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第七章
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しおりを挟む冬馬と秋穂は聖愛学園の大学部に進学したが、詩雨は写真・映像の学科のある大学を受験した。趣味で続けてきた写真を本格的に始めてみれば、こちらでも才能を発揮した。大学内コンクールでも、学外向けの学生のグループ展でも、常に注目を浴びていた。
大学入学を機に、詩雨は髪と眼の色を変え、今は本名や私生活を明かさないカメラマンとして活動している。
対して冬馬は、在学中に服飾系の大企業タチバナの、新しいブランド《Citrus》を立ち上げた。元は、歳の離れた冬馬の姉・華恋がオーナーであるブランド《HANA─華─》のショップに置かれていたが、卒業後、HANAのまだ無名の若いデザイナーを連れ独立。本格的に始動した。
HANAは世界でも名の通った最高級ブランドだが、Citrusはもう少しカジュアルでリーズナブルだ。ショップ自体は数店舗だが、ネット販売も行っており、若い世代を中心に人気が出てきている。
SHIUは芸能・ファッション系の仕事は基本受けないが、親しい人間の依頼は名を明かさないことを条件に引き受けることもある。
今回のタチバナ春夏コレクションでの、Citrusのパンフレット用フォトと会場を飾る大型スチルの仕事もそうだ。
「これは冬馬のデザインだね」
Citrusにはメインのデザイナーがいるが、時々こうして冬馬のデザインが混ざる。
「よくわかるな」
「まあね」
儚げで繊細 ── 誰をイメージしたデザインか一目で判る。そう思うと胸が痛んだ。
「 ── ハルはどう?」
他の写真にも眼を向ける。
「ランウェイ、初だっけ?なかなかいいと思うよ。ちょっと野性味があって、今までのCitrusにはいないモデルだ。うちのデザイナーたちが張りきって、新しいデザイン描いてたよ」
冬馬の言葉に詩雨がほっと息を吐く。
「ハル使ってくれて、サンキューな。夏生がめちゃくちゃ感謝してた。来年写真集も出すし、タチバナコレクション出演はハルの経歴にいい箔をつけられる」
「写真集?詩雨が?」
「まあね」
冬馬がややびっくりしたように、片眉を上げる。
「珍しい、詩雨が人物中心の写真集出すなんて。珍しいっていうか、初めて?」
「うん。まあ ── ハルは特別」
冬馬がふうんと、軽く鼻を鳴らす。
「俺以上に特別か?」
妙に色気のある眼差し。
(あいかわらずの、天然タラシですこと)
「おまえ以上に特別なんていないよ ── ハルのこと、気になる?」
「ああ ── ハルは誰かに似ているような気がする」
顎に手を当て考える素振りをしているが、特に答えを求めているようでもなかった。
( それはさあ── )
詩雨が胸に描いた答えは、口には出さなかった。
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