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第二章
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しおりを挟む梅雨明けの声をまだ聞いてはいないが、空はすっかり夏だった。
夏休みに入った聖愛学園は、教室も寮も閑散としていた。
冬馬は寮棟を出ると、一番近い門に向かっていた。寮棟に並行して向日葵の花壇が続いていて、風が黄色い花を揺らしていた。
「トーマ!」
後ろから駆け寄る足音がして、ポンと背中を叩かれた。
「詩雨。どうした──補習でも?」
無論、冗談だ。悪戯っぽく笑う。
「まさか!寮のダチのとこ。ほら、秋穂と同じ階の。冬馬は秋穂のとこだろ?」
「ああ」
ふたりは並んで歩き始めた。
「秋穂は家に帰らないんだ?夏休み中?」
「ああ、たぶん ── いや、どうだろうな」
言葉を濁す。何か知ってて言えない、そんな感じだった。
「秋穂はさあ……なかなかオレに慣れてくれないよね。って言うか、冬馬だけにしか、かな」
「いろいろあるんだよ……俺からは言えない」
表情が曇る。こうして見ると大人の男のようだ。
「ふうん。冬馬にはいろいろ話すんだな。オレが秘密基地で冬馬たちを見た時、もうずっと昔から一緒にいるふたりって感じだったよ。でも、会ってからひと月くらいしか経ってなかったんだろ?それなのに──なんか、妬ける」
一旦口を噤む。その後を言うか言うまいか迷っているような感じだ。
「……それに……秋穂のこと話す冬馬って、いつも優しい表情してるっつうかぁ……今までに見たことのないような……」
詩雨にしては歯切れの悪いしゃべり方だった。その視線は足許の石畳を彷徨っている。前髪で翳って、冬馬からはその表情は窺えない。
「なに言ってるんだ。お前にも優しいと思うけど?」
「…………」
弾かれたように冬馬を見た詩雨の顔には、やっぱ、言わなきゃ良かった、と書いてあった。
「──そう言えばさぁ」
突然話題を変える。今までの会話はなかったことにした。
「知ってる?高等部にいる秋穂の知り合い」
「──え?」
詩雨にしてみれば、話題を変えるためにふと思いついたことを言っただけなのだが、思いのほか冬馬の顔に動揺が浮かんだ。
「さっきのダチのとこに行くと、たまに見かけるんだ。高等部の制服を着たヤツが秋穂の部屋から出てくるの──って、冬馬?」
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