イヴたちの館

さくら乃

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第七章

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 先にランチルームに行っているかも知れない。それだっていつもだったら待っていてくれたし、先に行く時はそう言ってくれていた。
 沈んでいく気持ちでランチルームに向かう。中に入って一通り室内を見回し、一応テラスも見てみた。しかし、凜音たちの姿はない。
 仕方なく一人で昼食を取る。まるっきり味がしないように感じた。食べ終わるとさっさと片付ける。
 ランチルームでは他でも食べられるように弁当タイプのものもある。彼女たちがもしかしたらそれを持って他に行っている可能性も考えた。校舎から外に出てみる。正面に見える前庭には誰もいなかった。
(今日は本当に寒いもの。外で食べる人なんていないわよね)
 そう思いながら校舎の横に回ると、礼拝堂が見えた。礼拝堂を見るとシスターユリアを思い出す。そしてあの凄惨な絵玲奈の死体を。
(そう言えば……シスターユリアは何処に行ったのかしら。まさか、絵玲奈さんみたいにもう……)
 そう考えて頭をぶんぶんと横に振る。
(シスターが……というのは聞いたことがないわ)
 礼拝堂の前まで来て入ろうかどうか少し迷ってから、そのまま踵を返そうとした時、微かに話し声がした。礼拝堂の中側ではなく外からだ。
(え……凜音さん?)
 その声が凜音の声のように聞こえた。扉の前を通り過ぎ礼拝堂の裏の方に足を忍ばせて行く。
 何か予感とかがあったわけでもなく、ただこんな人目につかないようなところで話をするのは聞かれたくない『何か』があるのではないかと思っただけだ。
 すぐには出て行かず様子を見ようと思った。壁にぴたりと顔をつけてそっと覗き込む。
「もう嫌なんですけど」
 眼鏡を押し上げながら亜津紗がきっぱりと言う。
「わたくしもですわ」
 隣で瑞希も同意する。
 華から見て一番手前にいるのが凜音だ。背中を向けているのでその表情はわからない。
「イヴさまの為でしょ」
「華さんを虐めることが何でイヴさまの為になるのかしら」
 亜津紗の顔がきつくなる。
「今更っ。説明したじゃない、華さんを苦しめることが涼さまを苦しめることになるって。あたしたちイヴさま派は涼さまのことは認めない。この学院で一番美しくて尊いのはイヴさまなのよ」
 凜音は興奮したのかだんだん声が高くなる。
 華の心臓が変な音を立てた。
(いったい……どういうこと……凜音さんがイヴさま派だって……) 
 がたがたと震えだした自分の身体を両腕で抱き締めた。
「わたくしたち別に涼さまのことを嫌っているわけじゃないし……それは凜音さんだけじゃないのかしら?」
 ねぇと隣の亜津紗に同意を求め亜津紗も頷いた。
「他の方に便乗して華さんを虐めるなんてわたしたちはもう嫌だわ」
    
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