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しおりを挟む天音はきっと、オレよりもオレのことを解っている。今ここで、自分が誤魔化してきたこと全てが暴かれる。
それを望んでいたとは言え。
オレはふるっと身体を震わせた。
さっきハルの上に重ねた手が、逆にぎゅっと握られた。オレの視線はそこに留まった。
( 駄目だ。最後まで、話聞かなきゃ )
「橘の家は、すぐに冬馬くんの生死を確認したよ。そもそも、隠す気もなかったと思う。冬馬くんは自分の銀行の口座からお金を引き落としていたらしいから。ただ、あのコを石蕗家から遠ざけたかっただけじゃないのかな。橘さんちは冬馬くんの居場所さえ把握できれば、好きにすればいいと思っている。だから、無理に引き戻そうとはしない」
現実味のなかったオレの妄想が、生々しい現実で塗り替えられていく。
それはやっぱりまだ少し辛い。
「石蕗家も、秋穂くんをもう諦めたそうだよ」
「え?」とオレは顔を上げる。
「冬馬くんのご両親が、謝罪とお見舞いに壱也くんのところに行ったんだ。その時に彼の父親から聞いたらしい。壱也くんが『もう秋穂を捜すな。あんな奴いなくていい』って言っていたって。母親は元々彼を追い出したがっていたらしいし、大賛成!だったんじゃなぁい」
最後は天音特有の軽い口調。思い切り毒を含んだ。そして、また、少しトーンを落とす。
「壱也くん、あんなに執着してたみたいなのにねぇ。壱也くんをポールスタンドで殴ったの、秋穂くんみたいだし、そこまでされたらもう手放してあげようとでも思ったのかな。彼なりの愛情かもねぇ。── 以上が、僕が聞いた話だよ」
これが、橘家の人がオレに伝えたかったことの全て。でも、オレが拒んだから、天音に託した。
── 冬馬は生きている。秋穂とふたりで、生きているんだ。彼らの邪魔をする者は、もう誰もいない。そして、今はこの場所にいるんだな。
オレは天音の差し出したメモ用紙を、手に取った。
まだ、辛さもある。それでも。これでオレも、先に進むことができる。
いつもオレを見送る時には外まで出てくる天音が、今日は自室の前で「またね」と言う。
そして、ハルに顔を近づけて。
「詩雨くん、捨てたら、許さない」
ドスの利いた声を出す。怖いくらいの笑みを浮かべて。
玄関先まで母親と、朱音、朱音の娘・黄菜が見送りに出てくれる。
朱音はオレが今日来るのを知って、わざわざ実家に来てくれたらしい。
「ハルくん、詩雨のことよろしくね」
朱音がにこにこしながら言うが、天音と同じく何処か威圧的だ。
ハルは身体を固くしながら、こくっと頷いた。
「しうちゃん、バイバ~イ」
黄菜の可愛い声に見送られながら、オレたちは並んで歩いた。門の前で振り返ると、皆まだそこにいる。オレは大きく振った。
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