54 / 58
第七章『やっぱり『触れ合いたい』の『好き』でした』
7
しおりを挟む
自分のベッドにリュックを載せるとそのままベッドに腰をかける。カーテンが開いたままの夜景の見える窓のほうに顔を向け、ほうと小さく息を吐いた。
なんだかもう胸がいっぱいだった。
「温くん」
突然声をかけられ「ひゃい」っと変な返事をしてしまった。恥ずかしげに陸郎のほうに顔を向けると、またくすっと笑われた。
「腹減らない? 下にコンビニあったね、何か買いに行く?」
そういえばドリーミング・パークでは時々軽く食べていたが、がっつり夕食はまだだったし飲み物も何か欲しい。
「ですね、行きましょうか」
エレベーターで一階まで降りフロント前を通ると、ぞくぞくと宿泊客が入ってくる。皆ドリーミング・パークを楽しんで来たのだろう。それを何となしに眺める。
家族連れ。友だち同士のグループ。恋人同士。
パークにいる時も思ったが、やはり男同士二人連れというのは余りいないものだ。
僕らはいったい何に見える?
恋人同士――のはずはない。兄弟か友だちだろう。
(まぁ……仕方ないよね。それに……恋人同士に見えたら、それはそれで……ね)
同性同士のカップルはまだまだ万人には理解されない世の中だ。
(それでもね……僕は陸郎さんの本当の恋人になりたいよ)
きゅっと切なく胸が締めつけられた。
部屋に戻りそれぞれ買ってきたもので夕食を取る。それから入浴タイム。先に僕が入り、その後陸郎が入る。
一緒に泊まることの本当の破壊力を感じたのはその後だった。
外で食事をするくらいはこれまで何度かあった。でも風呂上がりの陸郎を見る日が来ようとは、これまで想像すらしなかったのだ。
タンクトップにクロップ丈のスウェット。髪をタオルで拭きながら部屋に戻って来る。シャワー後の熱気がまだあるのか、髪から滴る雫とともに汗が露出した肌を流れていく。
「どうした?」
固まったまま、まじっと見つめる僕に不思議そうに声をかけてくる。
(なんか……色っぽい。鼻血でそうですっ)
頭がくらっとする。ひっくり返りそうなところをなんとか踏ん張って。
「あ、ううん。知り合って長いですが、お風呂上がりの陸郎さん見るの初めてで、なんか新鮮ですね」
何でもありませんという顔でさらっと言った。
陸郎はコンビニで買ってローチェストの上に置いたままだった水を手に取って、自分のベッドに腰かけた。
蓋を開け、ごくごくと飲む。喉仏が動く様を見るだけでも何故か心臓が煩くなる。
「俺だって温くんの風呂上がり見るの初めてだ……確かに新鮮だな」
どこか意味ありげな視線に顔が熱くなってしまいそうだ。
(いやいや、意味なんか全然あるわけないよっ)
なんだかもう胸がいっぱいだった。
「温くん」
突然声をかけられ「ひゃい」っと変な返事をしてしまった。恥ずかしげに陸郎のほうに顔を向けると、またくすっと笑われた。
「腹減らない? 下にコンビニあったね、何か買いに行く?」
そういえばドリーミング・パークでは時々軽く食べていたが、がっつり夕食はまだだったし飲み物も何か欲しい。
「ですね、行きましょうか」
エレベーターで一階まで降りフロント前を通ると、ぞくぞくと宿泊客が入ってくる。皆ドリーミング・パークを楽しんで来たのだろう。それを何となしに眺める。
家族連れ。友だち同士のグループ。恋人同士。
パークにいる時も思ったが、やはり男同士二人連れというのは余りいないものだ。
僕らはいったい何に見える?
恋人同士――のはずはない。兄弟か友だちだろう。
(まぁ……仕方ないよね。それに……恋人同士に見えたら、それはそれで……ね)
同性同士のカップルはまだまだ万人には理解されない世の中だ。
(それでもね……僕は陸郎さんの本当の恋人になりたいよ)
きゅっと切なく胸が締めつけられた。
部屋に戻りそれぞれ買ってきたもので夕食を取る。それから入浴タイム。先に僕が入り、その後陸郎が入る。
一緒に泊まることの本当の破壊力を感じたのはその後だった。
外で食事をするくらいはこれまで何度かあった。でも風呂上がりの陸郎を見る日が来ようとは、これまで想像すらしなかったのだ。
タンクトップにクロップ丈のスウェット。髪をタオルで拭きながら部屋に戻って来る。シャワー後の熱気がまだあるのか、髪から滴る雫とともに汗が露出した肌を流れていく。
「どうした?」
固まったまま、まじっと見つめる僕に不思議そうに声をかけてくる。
(なんか……色っぽい。鼻血でそうですっ)
頭がくらっとする。ひっくり返りそうなところをなんとか踏ん張って。
「あ、ううん。知り合って長いですが、お風呂上がりの陸郎さん見るの初めてで、なんか新鮮ですね」
何でもありませんという顔でさらっと言った。
陸郎はコンビニで買ってローチェストの上に置いたままだった水を手に取って、自分のベッドに腰かけた。
蓋を開け、ごくごくと飲む。喉仏が動く様を見るだけでも何故か心臓が煩くなる。
「俺だって温くんの風呂上がり見るの初めてだ……確かに新鮮だな」
どこか意味ありげな視線に顔が熱くなってしまいそうだ。
(いやいや、意味なんか全然あるわけないよっ)
1
あなたにおすすめの小説
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
僕は今日、謳う
ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。
彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。
彼との最後の思い出が欲しかったから。
彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。
本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。
終始セリフばかりです。
話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。
名前が出てこない短編part4です。
誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。
途中手直しついでに加筆もするかもです。
感想もお待ちしています。
片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が!
あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。
私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる