復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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天国への階段を下りる

四十六.

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 後日、ジュリオ達は自分達だけで話し合いの席を設け、ある程度あらすじを決めてきたようだった。
 どう転んでもグィードとバルディーニ家には悪い事にはならないようにはしたらしいが、詳しくは教えて貰っていない。
 父ジュリオがそう言ったから、そうなるのだろう事はグィードは信頼していた。
 それからラウルとグィードを交えて話し合いが持たれたのは、それから数か月後。王国も冬の入口に立った頃であった。
 バルディーニ領なら今頃領民達はとっくに冬支度を終えている頃だろう。此方では薪を蓄えたり衣替えをする程度で、あまり本格的にそういった事をしないようだった。
「寒さもこちらの方がまだ暖かく感じるくらいですね」
「まあ、こっちは南寄りだからな」
 それに、バルディーニ領の背中には万年雪を抱えた山脈が聳えているのだから、寒くて当たり前だった。
 そうした会話を交わすふたりを乗せた馬車は話し合いの場である、王城へと向かっていた。馬車にはジュリオとグィード、そして此方で雇った弁護士が同乗していた。
「・・・・・・」
 栗色の髪を丁寧に撫でつけた髪形に、榛色の瞳。着ているジャケットも落ち着いた色味のベージュで、目の前に居るのは弁護士に見えた。
 彼を紹介された時グィードは心底驚いた。思わず彼の人ベリアドの名を叫ぶところであった。
 しかし、髪の色や瞳の色だけで無くその体格すらも変えてしまうとは、悪魔とはかくも変幻自在なのだなと感心してしまった。
 本来であればグィードが見上げる程魁偉な男が、自分よりも目線がやや下がる程度の身長になっているのは何だか落ち着かない。
 本来であれば、お抱えの弁護士に頼む処であったのだが、幾つか案件を抱えて忙しいので代打で紹介された、とらしい。
 グィードにしてみれば頼もしい限りだが、こんなにも表立って出て来るとは驚きでもあった。
 三度目の登城で着いて向かったのは、小会議室であった。案内されて入室したら、既にビスカルディーニ親子は待っていた。そして他にもうひとり、文官らしき者も居た。
 しかしそれ以外は弁護士らしき者はおらず、ふたりだけだ。
 取り敢えずの挨拶を皆で交わして、バルディーニ家とビスカルディーニ家はお互い向かい合うようにして座る。
 文官らしき者は少し離れた場所で座り、ノートを開いた。今回の話し合いの様子を書き留める為に特別に呼ばれた彼は、裁判所の書記官であった。
「・・・所で、其方は弁護士は?」
 ジュリオが当然の疑問を口に出した。すると、ジャンパオロが眉を顰めながら隣に座る息子をちらりと見やり、溜息交じりに口を開いた。
「頑なに要らぬと言うので・・・・・・」
 言われた息子はと言うと、取り澄ました顔で座っていた。如何やら余程自信があるのか、弁護士も何も要らぬと言うのだろう。
「そうですか、では・・・始めてもよろしいかな?」
 と、ジュリオが周りに同意を求めると皆がそれぞれ頷いた。
「では、僕から始めさせて頂きます」
 ラウルが待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、この場を仕切ってやろうと自信満々であった。
「では、先ずは証人の方に入って来ていただきましょう」
 どうぞ、と言うラウルの言葉に隣室で控えていたらしい男が入って来た。小奇麗な服装だが、平民と思しき雰囲気だ。
「では・・・
 そう言ったのはジャンパオロであった。それを聞いた男は緊張の面持ちではい、と答えた。 
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