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復讐するは我にあり
九.
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完全に嫌われたかな?と思ったが、前回の時もそんなに好かれていた気もしていなかったから今更か、と肩を竦めた。
グィードは鍛錬場を離れ、ジュリオの執務室へ向かおうとしてはたと気が付いた。
オルランドの父親であり、騎士団団長を務めるファウスティーノ・ブランツォーニと長兄のエットレがジュリオの執務室に一緒に居た事を思い出したのだ。しかもこの鍛錬場はジュリオの執務室から良く見える。
しまったな・・・・・・何か言われるだろうか。
まあ、言われても、お宅の息子さんから喧嘩を吹っ掛けられたんですが、としか言いようがないのだけれど。
腹を括って執務室に向かうしかないな、と気を取り直して歩き出した。
廊下を歩きながら、グィードは色々思考していた。一先ずは、一つ目の山(?)はこれで超えた。これからは暫く何もない筈だが、自分がするべき事が無い訳では無い。
調べる・・・・・・否、ルシフェールから聞かなければならない事が沢山有る。辛い話を聞く事になるだろう事は、想像に難くない。
「・・・・・・」
執務室へ向かう階段の途中、思わず立ち止まって自分の胸元を苦し気にぐっ、と掴んでいた。
ラウラを守り切れなかった。きっと、見えない部分でも酷い言いがかりで苛められていたのだと思うと、今すぐにでも縊り殺してやりたいが今は我慢をしなければならない。
ふう、と大きく息を吐いて心を落ち着かせた。そして何時ものポーカーフェイスに戻ると階段の残りを上った。
ジュリオの執務室に着いたグィードは、ドアをノックした。少ししてドアの向こう側から短い応えがあり、グィードは中に入った。
「失礼しま・・・・・・」
言い掛けて、止まる。ジュリオ、ファウスティーノ、エットレの三人が一斉に此方を眼光鋭く真っ直ぐに見て来るので、一瞬怯んだ。
「失礼します・・・・・・お久し振りです、ファウスティーノ・ブランツォーニ伯爵。エットレ卿もご一緒だったんですね」
「久し振りだねバルディーニ令息殿、貴公も元気そうで何よりだ!しかし先程の手合わせは見事だったぞ」
「ああ、我々も先程のは間近で見たかったよ」
挨拶もそこそこに、ふたりから矢継ぎ早に言葉を掛けられグィードは苦笑した。
「いや、しかし本当に申し訳ない。アレは卿をライバル視しているんだ・・・・・・」
「ああ、そうなんですね・・・・・・」
多分そうなんだろうなあ、とは思っていた。
「散々比べてしまって、可哀そうだとは思っているんだが・・・・・・」
同じ年齢で、騎士の家系で。確かに比べられ易いのは確かかもしれない。しかし、グィードの方が特別優秀なのは確かだし、立場も上と言うだけでなく掛かるプレッシャーも段違いだ。比べるだけ酷、と言うものであった。
実はオルランドは五男だ。長男エットレ、次男アベラルドが自国の騎士団を率いる事になっているが、三男ダニオは隣国の騎士の家に婿入りし、四男チェザリーノは学園卒業後には父方の親戚の家に、養子に行く事になっていた。
五男の彼だけが何も決まっていない。彼自身が望めば、ファウスティーノは婿入り先だろうが養子先だろうが、探してくれる筈であった。
騎士として致命的に素質が無い彼が騎士に固執している限り、彼はずっと見習い未満の雑用扱いの未来しかない。
グィードと言う超える事が到底不可能な相手をライバル視している限りは、目が覚めることも無いだろう。
哀れな話ではあるが、それは父親達が悪い。比べる相手を間違えているのだから。
暫くの雑談の後、ファウスティーノとエットレが部屋を出て行った。それを見送り漸くグィード達はふたりきりになった。
「さて、どうだった?」
ジュリオの質問に、ふむ、と少し考える様な素振りを見せた。
「カルロ殿下は少々・・・・・・ご自分の身内と決めた方には甘いようですね」
と、ラウル・ビスカルディーニの事を当て擦る。これも、以前はしなかった事だ。
「ああ、あの話は本当だったか」
ジュリオは誰の事だかを直ぐに理解したようだ。如何やら有名な話だったようだ。しかも学園に通う様になってからは、益々三人は固まって行動するようになった。
ルイスが入学して今度は、四人でこそこそするようになっていった印象である。
王族が身内で固まり内に籠る様な真似はおかしいと、忠告した覚えがある。聞き入れてはもらえなかったが。
グィードは鍛錬場を離れ、ジュリオの執務室へ向かおうとしてはたと気が付いた。
オルランドの父親であり、騎士団団長を務めるファウスティーノ・ブランツォーニと長兄のエットレがジュリオの執務室に一緒に居た事を思い出したのだ。しかもこの鍛錬場はジュリオの執務室から良く見える。
しまったな・・・・・・何か言われるだろうか。
まあ、言われても、お宅の息子さんから喧嘩を吹っ掛けられたんですが、としか言いようがないのだけれど。
腹を括って執務室に向かうしかないな、と気を取り直して歩き出した。
廊下を歩きながら、グィードは色々思考していた。一先ずは、一つ目の山(?)はこれで超えた。これからは暫く何もない筈だが、自分がするべき事が無い訳では無い。
調べる・・・・・・否、ルシフェールから聞かなければならない事が沢山有る。辛い話を聞く事になるだろう事は、想像に難くない。
「・・・・・・」
執務室へ向かう階段の途中、思わず立ち止まって自分の胸元を苦し気にぐっ、と掴んでいた。
ラウラを守り切れなかった。きっと、見えない部分でも酷い言いがかりで苛められていたのだと思うと、今すぐにでも縊り殺してやりたいが今は我慢をしなければならない。
ふう、と大きく息を吐いて心を落ち着かせた。そして何時ものポーカーフェイスに戻ると階段の残りを上った。
ジュリオの執務室に着いたグィードは、ドアをノックした。少ししてドアの向こう側から短い応えがあり、グィードは中に入った。
「失礼しま・・・・・・」
言い掛けて、止まる。ジュリオ、ファウスティーノ、エットレの三人が一斉に此方を眼光鋭く真っ直ぐに見て来るので、一瞬怯んだ。
「失礼します・・・・・・お久し振りです、ファウスティーノ・ブランツォーニ伯爵。エットレ卿もご一緒だったんですね」
「久し振りだねバルディーニ令息殿、貴公も元気そうで何よりだ!しかし先程の手合わせは見事だったぞ」
「ああ、我々も先程のは間近で見たかったよ」
挨拶もそこそこに、ふたりから矢継ぎ早に言葉を掛けられグィードは苦笑した。
「いや、しかし本当に申し訳ない。アレは卿をライバル視しているんだ・・・・・・」
「ああ、そうなんですね・・・・・・」
多分そうなんだろうなあ、とは思っていた。
「散々比べてしまって、可哀そうだとは思っているんだが・・・・・・」
同じ年齢で、騎士の家系で。確かに比べられ易いのは確かかもしれない。しかし、グィードの方が特別優秀なのは確かだし、立場も上と言うだけでなく掛かるプレッシャーも段違いだ。比べるだけ酷、と言うものであった。
実はオルランドは五男だ。長男エットレ、次男アベラルドが自国の騎士団を率いる事になっているが、三男ダニオは隣国の騎士の家に婿入りし、四男チェザリーノは学園卒業後には父方の親戚の家に、養子に行く事になっていた。
五男の彼だけが何も決まっていない。彼自身が望めば、ファウスティーノは婿入り先だろうが養子先だろうが、探してくれる筈であった。
騎士として致命的に素質が無い彼が騎士に固執している限り、彼はずっと見習い未満の雑用扱いの未来しかない。
グィードと言う超える事が到底不可能な相手をライバル視している限りは、目が覚めることも無いだろう。
哀れな話ではあるが、それは父親達が悪い。比べる相手を間違えているのだから。
暫くの雑談の後、ファウスティーノとエットレが部屋を出て行った。それを見送り漸くグィード達はふたりきりになった。
「さて、どうだった?」
ジュリオの質問に、ふむ、と少し考える様な素振りを見せた。
「カルロ殿下は少々・・・・・・ご自分の身内と決めた方には甘いようですね」
と、ラウル・ビスカルディーニの事を当て擦る。これも、以前はしなかった事だ。
「ああ、あの話は本当だったか」
ジュリオは誰の事だかを直ぐに理解したようだ。如何やら有名な話だったようだ。しかも学園に通う様になってからは、益々三人は固まって行動するようになった。
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