イヴたちの館

さくら乃

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第七章

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「それにイヴさまの為だっておっしゃるけど、凜音さんのは単なる嫉妬ですわよね?」
「なんですって」
 凜音が声を荒げる。
「華さんがイヴさまに気に入られてるものだから」
 凜音の肩が細かく震えているのが見えた。
「そんなことな……あたしはイヴさまの為に……」
 声も震えている。
「あんな虫だって触る嫌なのにそんな鼠だなんて」
(ね……ねずみ?)
 後ろ向きの凜音が手に何を持っているのかはわからない。しかし亜津紗が言うことが本当であるなら。
「あとは凜音さんお一人でどうぞ。凜音さんなら虫や鼠も平気でしょう。そういうお育ちですものね」
「どういう意味? ふん、貴女たちがどれだけいいお育ちだとしても所詮はあたしと同じで捨てられたんじゃないの」
「なんですって」
 今まで仲良くしていたのが嘘のような言い合いだった。華の中で何かが崩れていく。
「行きましょう、亜津紗さん」
 二人は背中を向けて華とは反対側から去って行った。逆に凜音が振り返る。いつも明るい凜音の歪んだ表情。その手には透明な袋に入った血に染まった小さな何か。
(あれ、鼠? あれをわたしの机の中に)
 頭が真っ白になる。凜音がこちらに向かって歩いて来るのが目に映っているのに、本当なら早く去らなきゃいけないのに、全く動くことが出来ない。
 凜音とかち合うのは当然だった。彼女が角を曲がって来て目が合った。
「は……なさん」
 一瞬凜音も何が起きたのかわからないような表情をし、その後いつものように親しみのある顔に変わり、そして。
「聞いて……たのね」
 陰鬱な表情に変わる。
「凜音さん……今の嘘よね」
 嘘じゃないことはわかっているのに。嘘だと信じたかった。
「あははは……今の聞いててそれ言う? 嘘じゃないわよ。今までのが嘘だったのに決まってるでしょ」
 とどめを刺された気分だった。それでも信じたくなかった。
「今までのが全部嘘だなんて……そんなこと……ないわよね。話し掛けてくれた……味方になってくれた……」
 つき合いはまだ短かったけど、それでも三人で笑い合ったことが頭に浮かぶ。
「貴女の信用を得て……それから貶める為よ。貴女がイヴさまのお茶会でお姉さま方の反感を買った。それでクラスのイヴさま派に指令がいって貴女への虐めが始まった。あたしはそれに便乗したの、いい頃合いだと思ってね」
「ひどい……なんでそんなことを……」
 身体の震えと共に声も震える。
「イヴさまの為よ……貴女が涼さまのルームメイトで……そして、涼さまに気に入られているから」
「意味がわからない」
「わからなくて結構よ」

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