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復讐するは我にあり
十二.
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屋敷に帰り着いたグィードを、ラウラが出迎えた。
「お帰りなさい、お兄様」
「ああ、ただいま」
グィードは足元にすり寄る子猫のように纏わりつくラウラの肩を抱きながら、自室に向かって歩いた。
「お城はどんな感じでした?」
「んー、まあ・・・・・・うちと人の出入りの多さは変わらないかな」
言いながら階段を上がり、兄妹と侍従達はグィードの部屋に入った。
「ああ、そうだラウラ・・・・・・実はダリオ殿下がお前とお茶会がしたいとおっしゃってな」
「まあ!?私と?」
上着を脱ぐとそれを侍従に渡し、着替え始めた。ラウラは直ぐそばにあった椅子に座り、兄の着替えを見ていた彼女は驚いて声を上げた。
「お前がアドルフォシリーズが好きだと言ったら是非会って話がしたい、っておっしゃったんだが・・・・・・どうだ?無論、無理にとは言わないが」
「お父様はなんとおっしゃったの?」
「ああ、お前が良いのなら、と」
するとラウラは、うーん、と可愛らしく唇を尖らせて考える素振りを見せた。
「・・・・・・うん、お受けしますわ、お兄様」
「分かった、じゃあ手紙を出しておくよ」
そう言うと、グィードは飾りの少ない、ラフな印象のシャツに袖を通して着替えを終える。
「あ、そうだわ。お兄様、今日のお夕飯はウズラのローストですって」
ウズラはラウラの好物だ。嬉しそうにそう言うと、また後で、と部屋を出て行った。
「サム、紙とペンを頼む。それから・・・・・・暫く一人にしてくれ」
「はい、畏まりました」
サムは一つ礼をして下がった。その後手紙を書いたりなどして時間を潰しているうちに、夕餉の時間になった。
その頃にはジュリオも帰って来て、家族で夕飯を取る事が出来た。しかしグィードは残念ながらあまり食事が喉を通らず、殆ど残してしまった。
「どうした、珍しい」
「・・・・・・今日は少し疲れたみたいです」
ふう、と溜息を吐いた。この後、ルシフェールから何を教えられるのか、と考えるだけで食事が喉を通らない。
「すみません、今日はもう休ませてもらいます」
もう食後のデザートまで来ていたので、グィードはジュリオに許可を得て席を立った。
自室に戻ると、ルシフェール達が待っていた。
「来たか」
ルシフェールはチュニックの上にトガと呼ばれる半円形のウールの布を体に巻き付け、暖炉の前で寛いでいた。
火の点いた暖炉の前、毛足の長いラグの上に沢山のクッションを置いて其処に凭れる様にしていた。
今は三月で暦上は春でも、朝晩はまだまだ暖炉の出番はある。それにしても、暖かな暖炉の灯りの前でグィードが見たことが無い異国の衣装を身に纏う彼を見ていると、自分の部屋では無い錯覚に陥りそうである。
「さあ、此方へどうぞ」
ベルゼビュートがルシフェールの隣を勧めた。勧められるままに隣に座ると、グィードの前に全身が写る姿見を置かれた。
「コレは?」
「お前に分かりやすいように、コレに画像を映して見せてやろうと思ってな」
見せ方は色々あるが、こう言った触媒を通した方が見せ易い。昔なら水晶や水鏡のような物を触媒にしていたが、それだと映像がぼやけると言う難点があった。
映像を見せたいなら、鏡が一番良いのだ。
「今から、アルバーノ・オネスティとルイス・アントーニが密談を行っている所を見せてやる」
「えっ!?」
ルシフェールの言葉に、グィードは驚愕の声を上げた。
「丁度今日、あ奴らが悪巧みを企もうとしておるのよ。見よ」
パチン、と指を鳴らすと姿見に映っていた自分達がぼやけると、次第に違う姿を映し始めた。
『・・・・・・へえ、で。それでアタシは何をすれば良いんだい?』
そう言ったのは、豊満な肢体の、妖艶な雰囲気を纏った女だった。身体にぴったりと沿うような真っ黒なカクテルドレスを身に纏い、そのドレスが際立つような滑る様に白い肌はまるで蛇を思わせた。しかし、脂ののった豊満な肢体はとても十三、十四の少女には見えない。
何より、その顔はグィードの知るルイス・アントーニでは無かった。
な・・・・・・誰だ?
グィードは啞然とした。アルバーノと小さな丸いテーブルを挟んで向かいに座り、血の如く赤いワインを酌み交わしながら、顔を寄せあう様に話す様子は確かに、密談だ。
「お帰りなさい、お兄様」
「ああ、ただいま」
グィードは足元にすり寄る子猫のように纏わりつくラウラの肩を抱きながら、自室に向かって歩いた。
「お城はどんな感じでした?」
「んー、まあ・・・・・・うちと人の出入りの多さは変わらないかな」
言いながら階段を上がり、兄妹と侍従達はグィードの部屋に入った。
「ああ、そうだラウラ・・・・・・実はダリオ殿下がお前とお茶会がしたいとおっしゃってな」
「まあ!?私と?」
上着を脱ぐとそれを侍従に渡し、着替え始めた。ラウラは直ぐそばにあった椅子に座り、兄の着替えを見ていた彼女は驚いて声を上げた。
「お前がアドルフォシリーズが好きだと言ったら是非会って話がしたい、っておっしゃったんだが・・・・・・どうだ?無論、無理にとは言わないが」
「お父様はなんとおっしゃったの?」
「ああ、お前が良いのなら、と」
するとラウラは、うーん、と可愛らしく唇を尖らせて考える素振りを見せた。
「・・・・・・うん、お受けしますわ、お兄様」
「分かった、じゃあ手紙を出しておくよ」
そう言うと、グィードは飾りの少ない、ラフな印象のシャツに袖を通して着替えを終える。
「あ、そうだわ。お兄様、今日のお夕飯はウズラのローストですって」
ウズラはラウラの好物だ。嬉しそうにそう言うと、また後で、と部屋を出て行った。
「サム、紙とペンを頼む。それから・・・・・・暫く一人にしてくれ」
「はい、畏まりました」
サムは一つ礼をして下がった。その後手紙を書いたりなどして時間を潰しているうちに、夕餉の時間になった。
その頃にはジュリオも帰って来て、家族で夕飯を取る事が出来た。しかしグィードは残念ながらあまり食事が喉を通らず、殆ど残してしまった。
「どうした、珍しい」
「・・・・・・今日は少し疲れたみたいです」
ふう、と溜息を吐いた。この後、ルシフェールから何を教えられるのか、と考えるだけで食事が喉を通らない。
「すみません、今日はもう休ませてもらいます」
もう食後のデザートまで来ていたので、グィードはジュリオに許可を得て席を立った。
自室に戻ると、ルシフェール達が待っていた。
「来たか」
ルシフェールはチュニックの上にトガと呼ばれる半円形のウールの布を体に巻き付け、暖炉の前で寛いでいた。
火の点いた暖炉の前、毛足の長いラグの上に沢山のクッションを置いて其処に凭れる様にしていた。
今は三月で暦上は春でも、朝晩はまだまだ暖炉の出番はある。それにしても、暖かな暖炉の灯りの前でグィードが見たことが無い異国の衣装を身に纏う彼を見ていると、自分の部屋では無い錯覚に陥りそうである。
「さあ、此方へどうぞ」
ベルゼビュートがルシフェールの隣を勧めた。勧められるままに隣に座ると、グィードの前に全身が写る姿見を置かれた。
「コレは?」
「お前に分かりやすいように、コレに画像を映して見せてやろうと思ってな」
見せ方は色々あるが、こう言った触媒を通した方が見せ易い。昔なら水晶や水鏡のような物を触媒にしていたが、それだと映像がぼやけると言う難点があった。
映像を見せたいなら、鏡が一番良いのだ。
「今から、アルバーノ・オネスティとルイス・アントーニが密談を行っている所を見せてやる」
「えっ!?」
ルシフェールの言葉に、グィードは驚愕の声を上げた。
「丁度今日、あ奴らが悪巧みを企もうとしておるのよ。見よ」
パチン、と指を鳴らすと姿見に映っていた自分達がぼやけると、次第に違う姿を映し始めた。
『・・・・・・へえ、で。それでアタシは何をすれば良いんだい?』
そう言ったのは、豊満な肢体の、妖艶な雰囲気を纏った女だった。身体にぴったりと沿うような真っ黒なカクテルドレスを身に纏い、そのドレスが際立つような滑る様に白い肌はまるで蛇を思わせた。しかし、脂ののった豊満な肢体はとても十三、十四の少女には見えない。
何より、その顔はグィードの知るルイス・アントーニでは無かった。
な・・・・・・誰だ?
グィードは啞然とした。アルバーノと小さな丸いテーブルを挟んで向かいに座り、血の如く赤いワインを酌み交わしながら、顔を寄せあう様に話す様子は確かに、密談だ。
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