
「思いっきり馬鹿にしてんじゃねーかよ!」
「してないって。さぁ行くよ!蜂谷君のファッションセンスが落ちる前に!」
「どういう意味!?やっぱり馬鹿にしてるよね!そもそも、お前も同じ様な格好してる癖に!」
「そりゃそうだよ。僕は自動的に君と同じ様な服装になってしまうんだから」

 僕は君だからね。とクニハルが笑った。こいつはあと何回この台詞を言うのだろうか。
 なんて、どうでもいい疑問を抱きながら、俺たちは外に出た。

「で、何処に行けば不幸な人に会えるの?やっぱ人が多い所?」
「いや、ただ単に人が沢山いる場所に行くのは逆効果なんだ。人が多すぎると、返って不幸な人間を見つけ辛くなるからね」
「なるほど……そうなると何処に行くべきなんだ?」

 得意げな表情を浮かべて、クニハルが言った。

「ずばり、橋だね」
「橋?なんでだ?」
「そこに一番集まりやすいからだよ」
「不幸な人がか?」
「そうだよ。よく手すりにもたれかかって黄昏てる人いるでしょ?あれ不幸な人だよ」
「扱いが雑だな……まぁ、たまにいるけどね。川とか空とか見てる人」

 実際、つい最近にも欄干に寄り掛かってボーッとしている人を見かけたので、容易に想像することが出来た。
 俺は、そういう人を見かける度に、今どんな心境なんだろう、何を思っているんだろうと気になっていたのだ。

「特に、今から深夜に掛けての時間は狙い目だよ。仕事終わりのサラリーマンとか現れてくるからね」
「なるほどねぇ……よく考えてるんだか適当なのか……」
「ははは、策士と言ってくれよ」

 死んだ魚の様な目をする俺とは対照的に、クニハルはご機嫌そうに笑った。
 
「と言うわけで、今から橋に向かうよ。幸せ届けに行くよ!」
「分かったよ……」

 はぁ、と一つ大きな溜め息を吐きながらも、靴を履いて外に出た。家の鍵は、クニハルが閉めてくれた。
 こうして、鍵が閉まった事を確認した俺達は、幸福屋として夜の街に現れるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。 姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。 しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──? 全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...