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しおりを挟むオレは足だけをベッドから下ろし、ハルと向かい合う。こうやって見下ろされるとさらに大きく感じるが、今は耳の垂れたワンコのようだ。
暖色の灯りで浮かび上がるハルの顔。久しぶりに間近で見る。
彫刻のように整った顔立ち ── キリリとした男らしい眉。通った鼻筋。眼はやや切れ長だがくっきり二重瞼 ── 冬馬に似た……。
唇だけは冬馬よりも少し大きく薄め。
髪はツーブロック。今日はパーティー仕様なのか整髪料でルーズに逆立てている。
暖色系の光が当たり、本来の色は良く分からないが、確か最近夏生が送ってきた写真だと ── アッシュグレイだったな。
仕事の為か、この二年間で髪色は様々変わっていた。二年前は、冬馬と同じ黒だったのに。
「すんません……こんな時間に。と、思ったんですが、シウさんのうなされてる声が聞こえて……」
オレはどれだけうなされてたんだろう。
「ああ、うん……そっか……」
そこはもう触れないことにして軽く流す。それより。
「オレ ── パーティーでおまえに会った?気がついたら家だったんだけど」
「いえ。顔を合わせる前にぶっ倒れました。俺の眼の前で」
「ぶったおれ……っ。ああ……そう……」
( それは、見ものだったろうなぁ。注目浴びちゃったかなぁ )
「すんません、すぐに反応できなくて。抱き留められればよかったんだけど」
そこでまたハルが謝る。
「いやいやいや、ハルのせいじゃないでしょ。 ── 夏生と一緒だった?」
桜宮夏生。サクラ・メディア・ホールディングス社長の二男で、モデル事務所の社長をしている。
中等部からの友人だ。オレの父親が創立したカンナ音楽院の隣に建つ聖愛学園。音楽院の生徒は、一般教科をその聖愛学園で学んでいる。夏生は聖愛の生徒で、初等部の頃に何度かクラスメイトになったが、友人と呼べる程になったのは中等部からだ。
── そう、オレの愛した男、橘冬馬が、石蕗秋穂に出逢ってからだ。
彼は、余り登校できず見た目も浮いていたオレに話しかけてくる数少ない者の一人だったが、不思議と馬が合った。思慮深く懐も深く偏見もない男だ。
居どころを失くしたオレは次第に彼に心を開いていき、冬馬にさえ、いや冬馬だからこそ言えないことも、話すような仲になった。
「はい。シウさんが、今日パーティーに来るって、夏生が教えてくれて ── だから俺も ── 」
オレに会う為に来たということか。
( ハルには言うなって、書いておいたのに )
夏生には今日のことは連絡してあった。
ハルに言うな ── 連れて来るな。もしくは、来ても顔を合わせないようになんとかしてくれ、という意味を含んでいることを夏生なら解ったはず。
わざとだな、とオレは内心溜息をついた。
「ハルが、オレをここに?」
顎を軽く引いて頷く。それから、少し気まずげに頭を掻きながら。
「あの、お姉さん ? が、俺に送ってくれって。ほんとは、お兄さん ? が、送りたそうにしてたけど、お姉さん?に止められた」
途中疑問系に語尾が上がるのは、ハルがオレの家族構成を知らないからだ。
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