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第七章『やっぱり『触れ合いたい』の『好き』でした』
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水族館ではかなり遠慮してしまったけど、こういう非現実的な世界にいるとだんだんと大胆になってくる。
水族館の時よりもぐっと近くに並び、コースター系のアトラクションの時には怖い振りーーというより、実際怖いのでぎゅっと陸郎にしがみついたりもした。
彼は少しも嫌がらない。これも『埋め合わせ』なのかと思うとちらっと切ない気持ちも過ぎるけど。でもここぞとばかりに恋人気分を満喫する。
陸郎が遊園地系のところに来るのは小学生以来だと言ってたが、どうやらコースター系には強いらしく少し表情が明るくなる。もしかしたら、空を飛ぶような感覚が棒高跳びで飛ぶ感覚を思い起こさせているのかも知れない。
一つアトラクションに乗るのに一時間ほど並ぶものもあったが、並んでいる時間もいつもより話が弾んだ。一つ乗り終える度に休憩を取り、飲み物や軽食などを摘む。
偶然行き当たったパレードも休憩と称して楽しんだ。僕は周りの人たちの様子を見ながら手だけを動かし少しだけダンスに参加した。それを陸郎が微笑みながら眺めているのにすごくドキドキしてしまった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
閉園時間は十時だが僕らはその二時間ほど前にドリーミング・パークを後にした。
夜空に花火があがる音。
出口前の広場で僕らはそれを見ていた。
「出ちゃって良かったのか? もうちょっといても良かったのに」
「いいんです、もうたくさん楽しみましたから」
でもほんの少しだけ名残り惜しい気持ちもあったけど。
ちょうど花火の時間でここまでは見ていこうという人も多いのか、出口付近は人がまばらで僕は自然に陸郎の手を取った。陸郎も握り返してくれる。
(ほんと、夢の世界だったな……まだ余韻が残っている今だからこそ陸郎さんもこうやって手を繫いでくれるんだろうな……)
幸せな気分だった。
そして、僕らは駅にーーは行かず、近くのホテルに向かうシャトルバスの発着所に向かった。
そう。
そうなのだ、実は今回のテーマパークデートはお泊まりプランなのだ。
それを言いだしたのは僕ではない。
『埋め合わせをする』と陸郎が言った日にこのドリーミング・パークに行くことが決まったわけなのだが、その数日後優雅に邪魔されず一緒に昼食を食べていた日に。
「どうせなら泊まって行く? 近くにオフィシャルホテルとかあるんだろ」
行くと決まってからどうやら陸郎もいろいろ調べてくれたらしい。
「え……冗談ですか?」
すぐには信じられなかった。しかし陸郎は冗談でそんなことを言うタイプでもなかった。
「本気……ですか?」
水族館の時よりもぐっと近くに並び、コースター系のアトラクションの時には怖い振りーーというより、実際怖いのでぎゅっと陸郎にしがみついたりもした。
彼は少しも嫌がらない。これも『埋め合わせ』なのかと思うとちらっと切ない気持ちも過ぎるけど。でもここぞとばかりに恋人気分を満喫する。
陸郎が遊園地系のところに来るのは小学生以来だと言ってたが、どうやらコースター系には強いらしく少し表情が明るくなる。もしかしたら、空を飛ぶような感覚が棒高跳びで飛ぶ感覚を思い起こさせているのかも知れない。
一つアトラクションに乗るのに一時間ほど並ぶものもあったが、並んでいる時間もいつもより話が弾んだ。一つ乗り終える度に休憩を取り、飲み物や軽食などを摘む。
偶然行き当たったパレードも休憩と称して楽しんだ。僕は周りの人たちの様子を見ながら手だけを動かし少しだけダンスに参加した。それを陸郎が微笑みながら眺めているのにすごくドキドキしてしまった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
閉園時間は十時だが僕らはその二時間ほど前にドリーミング・パークを後にした。
夜空に花火があがる音。
出口前の広場で僕らはそれを見ていた。
「出ちゃって良かったのか? もうちょっといても良かったのに」
「いいんです、もうたくさん楽しみましたから」
でもほんの少しだけ名残り惜しい気持ちもあったけど。
ちょうど花火の時間でここまでは見ていこうという人も多いのか、出口付近は人がまばらで僕は自然に陸郎の手を取った。陸郎も握り返してくれる。
(ほんと、夢の世界だったな……まだ余韻が残っている今だからこそ陸郎さんもこうやって手を繫いでくれるんだろうな……)
幸せな気分だった。
そして、僕らは駅にーーは行かず、近くのホテルに向かうシャトルバスの発着所に向かった。
そう。
そうなのだ、実は今回のテーマパークデートはお泊まりプランなのだ。
それを言いだしたのは僕ではない。
『埋め合わせをする』と陸郎が言った日にこのドリーミング・パークに行くことが決まったわけなのだが、その数日後優雅に邪魔されず一緒に昼食を食べていた日に。
「どうせなら泊まって行く? 近くにオフィシャルホテルとかあるんだろ」
行くと決まってからどうやら陸郎もいろいろ調べてくれたらしい。
「え……冗談ですか?」
すぐには信じられなかった。しかし陸郎は冗談でそんなことを言うタイプでもなかった。
「本気……ですか?」
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