48 / 83
天国への階段を下りる
四十六.
しおりを挟む
後日、ジュリオ達は自分達だけで話し合いの席を設け、ある程度あらすじを決めてきたようだった。
どう転んでもグィードとバルディーニ家には悪い事にはならないようにはしたらしいが、詳しくは教えて貰っていない。
父ジュリオがそう言ったから、そうなるのだろう事はグィードは信頼していた。
それからラウルとグィードを交えて話し合いが持たれたのは、それから数か月後。王国も冬の入口に立った頃であった。
バルディーニ領なら今頃領民達はとっくに冬支度を終えている頃だろう。此方では薪を蓄えたり衣替えをする程度で、あまり本格的にそういった事をしないようだった。
「寒さもこちらの方がまだ暖かく感じるくらいですね」
「まあ、こっちは南寄りだからな」
それに、バルディーニ領の背中には万年雪を抱えた山脈が聳えているのだから、寒くて当たり前だった。
そうした会話を交わすふたりを乗せた馬車は話し合いの場である、王城へと向かっていた。馬車にはジュリオとグィード、そして此方で雇った弁護士が同乗していた。
「・・・・・・」
栗色の髪を丁寧に撫でつけた髪形に、榛色の瞳。着ているジャケットも落ち着いた色味のベージュで、目の前に居るのは如何にも誠実そうな弁護士に見えた。
彼を紹介された時グィードは心底驚いた。思わず彼の人の名を叫ぶところであった。
しかし、髪の色や瞳の色だけで無くその体格すらも変えてしまうとは、悪魔とはかくも変幻自在なのだなと感心してしまった。
本来であればグィードが見上げる程魁偉な男が、自分よりも目線がやや下がる程度の身長になっているのは何だか落ち着かない。
本来であれば、お抱えの弁護士に頼む処であったのだが、幾つか案件を抱えて忙しいので代打で紹介された、と言う事になっているらしい。
グィードにしてみれば頼もしい限りだが、こんなにも表立って出て来るとは驚きでもあった。
三度目の登城で着いて向かったのは、小会議室であった。案内されて入室したら、既にビスカルディーニ親子は待っていた。そして他にもうひとり、文官らしき者も居た。
しかしそれ以外は弁護士らしき者はおらず、ふたりだけだ。
取り敢えずの挨拶を皆で交わして、バルディーニ家とビスカルディーニ家はお互い向かい合うようにして座る。
文官らしき者は少し離れた場所で座り、ノートを開いた。今回の話し合いの様子を書き留める為に特別に呼ばれた彼は、裁判所の書記官であった。
「・・・所で、其方は弁護士は?」
ジュリオが当然の疑問を口に出した。すると、ジャンパオロが眉を顰めながら隣に座る息子をちらりと見やり、溜息交じりに口を開いた。
「頑なに要らぬと言うので・・・・・・」
言われた息子はと言うと、取り澄ました顔で座っていた。如何やら余程自信があるのか、弁護士も何も要らぬと言うのだろう。
「そうですか、では・・・始めてもよろしいかな?」
と、ジュリオが周りに同意を求めると皆がそれぞれ頷いた。
「では、僕から始めさせて頂きます」
ラウルが待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、この場を仕切ってやろうと自信満々であった。
「では、先ずは証人の方に入って来ていただきましょう」
どうぞ、と言うラウルの言葉に隣室で控えていたらしい男が入って来た。小奇麗な服装だが、平民と思しき雰囲気だ。
「では・・・今回の話し合いは非公式ではありますが、裁判と同じく記録には残る為嘘偽りなくお答えください」
そう言ったのはジャンパオロであった。それを聞いた男は緊張の面持ちではい、と答えた。
どう転んでもグィードとバルディーニ家には悪い事にはならないようにはしたらしいが、詳しくは教えて貰っていない。
父ジュリオがそう言ったから、そうなるのだろう事はグィードは信頼していた。
それからラウルとグィードを交えて話し合いが持たれたのは、それから数か月後。王国も冬の入口に立った頃であった。
バルディーニ領なら今頃領民達はとっくに冬支度を終えている頃だろう。此方では薪を蓄えたり衣替えをする程度で、あまり本格的にそういった事をしないようだった。
「寒さもこちらの方がまだ暖かく感じるくらいですね」
「まあ、こっちは南寄りだからな」
それに、バルディーニ領の背中には万年雪を抱えた山脈が聳えているのだから、寒くて当たり前だった。
そうした会話を交わすふたりを乗せた馬車は話し合いの場である、王城へと向かっていた。馬車にはジュリオとグィード、そして此方で雇った弁護士が同乗していた。
「・・・・・・」
栗色の髪を丁寧に撫でつけた髪形に、榛色の瞳。着ているジャケットも落ち着いた色味のベージュで、目の前に居るのは如何にも誠実そうな弁護士に見えた。
彼を紹介された時グィードは心底驚いた。思わず彼の人の名を叫ぶところであった。
しかし、髪の色や瞳の色だけで無くその体格すらも変えてしまうとは、悪魔とはかくも変幻自在なのだなと感心してしまった。
本来であればグィードが見上げる程魁偉な男が、自分よりも目線がやや下がる程度の身長になっているのは何だか落ち着かない。
本来であれば、お抱えの弁護士に頼む処であったのだが、幾つか案件を抱えて忙しいので代打で紹介された、と言う事になっているらしい。
グィードにしてみれば頼もしい限りだが、こんなにも表立って出て来るとは驚きでもあった。
三度目の登城で着いて向かったのは、小会議室であった。案内されて入室したら、既にビスカルディーニ親子は待っていた。そして他にもうひとり、文官らしき者も居た。
しかしそれ以外は弁護士らしき者はおらず、ふたりだけだ。
取り敢えずの挨拶を皆で交わして、バルディーニ家とビスカルディーニ家はお互い向かい合うようにして座る。
文官らしき者は少し離れた場所で座り、ノートを開いた。今回の話し合いの様子を書き留める為に特別に呼ばれた彼は、裁判所の書記官であった。
「・・・所で、其方は弁護士は?」
ジュリオが当然の疑問を口に出した。すると、ジャンパオロが眉を顰めながら隣に座る息子をちらりと見やり、溜息交じりに口を開いた。
「頑なに要らぬと言うので・・・・・・」
言われた息子はと言うと、取り澄ました顔で座っていた。如何やら余程自信があるのか、弁護士も何も要らぬと言うのだろう。
「そうですか、では・・・始めてもよろしいかな?」
と、ジュリオが周りに同意を求めると皆がそれぞれ頷いた。
「では、僕から始めさせて頂きます」
ラウルが待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、この場を仕切ってやろうと自信満々であった。
「では、先ずは証人の方に入って来ていただきましょう」
どうぞ、と言うラウルの言葉に隣室で控えていたらしい男が入って来た。小奇麗な服装だが、平民と思しき雰囲気だ。
「では・・・今回の話し合いは非公式ではありますが、裁判と同じく記録には残る為嘘偽りなくお答えください」
そう言ったのはジャンパオロであった。それを聞いた男は緊張の面持ちではい、と答えた。
34
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる