イヴたちの館

さくら乃

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第九章

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「イヴリン・ホワイト……この名前本当は彼奴の母親の名前なんだ」
「え?」
 話の最初から驚かされる。 
 そして涼がいつも口にしていた『彼奴』はやはり学院長のことだったのだ。
「彼奴の本当の名前は――鳳翔ほうしょう伊吹いぶき
 くうに指で字を書きながら言う。
「日本人……?」
 日本名だからといって日本人とは単純過ぎるだろうか。絵玲奈のこともある。見た目はどう見ても日本人ではないのだから。
「戸籍上は――しかし本当は両親ともイギリス人だ」


 ホワイト家は中世からあるイギリスの貴族だ。しかしある一部では悪い噂も流れている。その一族は血族結婚を繰り返していた為か時折異常な者が産まれるということだ。
 残忍な性格の者、何かに異常に執着する者、実の親子・兄妹・姉弟と交わる者。
 イヴリン・ホワイトは実の弟と交わっていた。
 そのことが両親に知るところとなった。血族結婚を繰り返していたとは言え実の姉弟が交わっていたことが世間に知られるのは憚れる。前々から懇意にしていた日本の財力のある家と嫁がされた。
 しかしイヴリンは既に弟の子を身籠っていた。それを理由に弟を鳳翔家に呼び寄せた。夫の鳳翔光一郎こういちろうは何人もの愛人を持ち妻を顧みなかったので、イヴリンの子が自分の子ではなくても弟が鳳翔家にいたとしても気にしなかったのでその点で何の問題もなかった。

 イヴリンは金色の髪青い瞳を持つ美しい女で、自分の美にも執着をしていた。若い女の血を飲む、身体に浴びるなどという行為が美しさと若さを保つと信じていた為母国にいた頃も領地の娘を拐っては残虐な行為を繰り返していた。また彼女は悪魔を崇拝し生贄を与え自分の永遠の美しさを願った。
 彼女は出産後自分の身体が醜く変わり顔の美しさも衰えを感じ始めた。日本ではそうそう母国でのようなことは出来ない。そこで彼女は様々さまざま考えた。自分の美しさを保つ為に血を得る為の方法を。
 
 鳳翔家は各地にたくさんの広い土地を持っていた。その中で出来るだけ外界から離れた場所を選び学校を設立するように夫に頼んだ。そこが始動した暁にはイヴリンが学院長に就任し、娘と共に移り住むということだった。
 夫・鳳翔光一郎は思った。
 確かに妻のことには興味がなく何をしていたとしても構わないだろう。しかしやはり産まれた娘の父親が妻の実の弟ということが世間に露見すれば家名に傷がつく。そして正直なところ姉弟の交わりなど気味が悪すぎると思っていたのだ。 
 ホワイト家との契約上離縁することは出来ないが外界と遮断された場所へやってしまうことは出来る。
 イヴリンの提案は彼にとっても好都合であった。
 
 こうして創立したのが聖マリア女学院だった。

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