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しおりを挟むそう、オレたちは互いのことをよく知らなかった。個人的なことは聞かなかったし、聞かれなかった。オレが彼について知ってることは、名前、夏生の従弟、モデル、六つ下、それくらいで、ハルの方もたぶん大差ないはず。
天音と朱音。二人は気づいたろうか。ハルが冬馬に似ていることを。
体格。顔。声。雰囲気 ── 瓜二つという程似ているわけではないが、ハルを見れば冬馬が思い浮かぶくらいには似ている、とオレは思っている。
たぶん、天音はハルをオレに近づけさせたくなかった。そして、朱音は荒療治と思って近づけさせようとした。天音の方が一つ年上だが、朱音の方が強い。結果、ハルはオレをここに連れてくる任務を担った。
「悪かったな。バイク……じゃないだろ?」
「はい、タクシーで。帰ろうかと思ったんだけど、やっぱ、放っておけなくて。勝手に隣の部屋使わせて貰いました」
成程、さっきから恐縮しまくってるのにはいろいろ要因があるわけだ。
夜中にノックしたこと、抱き留められなかったこと、勝手に泊まったこと。
「いいよ。それに、こっちが礼を言う方だ」
「でも、連絡も取らずに会おうとした ── 元気かどうか、一目見るだけでも良かったんだ」
( あと、オレに会いに来たこと、か )
オレは微妙な笑みを浮かべた。
( 確かに ── 会いたくなかったかも )
**
藤名遙人 ── ハルと出会ったのは、大学四年の秋。卒業製作と、卒業後に教授のツテでやる個展の為の撮影を考えていた頃。
大学在学中からモデル事務所の社長に就いていた夏生のところに遊びに行き、そこにたまたまハルが顔を出した。彼は夏生の従弟でもあり、この事務所のモデルでもあるという。
高一だと言っていた。高等部の頃の冬馬に似ていると感じ、
「おまえ、オレの撮影につきあわないか」
と、唐突に言ったことに、自分でも驚いた。
彼は初対面の男にいきなりそんなことを言われ、面食らっていたようだが「いいですよ」と無愛想に返事をした。
数日後、二泊三日で沖縄に行き、撮影をした。
風景が中心で、ハルの顔を正面から映すことはしなかった。夕陽のなか下腹の際どいあたりまで水に浸った裸体をファインダーに収める。
浅黒く逞しい身体つきは、やっぱり冬馬に似ていると思った。
卒業製作は学内の展示室に並んだ後に評価を受ける。ハルを映したこの作品は高評価を得、最後の学内コンクールで特賞を貰った。
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