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しおりを挟むふたり ── 冬馬と秋穂は、庭先にある物干しに衣類を干し始めた。それが済むと、寄り添いながら庭を巡る。
秋穂が花壇の前に座り、冬馬を見上げて何か話しかけている。それを冬馬が愛おしそうに見ながら答えている。冬馬が洗濯カゴを持ち、秋穂の肩を抱きながら、ふたりは家の中に戻る。
それだけのこと。
そんな風景が次第に滲じみ始め、オレはぐっと堪えた。
「なんだかなぁ……アイツ、雰囲気変わったよなぁ」
今の気持ちとは反対の、軽口を叩く。
(それから……秋穂も)
── 緑の中の……一枚の絵画のような……。
ふたりの世界のイメージは、オレの中ではずっとそれだった。
自分たちの想いに気づかない、少年の危うさ。離れていこうとする互いを、必死で繋ぎ止めようとする悲壮感。
そんなイメージは、今の一瞬で消え去った。
秋穂は相変わらず繊細な姿かたち。でも、いつも儚く微笑んでいた、その笑みが違う。
そう、さっき見た冬馬のデザインと一緒。
透明なものが、色づいていくような。そんな感じ。
それはそのまま、今のふたりのイメージ。
暖かな色で、色づいた。
( 幸せ……なんだな。やっと……幸せを手に入れたんだな……ふたりで )
オレは扉がしっかりと閉じられたのを確認すると、木の柵まで近づいていく。
そして。
肩にかけていたトートバッグの中から、一本の紅い組紐を取り出す。
今までずっと、オレの髪に結わかれていた、冬馬のくれた紅紐。
オレはそれを、その木の柵に結びつけた。
「行こうか」
ハルに声をかけ、ふたりの住むその家に背を向けた。
**
「本当に会わなくて良かったんですか?」
あの家を後にしてから、言葉を変えながら、何度か訊いてくる。
その度にオレは「いいんだよ」と答える。それを聞いてハルは黙り、オレは違う話を始める。
そんなことを繰り返していた。
「それって、やっぱり、あの人と一緒にいるところを見るのが辛いからですか?」
今回は黙り込むことはせず、溜まったものを吐き出す。本当は何度もそこまで言いたかったのかも知れない。
(やっぱり、まだオレの心の中に、冬馬がいると思っているのか……)
確かにオレはまだ、言葉にしてちゃんと想いを伝えていない。でも、オレは精一杯表情や態度で示していると思ったのだが。
(オレってだいぶ乙女なのか?)
あの曲をハルに贈ってから言葉にしたい。そう思って、まだ言葉にできないでいる。
「それは違う。もう全然辛くはない。ただ、今は会わなくてもいいと思ったんだ。もしかしたら、冬馬はオレに対してまだ、罪悪感のようなものを持っているかも知れないから。今日は、あの冬馬から貰った紅紐を返したかっただけ。それでオレの気持ちも、たぶん伝わる。これがオレの最後のけじめだ」
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