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薄氷の上でワルツを
六十九.
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冬休みに入る一週間前。
ラウラは当初の予定通り、隣国への視察の為にダリオと共に旅経つ為、王城に前日入りする為に朝早くバルディーニ邸を出て行った。
列車での旅は隣国へは一週間は掛かる為この様なスケジュールになったのだ。
グィードとジュリオに見送られ、ラウラは元気よく城からの迎えの馬車に乗って行った。
「ううむ、矢張り心配だな・・・・・・」
自分の隣に立つ父親の言わんとしている事も分かるし、その心配も理解できる。何せ、ラウラに取ってこれが初めての単独行動になるからである。
勿論、婚約者のダリオと共に向かうから本当の意味で単独ではないが家族と離れて、と言う意味ならば確かにこれが初めてだ。
「父上、大丈夫ですよ。ラウラは其処迄箱入りな娘じゃないでしょう」
グィードとて心配だが、トレンティノ王国の側が慣れないラウラに色々とフォローをする筈だから大丈夫だろう。
心配するジュリオを慰めつつ、自身も学園に行かねばならない為邸を出た。
走る馬車の中で、グィードは聖女認定の儀式について考えた。招待状の日付は冬休みに入って三日目になっている。
招待した人間は少ないが急な招待とは言え、内容を考えれば立ち会えるのは光栄な事だし後々の事を考えると自慢の種になるだろう。
まあ、そうはならないけど。
当日の阿鼻叫喚の図を想像して、グィードはニヤリと笑った。
筋書きとしては、ルイスの正体をその場で暴露して捕えさせ、その後共犯である事が発覚する前に逃げ出すであろうアルバーノはダエーワに追跡させ追い詰めさせる。
ルイスの事は放って置いても火炙りは免れない。魔女の事はそれで良いと思ってる。最期を見届けてやればそれでいい。アルバーノの事は勿論自分がこの手できっちりけりを付けるつもりである。
カルロの事は魔女同様に王国側で決めればいいと思っている。
魔女に誘惑された王子が、真っ当な扱いを受けられるわけがないのだ。魔女に魅了され、精神汚染をされていた事が分かれば王位継承権のはく奪だけでは済むまい。
良くて生涯幽閉、または毒の盃を飲み干す事になるだろう事は想像に難くない。金髪碧眼の、あの目立つ容姿では平民も無理だろう。
ただ、もしも平民に落とす様な事をするのであれば行方不明の名の下に何をするか分からないけれど、とグィードは思った。流石にそれだけは許さない、と考える。
それからふ、と外を見やると学園がもう目の前まで近付いていた事に気付いた。
するとグィードは先程までの残忍な思考を追いやり、今日の授業の事や生徒会での仕事について考えを瞬時に切り替えた。そうして其処には、冷酷な悪魔では無く侯爵令息グィード・バルディーニが静かに座っていた。
ラウラは当初の予定通り、隣国への視察の為にダリオと共に旅経つ為、王城に前日入りする為に朝早くバルディーニ邸を出て行った。
列車での旅は隣国へは一週間は掛かる為この様なスケジュールになったのだ。
グィードとジュリオに見送られ、ラウラは元気よく城からの迎えの馬車に乗って行った。
「ううむ、矢張り心配だな・・・・・・」
自分の隣に立つ父親の言わんとしている事も分かるし、その心配も理解できる。何せ、ラウラに取ってこれが初めての単独行動になるからである。
勿論、婚約者のダリオと共に向かうから本当の意味で単独ではないが家族と離れて、と言う意味ならば確かにこれが初めてだ。
「父上、大丈夫ですよ。ラウラは其処迄箱入りな娘じゃないでしょう」
グィードとて心配だが、トレンティノ王国の側が慣れないラウラに色々とフォローをする筈だから大丈夫だろう。
心配するジュリオを慰めつつ、自身も学園に行かねばならない為邸を出た。
走る馬車の中で、グィードは聖女認定の儀式について考えた。招待状の日付は冬休みに入って三日目になっている。
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まあ、そうはならないけど。
当日の阿鼻叫喚の図を想像して、グィードはニヤリと笑った。
筋書きとしては、ルイスの正体をその場で暴露して捕えさせ、その後共犯である事が発覚する前に逃げ出すであろうアルバーノはダエーワに追跡させ追い詰めさせる。
ルイスの事は放って置いても火炙りは免れない。魔女の事はそれで良いと思ってる。最期を見届けてやればそれでいい。アルバーノの事は勿論自分がこの手できっちりけりを付けるつもりである。
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ただ、もしも平民に落とす様な事をするのであれば行方不明の名の下に何をするか分からないけれど、とグィードは思った。流石にそれだけは許さない、と考える。
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するとグィードは先程までの残忍な思考を追いやり、今日の授業の事や生徒会での仕事について考えを瞬時に切り替えた。そうして其処には、冷酷な悪魔では無く侯爵令息グィード・バルディーニが静かに座っていた。
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