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SCENE.1【抗憑依体質者、御手洗凛】
Capture.14『ソウリスト』
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「ま、待ってっ! さくらちゃんっ!」
私のその言葉がやっとさくらちゃんの耳に届いたようだった。そして、目を見開いている。弓を構えたまま、彼女が尋ねて来る。
「……あなた、御手洗さん?」
「そうだよっ! 私は私っ! 私ね、鬼喰いらしいの」
鬼喰い。この言葉を聞いた瞬間、驚きの表情を浮かべた彼女は、伸ばしていた手をふと下ろした。霊力の弓矢はその瞬間消える。
「……まさか、あなたも抗憑依体質者だったなんて、ね」
そう呟き、笑顔を浮かべた。元々美人な事もあり、心から安堵を浮かべたその笑顔はとても輝いていた。
それから、二人でスタバへ行き、ゆっくりと話をした。さくらちゃんも鬼喰いで、それを今風に言うと抗憑依体質者と呼ぶらしい。それと気になっていたカースというのは、守護霊以外の霊を指しているそうで、呪霊と書くみたい。
彼女の後ろに見える死神は、イギリスに家族旅行した際に取り憑かれた呪霊らしく――
「彼はロビン。調べてみたんだけど、日本で語られるロビンフッドって彼の事みたいで、弓の名手なの」
「そ、そうなんだ?」
ロビンフッドって何だろう。私はこっそりスマホでメールチェックするふりをしながら、ググってみる。
「安心した。抗憑依体質者なら、高橋先輩のようには絶対ならないから」
そう言ったさくらちゃんは、少し落ち込んだ顔をした。
「もし、そうだと知っていたら……高橋先輩を先にマークしていたのに」
悲しそうな顔でそう零したのが印象的だった。そんな彼女と小一時間ほど談話した後、帰路に着く。
「なるほどな、あの女も鬼喰いか……通りで厄介な雰囲気を感じた訳だ」
そう言って、小太郎さんが一人納得していた。そして、不思議な事がいくつか分かった。一つは、さくらちゃんには小太郎さんが黒い靄、死神にしか見えない事。逆に私には、ロビンが死神にしか見えない。取り憑かれた本人と、それ以外では見え方が違う。もう一つは、小太郎さんには、私の言葉以外聞こえない事だ。姿は見えるようだけど、声は聞こえないという。だから、会話の内容を説明する必要がある。
「どこにいても、お前の声は聞こえる」
「え……どこにいても、ですか?」
という事は、これまでに言った独り言は全て聞こえてるって事?!
「この間、泣きながら叫んでいたのは覚えている。何でヒナチャンなの、だったか」
「……も、もう言わないでくださいっ!」
独り言を言うのは気を付けないと。そんな事を痛感した頃、自宅へ着いた私は、どっと疲れたので、シャワーを浴びて、すぐに眠りに就くのだった。
*
翌日、遅番シフトでゆっくりと寝ていた私。予定もないのに、インターホンに起こされる。
「宅配頼んでたかな?」
あくびをしながら、パジャマのまま、モニターを覗く。画面には、スーツを着た短髪に眼鏡の男の人が立っていた。そして、マイク越しに声が届く。
<御手洗、凛さんのお宅でしょうか?>
「え? は、はい」
<私、公安調査庁第三調査部呪霊特別調査室、室長の安藤という者です>
こうあんちょうさちょう? 聞きなれない長い部署名に私は困惑した。モニターのカメラの前には、ネームカードがアップに映し出されている。
呪霊特別調査室?
<突然の訪問で、怪しいと思われているでしょう? こちらの封筒を置いて行かせてもらいます。爆弾なんて入ってませんよ? こう見えても、私は公務員ですから……では>
な、何なの? 正直、怪しいという印象しか残らなかった。だけど、呪霊というワードが引っかかった。モニター越しに、安藤という人がいなくなったのを確認した後、私は玄関を開き、地べたに置かれた封筒を手に取るのだった。
私のその言葉がやっとさくらちゃんの耳に届いたようだった。そして、目を見開いている。弓を構えたまま、彼女が尋ねて来る。
「……あなた、御手洗さん?」
「そうだよっ! 私は私っ! 私ね、鬼喰いらしいの」
鬼喰い。この言葉を聞いた瞬間、驚きの表情を浮かべた彼女は、伸ばしていた手をふと下ろした。霊力の弓矢はその瞬間消える。
「……まさか、あなたも抗憑依体質者だったなんて、ね」
そう呟き、笑顔を浮かべた。元々美人な事もあり、心から安堵を浮かべたその笑顔はとても輝いていた。
それから、二人でスタバへ行き、ゆっくりと話をした。さくらちゃんも鬼喰いで、それを今風に言うと抗憑依体質者と呼ぶらしい。それと気になっていたカースというのは、守護霊以外の霊を指しているそうで、呪霊と書くみたい。
彼女の後ろに見える死神は、イギリスに家族旅行した際に取り憑かれた呪霊らしく――
「彼はロビン。調べてみたんだけど、日本で語られるロビンフッドって彼の事みたいで、弓の名手なの」
「そ、そうなんだ?」
ロビンフッドって何だろう。私はこっそりスマホでメールチェックするふりをしながら、ググってみる。
「安心した。抗憑依体質者なら、高橋先輩のようには絶対ならないから」
そう言ったさくらちゃんは、少し落ち込んだ顔をした。
「もし、そうだと知っていたら……高橋先輩を先にマークしていたのに」
悲しそうな顔でそう零したのが印象的だった。そんな彼女と小一時間ほど談話した後、帰路に着く。
「なるほどな、あの女も鬼喰いか……通りで厄介な雰囲気を感じた訳だ」
そう言って、小太郎さんが一人納得していた。そして、不思議な事がいくつか分かった。一つは、さくらちゃんには小太郎さんが黒い靄、死神にしか見えない事。逆に私には、ロビンが死神にしか見えない。取り憑かれた本人と、それ以外では見え方が違う。もう一つは、小太郎さんには、私の言葉以外聞こえない事だ。姿は見えるようだけど、声は聞こえないという。だから、会話の内容を説明する必要がある。
「どこにいても、お前の声は聞こえる」
「え……どこにいても、ですか?」
という事は、これまでに言った独り言は全て聞こえてるって事?!
「この間、泣きながら叫んでいたのは覚えている。何でヒナチャンなの、だったか」
「……も、もう言わないでくださいっ!」
独り言を言うのは気を付けないと。そんな事を痛感した頃、自宅へ着いた私は、どっと疲れたので、シャワーを浴びて、すぐに眠りに就くのだった。
*
翌日、遅番シフトでゆっくりと寝ていた私。予定もないのに、インターホンに起こされる。
「宅配頼んでたかな?」
あくびをしながら、パジャマのまま、モニターを覗く。画面には、スーツを着た短髪に眼鏡の男の人が立っていた。そして、マイク越しに声が届く。
<御手洗、凛さんのお宅でしょうか?>
「え? は、はい」
<私、公安調査庁第三調査部呪霊特別調査室、室長の安藤という者です>
こうあんちょうさちょう? 聞きなれない長い部署名に私は困惑した。モニターのカメラの前には、ネームカードがアップに映し出されている。
呪霊特別調査室?
<突然の訪問で、怪しいと思われているでしょう? こちらの封筒を置いて行かせてもらいます。爆弾なんて入ってませんよ? こう見えても、私は公務員ですから……では>
な、何なの? 正直、怪しいという印象しか残らなかった。だけど、呪霊というワードが引っかかった。モニター越しに、安藤という人がいなくなったのを確認した後、私は玄関を開き、地べたに置かれた封筒を手に取るのだった。
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