Crescendo ──春(ハル)ノクルオト

さくら乃

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 項に濡れた感触。ざわっと鳥肌。
 髪の毛を切ったオレを気に入ったのか、それからたまにこうやって、項に軽くキスをしてくる。

( え?引いたんじゃなかったの? )

「はあ。何言ってくれちゃってるの。俺がシウさん以外の誰とつき合うっていうんだよ。シウさんのこと好きだって気づいてから、誰の相手もしてねぇよ ── シウさんはどうなの?」
 やや切れ気味に捲し立てられ、気圧される。自然、声が小さくなる。
「オレ?オレみたいなおっさん、モテるわけないよ」
 から笑い。

「はあ。無自覚か。マジ勘弁」
 また大きな溜息。
「どこ歩いても振り返られるし、撮影の時だって、みんなシウさんどう誘おうか、考えてる」
「まさか」
 若い頃ならまだしも、今のオレなんて。
 そう考えていると。

 ちゅっちゅっ。また、項にキス。
「まあ、シウさんが気づいてないなら、俺以外なんてなさそうで、安心」
 唇が項から耳の辺りへ移動してきたのを感じる。
「もう、いいよね。俺、我慢しなくて」
 今までよりもずっと、甘さを含んだ声を、耳の中に注ぎ込まれる。

「我慢……してた?」

「当たり前だよ。シウさんは、俺が二年近くも何もしなかったのは、シウさんに興味がなくなったからだと思ってるだろ」

 耳を舐めたり噛んだりしながら話す声は、くぐもっていて、そして、甘い。
 彼が口を動かす度に、じわりと背筋に何かが這いのぼる。覚えのある感触。二年前の。

「欲しくてしようがなかった貴方ひとが隣で無防備に寝てたりしたら、堪んないだろ。ちょっと触ったりキスしちゃったりしてさ。その後は、トイレでさー……」

 見なくてもわかる。遙人、ちょっと悪い顔してる。

( そんなこと……してた……のか…… )

「びっくりした?シウさん気づかないし、もう何度したことか」
 アハッと自嘲気味に笑う。

 想像して、顔が熱くなる。
 その問いに答えられず黙っていると、再び項を責められる。

 髪を切ってこうされるようになって気がついた。オレは相当項が弱い。これは冬馬も知らないことだと思って、遙人が優越感に浸っていたことを、オレはなんとなく感じていた。
 やはりまだ、心の何処かで冬馬のことは引っかかっていたのだろうか。


ちゅっちゅっと音を立ててキスをしたかと思うと、今度はべろっと舐められる。

 熱い舌の感触。そして、軽い痛み。
 噛まれた。

 二年前のあの時のことを思い出す。でも、あの時のように、血が出る程は強くない。
 軽く歯を立てられ、それから、ちゅうっと音がする程に吸い上げられる。

「シウさん、可愛い。首も耳も真っ赤だ ── ここはどう?」
 
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