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もうひとつの視点へ
律は車に乗り込み、後部座席にどさりと座ると、大きく、深々と溜息を吐いた。
「大丈夫かい? 律君」
疲れ切ったように項垂れる律に、渥美克也はそう言いながら、運転席から心配げに後部座席の律を見やる。
「ええ、何とか」
ぐったりと座っていた律は、微苦笑を漏らしながら起き上がった。
「彼が例の?」
「ええ、そうです」
ただのクラスメイトだった筈の男から、何故だか付き纏われるようになって数ヶ月。確かに、先に話しかけたのは自分だ。しかし、だからと言って何故付き纏われなければいけないのか。
まあ、悪意は感じないからマシと言えばマシなのだろうか。
しかし何時、その行為が悪意に転じて害を成すか分かったものではない。
早いうちに何とかしなければいけないのだろうが、困った事に大した事をしてこない為、警察や弁護士に相談する事も難しい状態なのだ。
だから、って何か起こされたんじゃ困るんだけど・・・・・・。
自分が被害に遭うだけなら我慢もするが、他にも害が及ぶのだけは避けたい。
走り出す車の中で、律は憂鬱な気分を振り払うように顔を軽く振った。
これから好きな人に会うのに、こんな気持ちを引き摺ったまま会いたくは無い。
「・・・このまま先生の所に行っても?」
心配しながら聞いてくる男に、律は気を取り直して頷いた。
「はい、お願いします」
先生、と言うのは政治家である倖田直寿の事だ。克也はその秘書をしている。秘書の中で一番の若手である為、律との連絡役をしてくれていた。
そう、律の好きな人、とは政界の重鎮のひとりである倖田直寿であった。
直寿とは祖父と孫程歳が離れているのだが、本当の孫である慎弥繋がりで、知り合ったのだ。
彼のスケジュールの隙を縫って逢瀬を重ねていたのだが、やっと久しぶりに会えると言うのに、こんな煩わしい事を引き摺っていたくは無いので、律はさっさと頭からストーカーモドキを追い出して切り替えるのであった。
一方、置いて行かれた碧は暫し呆然としていたが、はたと我に帰りよろよろと歩き出した。
ああ、告白する前で良かった~~~!
危うく恥ずか死する所だった、と胸を撫で下ろす。
実際、そう思わないとやっていられないと言うのが本音だが、心の中で誰に言い訳しているのかつらつら言い募っていた。
でもでもりっ君も酷いよ!ボクの気持ちに気付いてたクセにさ、って言うか絶対ボクの気持ち気付いてたよね⁉︎なのに何でだよ・・・・・・酷いよ・・・・・・。
急に責任転嫁をしたかと思うと、顔を真っ赤にさせながらずんずん駅に向かって歩き出していた。
・・・・・・まあ、あんなハイスペ、っぽいイケメン相手じゃ、ボクなんか物足りないかもしれないけど・・・・・・。
と、急に沈み込んだりと心の内で忙しくしながら改札を通り抜け、一人寂しく電車を待つ。
あんな風に親しげに話しかけてくるからさあ、勘違いしちゃうじゃん・・・はあーあ・・・明日からどんな顔して登校したら良いんだろ・・・・・・。
そんな事を考えながら、碧は到着した電車に乗り込んだ。
「大丈夫かい? 律君」
疲れ切ったように項垂れる律に、渥美克也はそう言いながら、運転席から心配げに後部座席の律を見やる。
「ええ、何とか」
ぐったりと座っていた律は、微苦笑を漏らしながら起き上がった。
「彼が例の?」
「ええ、そうです」
ただのクラスメイトだった筈の男から、何故だか付き纏われるようになって数ヶ月。確かに、先に話しかけたのは自分だ。しかし、だからと言って何故付き纏われなければいけないのか。
まあ、悪意は感じないからマシと言えばマシなのだろうか。
しかし何時、その行為が悪意に転じて害を成すか分かったものではない。
早いうちに何とかしなければいけないのだろうが、困った事に大した事をしてこない為、警察や弁護士に相談する事も難しい状態なのだ。
だから、って何か起こされたんじゃ困るんだけど・・・・・・。
自分が被害に遭うだけなら我慢もするが、他にも害が及ぶのだけは避けたい。
走り出す車の中で、律は憂鬱な気分を振り払うように顔を軽く振った。
これから好きな人に会うのに、こんな気持ちを引き摺ったまま会いたくは無い。
「・・・このまま先生の所に行っても?」
心配しながら聞いてくる男に、律は気を取り直して頷いた。
「はい、お願いします」
先生、と言うのは政治家である倖田直寿の事だ。克也はその秘書をしている。秘書の中で一番の若手である為、律との連絡役をしてくれていた。
そう、律の好きな人、とは政界の重鎮のひとりである倖田直寿であった。
直寿とは祖父と孫程歳が離れているのだが、本当の孫である慎弥繋がりで、知り合ったのだ。
彼のスケジュールの隙を縫って逢瀬を重ねていたのだが、やっと久しぶりに会えると言うのに、こんな煩わしい事を引き摺っていたくは無いので、律はさっさと頭からストーカーモドキを追い出して切り替えるのであった。
一方、置いて行かれた碧は暫し呆然としていたが、はたと我に帰りよろよろと歩き出した。
ああ、告白する前で良かった~~~!
危うく恥ずか死する所だった、と胸を撫で下ろす。
実際、そう思わないとやっていられないと言うのが本音だが、心の中で誰に言い訳しているのかつらつら言い募っていた。
でもでもりっ君も酷いよ!ボクの気持ちに気付いてたクセにさ、って言うか絶対ボクの気持ち気付いてたよね⁉︎なのに何でだよ・・・・・・酷いよ・・・・・・。
急に責任転嫁をしたかと思うと、顔を真っ赤にさせながらずんずん駅に向かって歩き出していた。
・・・・・・まあ、あんなハイスペ、っぽいイケメン相手じゃ、ボクなんか物足りないかもしれないけど・・・・・・。
と、急に沈み込んだりと心の内で忙しくしながら改札を通り抜け、一人寂しく電車を待つ。
あんな風に親しげに話しかけてくるからさあ、勘違いしちゃうじゃん・・・はあーあ・・・明日からどんな顔して登校したら良いんだろ・・・・・・。
そんな事を考えながら、碧は到着した電車に乗り込んだ。
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