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第十四章
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しおりを挟む(そう言えば、子どもの頃……)
小学生の頃、一緒に動物園や水族館に行ったことを思い出す。
僕の家族と行ったり、時には樹の母親も一緒だった。あの頃から樹の父親の影は本当にない。
樹は何処に行っても、いつもきらきらな瞳で動物や魚を見ていた。笑顔で、はしゃいで、本当に楽しそうだった。
(顔には出ないけど……ちょっと面影あるかも)
そんな樹を見れて嬉しかった。
水槽の中をふわふわと泳ぐ海月。
ここはいろいろな種類の海月が細長い水槽に分けられているゾーン。
海月は好きだ。
ふわふわしている姿はなんだかとても癒される。
ずっと見ていられる。
「…………」
「……海月好きは相変わらずか」
「えっ」
隣に樹がいるのをうっかり忘れそうになってしまった。
いったいどれくらいの間見ていたのだろう。
「……覚えてた……?」
「まあね」
自分の世界に入ってしまっていたことに恥ずかしくなる。
「僕も覚えてるよ。動物園に行っても水族館に行っても、いつも一番はしゃいでた」
恥ずかし過ぎて余計なことを口走ったかなと、ちらっと横を見る。昔のことを話すのはもしかしたら樹は嫌がるかも知れない。
「忘れろ」
一言そう言われたが、恥ずかしいのをちょっと我慢しているような顔だった。
(ふふ。
なんか可愛い。
ぜったい言えないけど)
「海月……なんか、ナナみたいだ」
「え? そう?」
(どういうことだろ。
言われたことないけど)
ぽけっと樹の顔を見たままでいると、ふにっと頬を摘ままれる。
「なんか、ふわふわした感じで……癒される……」
どきんっ。
心臓が大きく音を立てる。
すぐに手は離され、
「そういう間抜けな顔が」
そうつけ加えられた。
「間抜けって、ひどっ」
でも、背を向けて他の水槽に行く直前の照れたような顔を僕は見てしまった。
(何今の。
癒されるって)
いつも他人に対して固く閉じている心。
表情もそれと同じくらい固く暗いに違いない。
それに。
仲良かった頃ならともかく、ずっと避けられ再会した頃は冷たくされていた。
嫌われてると思ってた。
そんな僕を、本当はそう思ってくれてたのか。
(僕……嫌われてない……?
いっくんも、昔と同じ気持ち……?)
じんわりと温かな気持ちになる。
最近は少しずつ距離が近くなってきたとはいえ、まだまだ元に戻っている程でもないし樹が本当はどう思っているのかもわからない。
未だに聞けていないこともある。
樹が僕から離れて行った理由とか。
嫌われていなかったとしたら、いったいどんな気持ちで、離れていったんだろう。
それを考えるとまた重い気持ちになるけれど。
(今は、そう。
少しずつ少しずつ。
いっくんに近づいていきたい。
あの頃のように。
一番の友だちとして──)
一番の友だち。
そこまで考えて、ふと自分の心の中に別な感情があるような気がしたけれど。
「ナナ。カナがそろそろ集合しようって」
そう声をかけられて、それは掴めずに消えていった。
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