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SCENE.1【抗憑依体質者、御手洗凛】
Capture.2『地蔵の頭』
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目を開くと、雨は止んでいた。全身に痛みがある。特に、背中には激痛が走っている。肌を露出していた腕や手には、切り傷があるのか、出血が見える。その上、泥まみれ。
「痛たた……」
やっとの思いで上体を起こすと、暗く深い森の中にいる事が分かった。上を見上げると太陽はまだ出ている。それほど時間は経っていない様子だった。かなり落ちた気がしたけど、実際はそれほど落ちてはいないようだった。
「何これ?」
辺りを確認する私の後ろに、小さな木で作られた祠があった。そして、その祠の中には、お世辞にも上手とは言えない、不細工な地蔵らしき物が祀られていた。どうやら私は、この祠に背中を強く打ち付けたようで、その衝撃で、中の地蔵が倒れてしまったようだった。
「ごめんなさい、お地蔵様……」
私は何となく、罪悪感を覚えた。それに加えて、祟られてしまうんじゃないかという恐怖もあった。慌てて祠に付いている格子の扉を開き、地蔵を掴む――
「えっ?!」
その瞬間、ごろんと音を立てて、頭が落ちてしまった。急いで体を立っていたであろう場所に立て、頭をその体の上に乗せる。
「ほっ……良かったぁ……」
頭が体の上に乗って、落ち着いたのだ。見た目としては、壊れていない状態を保っている。他人が見たら、頭が取れていた事には気付かないだろう。その事にほっとしている私がいた。
それに、転落した時にぶつかったせいで壊してしまったのだから、元に戻せば許してくれるだろうと都合よく解釈したかった。だけど――
「おい……」
急に私の右肩を掴む手と、低くて渋い男性の声が後ろでした。その瞬間、飛び上がりそうになるくらい、私は驚いた。全身がびくと痙攣するのを感じた。そして、考えた。さっきまで、私の周りに人なんていなかった。地蔵をいじっている時間だって、数十秒。一分もかかっていない。その間に、誰もいなかった空間で私の肩を掴めるほどの接近を気付かれずにできるだろうか。
「おい……」
もう一度呼ばれた。私の鼓動が早まる。考えた結果、自分の恐怖心に拍車をかけてしまったからだ。骨伝導ではっきりと耳まで届くほどに、強く、大きく鳴り響く私の心音。恐怖と緊張で、口から心臓が飛び出しそうだ。
「聞いてんのか?」
その言葉に、私は目を閉じた。そして、覚悟した。ゆっくりと顔を振り向く――
「お前、傷だらけじゃねぇか、大丈夫か?」
目の前には、少し古臭い恰好をした、短いポニーテールをしたイケメンがしゃがみ込んでいた。古臭いというよりは、時代劇のような姿。そして、イケメンは目を丸くして言葉を続ける。
「……言葉が通じてねぇのか? 聞こえてるのかよ? おい?」
首を傾げて、そう尋ねている。やっと正気に戻った私は、慌てて答える。
「あああ、あ、はい! 聞こえてます!」
「かなり怪我しているみてぇだが、大丈夫か?」
「え? あ、はい! 大丈夫だと思います!」
その声といい、顔といい、まさにイケメン。この人、絶対モテる。そう確信できる雰囲気を出している。見惚れてぽけーっとなりそうな自分に気付く。首を横に振り、慌てて戒める。私には、颯太さんがいるでしょ!片想いだけど……
「そうか、お前が壊してくれたみてぇだな」
その言葉に、私は血の気が引いて青くなる。もしかして、この人はこの祠の管理人の方なのかもしれない。歴史的に大切な物だったりしたら、やばいかもしれない。しかも、いきなり物を壊した印象とか、初対面最悪。どうしよう。いろいろと動揺し始める。
「え、えっと、ですね……こ、壊したって、ななな、何の事ですか?」
しらじらしく、嘘を付こうとしている自分に嫌悪感を抱きながらも、その場を何とか乗り切りたい私。恐る恐る、彼の回答を待つ。
「その像だ」
親指を立てて、それで示して見せたのは、紛れもなく地蔵。ば、バレてる……
「痛たた……」
やっとの思いで上体を起こすと、暗く深い森の中にいる事が分かった。上を見上げると太陽はまだ出ている。それほど時間は経っていない様子だった。かなり落ちた気がしたけど、実際はそれほど落ちてはいないようだった。
「何これ?」
辺りを確認する私の後ろに、小さな木で作られた祠があった。そして、その祠の中には、お世辞にも上手とは言えない、不細工な地蔵らしき物が祀られていた。どうやら私は、この祠に背中を強く打ち付けたようで、その衝撃で、中の地蔵が倒れてしまったようだった。
「ごめんなさい、お地蔵様……」
私は何となく、罪悪感を覚えた。それに加えて、祟られてしまうんじゃないかという恐怖もあった。慌てて祠に付いている格子の扉を開き、地蔵を掴む――
「えっ?!」
その瞬間、ごろんと音を立てて、頭が落ちてしまった。急いで体を立っていたであろう場所に立て、頭をその体の上に乗せる。
「ほっ……良かったぁ……」
頭が体の上に乗って、落ち着いたのだ。見た目としては、壊れていない状態を保っている。他人が見たら、頭が取れていた事には気付かないだろう。その事にほっとしている私がいた。
それに、転落した時にぶつかったせいで壊してしまったのだから、元に戻せば許してくれるだろうと都合よく解釈したかった。だけど――
「おい……」
急に私の右肩を掴む手と、低くて渋い男性の声が後ろでした。その瞬間、飛び上がりそうになるくらい、私は驚いた。全身がびくと痙攣するのを感じた。そして、考えた。さっきまで、私の周りに人なんていなかった。地蔵をいじっている時間だって、数十秒。一分もかかっていない。その間に、誰もいなかった空間で私の肩を掴めるほどの接近を気付かれずにできるだろうか。
「おい……」
もう一度呼ばれた。私の鼓動が早まる。考えた結果、自分の恐怖心に拍車をかけてしまったからだ。骨伝導ではっきりと耳まで届くほどに、強く、大きく鳴り響く私の心音。恐怖と緊張で、口から心臓が飛び出しそうだ。
「聞いてんのか?」
その言葉に、私は目を閉じた。そして、覚悟した。ゆっくりと顔を振り向く――
「お前、傷だらけじゃねぇか、大丈夫か?」
目の前には、少し古臭い恰好をした、短いポニーテールをしたイケメンがしゃがみ込んでいた。古臭いというよりは、時代劇のような姿。そして、イケメンは目を丸くして言葉を続ける。
「……言葉が通じてねぇのか? 聞こえてるのかよ? おい?」
首を傾げて、そう尋ねている。やっと正気に戻った私は、慌てて答える。
「あああ、あ、はい! 聞こえてます!」
「かなり怪我しているみてぇだが、大丈夫か?」
「え? あ、はい! 大丈夫だと思います!」
その声といい、顔といい、まさにイケメン。この人、絶対モテる。そう確信できる雰囲気を出している。見惚れてぽけーっとなりそうな自分に気付く。首を横に振り、慌てて戒める。私には、颯太さんがいるでしょ!片想いだけど……
「そうか、お前が壊してくれたみてぇだな」
その言葉に、私は血の気が引いて青くなる。もしかして、この人はこの祠の管理人の方なのかもしれない。歴史的に大切な物だったりしたら、やばいかもしれない。しかも、いきなり物を壊した印象とか、初対面最悪。どうしよう。いろいろと動揺し始める。
「え、えっと、ですね……こ、壊したって、ななな、何の事ですか?」
しらじらしく、嘘を付こうとしている自分に嫌悪感を抱きながらも、その場を何とか乗り切りたい私。恐る恐る、彼の回答を待つ。
「その像だ」
親指を立てて、それで示して見せたのは、紛れもなく地蔵。ば、バレてる……
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