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天国への階段を下りる
四十八.
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ラウルは弁護士の迫力に気圧され、顔色を失くしていた。何か言い返そうにも上手い言い回しが思い付かず、どう言い繕っても弁護士に敵わぬだろう事が漸くわかったのか、青くなった唇をわなわなと震わせるばかりであった。
「・・・・・・ラウルの意見は此処迄にして、次はバルディーニ家側からお願いします」
ジャンパオロにそう言われて、ジュリオはベリアドと顔を見合わせてベリアドが深く頷いてからさっ、と辺りを見渡した。
「では・・・バルディーニ侯爵令息が不貞を働いていない証拠として当日夜勤勤務をしていた警備員の方々をお呼びしました。 ではどうぞ、お入りください」
ベリアドの言葉に、ベルトルドが出て来たドアとは別の扉が開いて、三人の男が入って来た。
年齢は様々だが、肩幅も広く腕も太い屈強な男達であった。三人はそれぞれ名を名乗り、真顔でベリアドの近くに立っていた。
「では、早速始めたいと思います。 当日、バルディーニ侯爵令息が帰る所を見た方はいますか?」
と、訊ねると一番年嵩の男が手を挙げた。
「はい、私です」
「どの様に目撃されましたか?」
「当日は警備員詰め所兼、入館受付所にてバルディーニ家の馬車を確認しました。 侯爵令息も乗っておられるのを見ております」
トレンティノの国立図書館では貴族が馬車で出入りする際は記名することになっているのだ。大抵の場合は御者が記名するのが殆どだがその日も、バルディーニ家の御者が行き帰りに記名していた。
そしてその証拠として一冊の帳簿がベリアドの手元にあった。
「そしてこれが当日の署名された帳簿です」
帳簿には確かに、入退館した時間と共に確かにバルディーニ家の名前があった。
「では、質問を変えます。 図書館内の巡回警備はどの様に行われますか?」
すると、一番肩幅の広い中年の男が答えた。
「夕刻の巡回と、深夜の巡回の計二回行う事になっています」
「それはひとりで巡回されるのですか?」
「いえ、夕刻はふたり、深夜は三人で巡回しています」
「それでは夕刻に巡回したおふたりに質問です・・・・・・・・・・・・」
先程とは違い、整然と話が進んで行く。その間もラウルが口を挿むことも無いまま、青い顔で座り込んでいた。
常のラウルなら、巡回中何処かに隠れているのを見落としたのでは無いのか、とか。賄賂を受け取っているのではないかと口を挿みそうなものなのに、驚くほど静かであった。
それもその筈で、ラウルが突っ込みそうな部分はベリアドも事細かに聞いて、隙を見せないようにしていたからである。
「・・・・・・答弁は以上です。 ビスカルディーニ公爵令息、何か反論はありますか?」
弁護士が尋ねるが、血の気の引いた顔色のままだったラウルは悔しそうにありません・・・・・・とか細い声でそう言った。
「それでは、間違いを認めて謝罪をして頂けると言う事で宜しいですかな?」
「・・・・・・・・・・・・」
頷けない。否、頷きたくないのだろう。悔し気に俯いたまま、小さく両肩を震わせていた。
「言っておくがラウル、貴様が謝ろうと謝るまいと除籍するからな」
「え・・・・・・っ、そんな・・・・・・っ!」
ラウルが弾かれたように顔を上げた。謝罪する意思と誠意を見せない息子に対して業を煮やした父親の冷たい言い草に、ラウルは絶望した。
「何故だと?逆に聞きたいが、此処まで騒ぎを大きくしてどうして追い出されないと思えるんだ?」
「~~~~~っ、・・・・・・」
ラウルはがくりと肩を落とし、床にへたり込んだ。しかし、いきなり立ち上がったかと思うとグィードをギッ、と鬼のような形相で睨みつけて叫んだ。
「僕は絶対に貴様を許さないっ!」
言われたグィードは唖然とした。
それから思わず大笑いをしそうになるのを辛うじて堪えて、グィードは困惑したような素振りで口許に手をやり、にやけそうになるのを隠した。
良いね、罪悪感無く君を追い込めそうだよ、ありがとう。
此処迄愚かならいっその事清々しいな、とグィードはある意味感心した。
「・・・・・・ラウルの意見は此処迄にして、次はバルディーニ家側からお願いします」
ジャンパオロにそう言われて、ジュリオはベリアドと顔を見合わせてベリアドが深く頷いてからさっ、と辺りを見渡した。
「では・・・バルディーニ侯爵令息が不貞を働いていない証拠として当日夜勤勤務をしていた警備員の方々をお呼びしました。 ではどうぞ、お入りください」
ベリアドの言葉に、ベルトルドが出て来たドアとは別の扉が開いて、三人の男が入って来た。
年齢は様々だが、肩幅も広く腕も太い屈強な男達であった。三人はそれぞれ名を名乗り、真顔でベリアドの近くに立っていた。
「では、早速始めたいと思います。 当日、バルディーニ侯爵令息が帰る所を見た方はいますか?」
と、訊ねると一番年嵩の男が手を挙げた。
「はい、私です」
「どの様に目撃されましたか?」
「当日は警備員詰め所兼、入館受付所にてバルディーニ家の馬車を確認しました。 侯爵令息も乗っておられるのを見ております」
トレンティノの国立図書館では貴族が馬車で出入りする際は記名することになっているのだ。大抵の場合は御者が記名するのが殆どだがその日も、バルディーニ家の御者が行き帰りに記名していた。
そしてその証拠として一冊の帳簿がベリアドの手元にあった。
「そしてこれが当日の署名された帳簿です」
帳簿には確かに、入退館した時間と共に確かにバルディーニ家の名前があった。
「では、質問を変えます。 図書館内の巡回警備はどの様に行われますか?」
すると、一番肩幅の広い中年の男が答えた。
「夕刻の巡回と、深夜の巡回の計二回行う事になっています」
「それはひとりで巡回されるのですか?」
「いえ、夕刻はふたり、深夜は三人で巡回しています」
「それでは夕刻に巡回したおふたりに質問です・・・・・・・・・・・・」
先程とは違い、整然と話が進んで行く。その間もラウルが口を挿むことも無いまま、青い顔で座り込んでいた。
常のラウルなら、巡回中何処かに隠れているのを見落としたのでは無いのか、とか。賄賂を受け取っているのではないかと口を挿みそうなものなのに、驚くほど静かであった。
それもその筈で、ラウルが突っ込みそうな部分はベリアドも事細かに聞いて、隙を見せないようにしていたからである。
「・・・・・・答弁は以上です。 ビスカルディーニ公爵令息、何か反論はありますか?」
弁護士が尋ねるが、血の気の引いた顔色のままだったラウルは悔しそうにありません・・・・・・とか細い声でそう言った。
「それでは、間違いを認めて謝罪をして頂けると言う事で宜しいですかな?」
「・・・・・・・・・・・・」
頷けない。否、頷きたくないのだろう。悔し気に俯いたまま、小さく両肩を震わせていた。
「言っておくがラウル、貴様が謝ろうと謝るまいと除籍するからな」
「え・・・・・・っ、そんな・・・・・・っ!」
ラウルが弾かれたように顔を上げた。謝罪する意思と誠意を見せない息子に対して業を煮やした父親の冷たい言い草に、ラウルは絶望した。
「何故だと?逆に聞きたいが、此処まで騒ぎを大きくしてどうして追い出されないと思えるんだ?」
「~~~~~っ、・・・・・・」
ラウルはがくりと肩を落とし、床にへたり込んだ。しかし、いきなり立ち上がったかと思うとグィードをギッ、と鬼のような形相で睨みつけて叫んだ。
「僕は絶対に貴様を許さないっ!」
言われたグィードは唖然とした。
それから思わず大笑いをしそうになるのを辛うじて堪えて、グィードは困惑したような素振りで口許に手をやり、にやけそうになるのを隠した。
良いね、罪悪感無く君を追い込めそうだよ、ありがとう。
此処迄愚かならいっその事清々しいな、とグィードはある意味感心した。
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