はじまりの朝

さくら乃

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第二十一章 

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「なんで?」
 意味がわからないまま、とりあえず樹の言う通り立ち止まった。
「イルミの電球が壊されてね」
 答えたのは店長だった。大きな溜息と共に。
 まだ外が明るかったので気づかなかった。
 塀や門に飾りつけられていたイルミネーションの電球は無惨な姿になっていた。そして、その破片がそこかしこに散らばっている。
 さっき足許でジャリジャリしていたのはこれだった。
 僕はなるべく踏まないように大股で、門の中に入った。
「え……っ。これ……」
 壊されたのは電飾だけではなかった。
 門の外側にいつも置いてある看板やメニューがへし折られここにあった。
「酷いっ」
「そうなんだよ。最近落書きが増えて、その度に消したり上から塗ってみたりしてたんだけど、今日来たらこうだったんだ」
 店長の視線は、門から扉まで行き来した。
 それに習って僕も視線を走らせると、アプローチにあるライトも扉前のメニューもやはり壊されていて、扉にも落書きがあった。
 店長はがっかりと肩を落とし、眉を下げ酷く悲しげな顔をしていた。
 樹はずっと無言で、悔しそうに唇を噛んでいる。
「これじゃあ、営業出来ないだろ? 樹くんには朝連絡して、しばらく休んでくれるように言ったんだけど。心配して来てくれたんだよ」
 樹はぎゅっ目を瞑り、ぶんぶんと頭を横に振った。
「俺のせいだ」
 両の拳を白く成る程握り締めている。
 店長は、樹を労るようにぽんぽんと肩を叩いて、扉のほうに歩いて行った。

「俺のせいって……いっくん、どういう意味……?」
 店長が店の中に入ったのを見計らって僕は訊ねた。
「俺がの言う通りに行動しないから」
「彼奴らって? 学校の『仲間』のこと?」
「あんな奴ら仲間じゃないっ」
 低く唸った。
「やっぱり『仲間』じゃなかったんだ……」
 樹は怒りに我を忘れているのか、この間誤魔化そうとした『仲間』のことを、はっきり自分で否定してしまった。
 一瞬『しまった』というような顔をしたが、
「そんなことどうでもいい」
 と開き直った。
「学校の連中だけじゃない、龍惺会の連中が関わってる。末端連中だが、そっちのほうが危ない──ナナ、俺の傍に寄るなって言ったろ、なんで来たんだ」
 そう言いながら、目はきょろきょろと門の外側を気にしている。
 

(何か気にしてる? 誰かいるの?)


 そう思いながら。
 今日ここに来た大事な理由を言わなければ、と。
「あの人彼女じゃなかったよね」
 気が急いでいろいろ抜けてしまっている。
 しかし、よくよく考えれば──いや、よくよく考えなくてもだけど。


(おーいナナ、こんな大変な時に言うことじゃないよね?!)
 

 自分にツッコミを入れたくなった。


 
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