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目の前が、ぼんやりと白い。
なんだろう、煙草の煙かな。
徹夜中、もうろうとした時に見る煙草の煙……。
「っ……! ん、くぅ……ッ!?」
喉の奥から悲鳴が絞り出されて、私は目を見開いた。
熱い。体の奥が、とてつもなく熱い。
じんじんするしびれが下腹部にある。
なに、これ。私、どうなってるの?
目の前には白いもやがかかっている。もやの向こうで無数の明かりがにじんで見える。
ここは、どこ。今は、いつ?
何もわからないうちに、ずるり、体の芯から何かが引きずり出される。
「ひっ……」
引き出されていくそれにまとわりつく場所が、震え上がるほどに痛む。信じられない。私、裂けてるんじゃないだろうか。下腹部から真っ二つに引き裂かれて、熱いものでその傷を広げられているような感覚。
無理だ。我慢できない。私はもがき、とっさに手近なものをつかんだ。上質な布の感触。逃がさないようにわしづかみにして、浅い息を繰り返す。
「……エレナ」
低音の囁きが、すぐそばから降ってくる。
はっとして、私は目をこらす。
私、この声を知っている。
ずっとずっと、一番苦しいときにすがるように聞いていた、ベルベットみたいな美声。
懸命に見つめていると、目の前のもやが少しずつ晴れていく。
見える。あなたが、見える。
酷く苦しげに私を見下ろしている、その顔。
「ヴィンセント様」
かすれきった声で、私はそのひとの名前を呼んだ。
彫刻みたいに彫りの深い顔。形よい額には白に近い金髪が汗で張りつき、物憂げに落ちくぼんだ眼窩の奥で、冷たいブルーの瞳が光っている。
名を呼ばれた途端に、一度閉じられて、つらそうに開かれたこの瞳。
私、この目を知っている。この目をしたあなたがどれだけ高潔で、どれだけ冷徹かを。
高い鼻の上に深く刻まれた眉間の皺。その深さは苦悩の深さだ。
そして、あなたは。
「すまない」
ヴィンセントは血を吐くように言い、私の中に男の楔を叩きこんだ。
「ひあっ!! あっ! あ、ぐ……」
何度も、何度も、すさまじい異物感を持ったそれが、体に入ってくる。体の奥の何かをえぐられるたび、下腹部の熱さが増して、勝手に涙がこぼれてしまう。
声が、止まらない。叫ぶたびにヴィンセントがつらそうになっていくのに。
止めたいのに、止まらない。
少し離れたところから、調子っぱずれの哄笑が響き渡る。
「あははははは、やるではないか、宰相閣下! やれ! やれ、突けぇ!!」
ぎり、と、酷い音がした。私を犯しているヴィンセントが、歯を食いしばったのだ。
ぽたぽたっとぬるい汗が私の顔に落ちてくる。
汚いとは思わなかった。むしろ、胸の真ん中が、ぎゅうっとした。
あなたの涙みたいだね、と、私は思う。
あなたはものすごく真面目なひとなんだ。私は――知っている。
そうだ。私は、あなたを、知っている。
そうだった。
今、すべてを、思い出した。
ここは鬱エロゲー、『カタストロフ・エンジェル』の世界。
私はトラックに轢かれて、この世界に転生したOLだ。
私を犯しているこのひとは、『カタストロフ・エンジェル』の脇キャラ、冷徹宰相ヴィンセント・ゴールディング。本来は堅物クールキャラで禁欲的なんだけど、クソ皇帝に命じられて私を犯している――。
っていうことになってるけど……アレだな。
元はと言えば、これ、私のせいだな。
私が、アレを押したからだ。
アレ。
すなわち、『まぐわえボタン』を。
話をちょっと前に戻そう。
私はそもそも普通の日本人で、普通のブラック企業OLだった。
普通にひどい人生を生きて、普通にひどい死を迎えた。
ただ、その後が普通じゃなかった。
「『カタストロフ・エンジェル』ですか」
スチールの事務デスクについた眼鏡の男性が、難しい顔で私を見る。
私は深くうなずいた。
「はい。あなた、神様なんですよね。死んだ私の心残りをひとつ、解消してくれるんですよね?」
「ええまあ、そうです。こんなこと、誰にでもやるわけじゃないですよ? あなた、特別未練が強いというか、下手すると呪いレベルの怨念が残ってるんで……」
眼鏡のスーツ男性は、手元の資料をペラペラした。完全にどこかのお役所の廊下、という感じのシチュエーションに、どこかの平公務員って感じの神様だけれど、関係ない。
私の心当たりと言ったら、あれに決まっている。
私はつかつかとデスクに近づき、ばん! と天板に両手をついた。
「だったら『カタストロフ・エンジェル』を、カタエンをどうにかしてください! カタエンのヴィンセント・ゴールディング。彼をどうにか生き延びさせて!!」
「うーん。そもそもそれ、どういうゲームですか? PCゲー?」
「PC用の割合オーソドックスな鬱エロゲーです。男性向け。いわゆる中世ファンタジーっぽい世界観で、国が乱れるわけですよ。現王権に逆らう者たちが異世界から悪魔を呼び出し、王を暗殺。プレイヤーはこの『悪魔』となって、男を殺し、女を犯し、王国を滅ぼすわけなんです」
「うわあ」
「そこで引かない! 確かにこういう話自体はめちゃくちゃよくありますけど。カタエンはプレイヤーキャラ以外の男キャラが、すっごくいいんですから!!」
私は拳を握って力説する。
神様は、決まり悪そうに眼鏡を直した。
「ええと、それって、つまり、男主人公が女性達とセックスするゲームなんですよね? なのに、男性キャラがいい、と……?」
「そう、そこですよ、そこに気づいてくれてありがとうございます。カタエンはそこが特色なんで。プレイヤー以外の脇役男キャラがとにかくイケメン!」
腹に力をこめて言い切る私。
いや、ほんとにすごいんですよ、カタエンは。
ヒロイン達は割と一般受けするアニメ顔なんだけど、男性陣は絵柄から変わる。海外俳優を漫画絵に落とし込んだ感じになって、設定も厚みが出る。あげく、ちょい役でもなぜかちゃんと声優さんが声を当ててくれる。
「はあ。なんか、制作者の趣味が偏ってるんですかね」
神様も少し興味を持ってくれたみたいだ。
私は切々と訴えた。
「偏ってると思います。脇キャラがらみシナリオも、これ、エロ要素要らないんじゃない? 実は乙女ゲーなんじゃない? って思うくらいの書き込みなんだけど、やっぱりカタエンはエロゲー。しかも鬱ゲーって言われるタイプのゲームで」
「ああ。最後、主人公ごとみんな破滅する系の」
「知ってるじゃないですか、神様。そのとおりです。そういうことだから、きっちり書き込まれた脇役男キャラたちも、ストーリー上でばっさばっさ殺されちゃうんです。私の大好きなヴィンセントも……好きになっちゃったのに……絶対死ぬ! くう」
「な、泣いてる……」
ドン引きする神様の前で、私はだらだら泣きながら主張する。
「嫌なんですよぉ……私の人生は、もう、いいの。どうせ普通に生まれて、普通に使い潰されて、普通にトラック事故で死ぬだけの人生なんで、もういいの。私はいいから、ヴィンセントを生き延びさせて下さい……!!」
「うーん……」
神様はぽりぽりと頭を掻いた。
困ってしまうのはわかる。わかりすぎるくらいわかる。
ヴィンセントは実在の人物じゃない。マイナーゲームのマイナーキャラで、ろくに同人誌も出ないで、みんなに消費されていくキャラクターのひとりなのだ。
でも、だから。
私くらいは、彼に死ぬほど執着したっていいんじゃないだろうか。
「まあ、できますよ」
「えっ」
「できますよ、って言いました」
神様は言い、手元の書類に何か書き込み始めた。
「この世界は可能性の数だけ枝葉が広がっていく大樹のようなものです。人が作った物語も『可能性』のひとつだ。物語内で生きる仮想の生命体も末端の枝葉ではあるんです。私、神なので、そこにもアクセスできます」
「すごい……全然わかりません」
ぽかん、と口を開ける私。バカですみません。
「それでいいですよ。これだけ覚えていってください」
神様は書き上げた書類を机の引き出しに放りこむと、私を見上げた
眼鏡がきらりと光る。
「私はあなたの望みを叶えます。ただし、ヴィンセントを救うのは、あなただ」
「私……?」
「彼のもとに行きなさい。私からあなたにひとつ贈り物をします。大事にするんですよ」
神様の落ち着いた喋りが、だんだん厳かになっていく。眼鏡の光が淡く安スーツの全身を包み込む。ものすごく光っているのに、不思議とまぶしくはない。
ああ、このひと、本当に神様なんだな。
この段にいたって、私はやっと確信した。
「はい。ありがとう、ございます」
あらためて、深く頭を下げる。頭を下げていても辺りは白く光り続け――やがて、ふわりと光が消えた。
おそるおそる顔を上げると、そこは野外だ。
「ここ」
ぐるり、と一回転する。
私が立っているのは、真っ黒な石で出来た広場だった。空は不吉な赤い色に染まっており、広場の向こうにはおどろおどろしい宮殿が立ち尽くしている。ロマネスクともゴシックともつかない謎の様式の建物だが、私には見覚えがある。
むしろ、びっくりするほど見慣れた景色だ。
これは、『カタストロフ・エンジェル』のタイトル背景。
私、ここに、立ってる『カタストロフ・エンジェル』の世界に。
自分の両足で、自分の五感を持ったまま、立っている。
望みは叶った。叶ってしまった。
私は、カタエン世界に転生したのだ。
「やった……」
呆然とつぶやき、そっと拳を握ってポーズを取る。
夢と希望で目の前がちかちかして、私は何度も、何度も深呼吸をした。
そこから数時間後。
私は――執着していた推しキャラにめちゃくちゃ犯されることになった。
なんだろう、煙草の煙かな。
徹夜中、もうろうとした時に見る煙草の煙……。
「っ……! ん、くぅ……ッ!?」
喉の奥から悲鳴が絞り出されて、私は目を見開いた。
熱い。体の奥が、とてつもなく熱い。
じんじんするしびれが下腹部にある。
なに、これ。私、どうなってるの?
目の前には白いもやがかかっている。もやの向こうで無数の明かりがにじんで見える。
ここは、どこ。今は、いつ?
何もわからないうちに、ずるり、体の芯から何かが引きずり出される。
「ひっ……」
引き出されていくそれにまとわりつく場所が、震え上がるほどに痛む。信じられない。私、裂けてるんじゃないだろうか。下腹部から真っ二つに引き裂かれて、熱いものでその傷を広げられているような感覚。
無理だ。我慢できない。私はもがき、とっさに手近なものをつかんだ。上質な布の感触。逃がさないようにわしづかみにして、浅い息を繰り返す。
「……エレナ」
低音の囁きが、すぐそばから降ってくる。
はっとして、私は目をこらす。
私、この声を知っている。
ずっとずっと、一番苦しいときにすがるように聞いていた、ベルベットみたいな美声。
懸命に見つめていると、目の前のもやが少しずつ晴れていく。
見える。あなたが、見える。
酷く苦しげに私を見下ろしている、その顔。
「ヴィンセント様」
かすれきった声で、私はそのひとの名前を呼んだ。
彫刻みたいに彫りの深い顔。形よい額には白に近い金髪が汗で張りつき、物憂げに落ちくぼんだ眼窩の奥で、冷たいブルーの瞳が光っている。
名を呼ばれた途端に、一度閉じられて、つらそうに開かれたこの瞳。
私、この目を知っている。この目をしたあなたがどれだけ高潔で、どれだけ冷徹かを。
高い鼻の上に深く刻まれた眉間の皺。その深さは苦悩の深さだ。
そして、あなたは。
「すまない」
ヴィンセントは血を吐くように言い、私の中に男の楔を叩きこんだ。
「ひあっ!! あっ! あ、ぐ……」
何度も、何度も、すさまじい異物感を持ったそれが、体に入ってくる。体の奥の何かをえぐられるたび、下腹部の熱さが増して、勝手に涙がこぼれてしまう。
声が、止まらない。叫ぶたびにヴィンセントがつらそうになっていくのに。
止めたいのに、止まらない。
少し離れたところから、調子っぱずれの哄笑が響き渡る。
「あははははは、やるではないか、宰相閣下! やれ! やれ、突けぇ!!」
ぎり、と、酷い音がした。私を犯しているヴィンセントが、歯を食いしばったのだ。
ぽたぽたっとぬるい汗が私の顔に落ちてくる。
汚いとは思わなかった。むしろ、胸の真ん中が、ぎゅうっとした。
あなたの涙みたいだね、と、私は思う。
あなたはものすごく真面目なひとなんだ。私は――知っている。
そうだ。私は、あなたを、知っている。
そうだった。
今、すべてを、思い出した。
ここは鬱エロゲー、『カタストロフ・エンジェル』の世界。
私はトラックに轢かれて、この世界に転生したOLだ。
私を犯しているこのひとは、『カタストロフ・エンジェル』の脇キャラ、冷徹宰相ヴィンセント・ゴールディング。本来は堅物クールキャラで禁欲的なんだけど、クソ皇帝に命じられて私を犯している――。
っていうことになってるけど……アレだな。
元はと言えば、これ、私のせいだな。
私が、アレを押したからだ。
アレ。
すなわち、『まぐわえボタン』を。
話をちょっと前に戻そう。
私はそもそも普通の日本人で、普通のブラック企業OLだった。
普通にひどい人生を生きて、普通にひどい死を迎えた。
ただ、その後が普通じゃなかった。
「『カタストロフ・エンジェル』ですか」
スチールの事務デスクについた眼鏡の男性が、難しい顔で私を見る。
私は深くうなずいた。
「はい。あなた、神様なんですよね。死んだ私の心残りをひとつ、解消してくれるんですよね?」
「ええまあ、そうです。こんなこと、誰にでもやるわけじゃないですよ? あなた、特別未練が強いというか、下手すると呪いレベルの怨念が残ってるんで……」
眼鏡のスーツ男性は、手元の資料をペラペラした。完全にどこかのお役所の廊下、という感じのシチュエーションに、どこかの平公務員って感じの神様だけれど、関係ない。
私の心当たりと言ったら、あれに決まっている。
私はつかつかとデスクに近づき、ばん! と天板に両手をついた。
「だったら『カタストロフ・エンジェル』を、カタエンをどうにかしてください! カタエンのヴィンセント・ゴールディング。彼をどうにか生き延びさせて!!」
「うーん。そもそもそれ、どういうゲームですか? PCゲー?」
「PC用の割合オーソドックスな鬱エロゲーです。男性向け。いわゆる中世ファンタジーっぽい世界観で、国が乱れるわけですよ。現王権に逆らう者たちが異世界から悪魔を呼び出し、王を暗殺。プレイヤーはこの『悪魔』となって、男を殺し、女を犯し、王国を滅ぼすわけなんです」
「うわあ」
「そこで引かない! 確かにこういう話自体はめちゃくちゃよくありますけど。カタエンはプレイヤーキャラ以外の男キャラが、すっごくいいんですから!!」
私は拳を握って力説する。
神様は、決まり悪そうに眼鏡を直した。
「ええと、それって、つまり、男主人公が女性達とセックスするゲームなんですよね? なのに、男性キャラがいい、と……?」
「そう、そこですよ、そこに気づいてくれてありがとうございます。カタエンはそこが特色なんで。プレイヤー以外の脇役男キャラがとにかくイケメン!」
腹に力をこめて言い切る私。
いや、ほんとにすごいんですよ、カタエンは。
ヒロイン達は割と一般受けするアニメ顔なんだけど、男性陣は絵柄から変わる。海外俳優を漫画絵に落とし込んだ感じになって、設定も厚みが出る。あげく、ちょい役でもなぜかちゃんと声優さんが声を当ててくれる。
「はあ。なんか、制作者の趣味が偏ってるんですかね」
神様も少し興味を持ってくれたみたいだ。
私は切々と訴えた。
「偏ってると思います。脇キャラがらみシナリオも、これ、エロ要素要らないんじゃない? 実は乙女ゲーなんじゃない? って思うくらいの書き込みなんだけど、やっぱりカタエンはエロゲー。しかも鬱ゲーって言われるタイプのゲームで」
「ああ。最後、主人公ごとみんな破滅する系の」
「知ってるじゃないですか、神様。そのとおりです。そういうことだから、きっちり書き込まれた脇役男キャラたちも、ストーリー上でばっさばっさ殺されちゃうんです。私の大好きなヴィンセントも……好きになっちゃったのに……絶対死ぬ! くう」
「な、泣いてる……」
ドン引きする神様の前で、私はだらだら泣きながら主張する。
「嫌なんですよぉ……私の人生は、もう、いいの。どうせ普通に生まれて、普通に使い潰されて、普通にトラック事故で死ぬだけの人生なんで、もういいの。私はいいから、ヴィンセントを生き延びさせて下さい……!!」
「うーん……」
神様はぽりぽりと頭を掻いた。
困ってしまうのはわかる。わかりすぎるくらいわかる。
ヴィンセントは実在の人物じゃない。マイナーゲームのマイナーキャラで、ろくに同人誌も出ないで、みんなに消費されていくキャラクターのひとりなのだ。
でも、だから。
私くらいは、彼に死ぬほど執着したっていいんじゃないだろうか。
「まあ、できますよ」
「えっ」
「できますよ、って言いました」
神様は言い、手元の書類に何か書き込み始めた。
「この世界は可能性の数だけ枝葉が広がっていく大樹のようなものです。人が作った物語も『可能性』のひとつだ。物語内で生きる仮想の生命体も末端の枝葉ではあるんです。私、神なので、そこにもアクセスできます」
「すごい……全然わかりません」
ぽかん、と口を開ける私。バカですみません。
「それでいいですよ。これだけ覚えていってください」
神様は書き上げた書類を机の引き出しに放りこむと、私を見上げた
眼鏡がきらりと光る。
「私はあなたの望みを叶えます。ただし、ヴィンセントを救うのは、あなただ」
「私……?」
「彼のもとに行きなさい。私からあなたにひとつ贈り物をします。大事にするんですよ」
神様の落ち着いた喋りが、だんだん厳かになっていく。眼鏡の光が淡く安スーツの全身を包み込む。ものすごく光っているのに、不思議とまぶしくはない。
ああ、このひと、本当に神様なんだな。
この段にいたって、私はやっと確信した。
「はい。ありがとう、ございます」
あらためて、深く頭を下げる。頭を下げていても辺りは白く光り続け――やがて、ふわりと光が消えた。
おそるおそる顔を上げると、そこは野外だ。
「ここ」
ぐるり、と一回転する。
私が立っているのは、真っ黒な石で出来た広場だった。空は不吉な赤い色に染まっており、広場の向こうにはおどろおどろしい宮殿が立ち尽くしている。ロマネスクともゴシックともつかない謎の様式の建物だが、私には見覚えがある。
むしろ、びっくりするほど見慣れた景色だ。
これは、『カタストロフ・エンジェル』のタイトル背景。
私、ここに、立ってる『カタストロフ・エンジェル』の世界に。
自分の両足で、自分の五感を持ったまま、立っている。
望みは叶った。叶ってしまった。
私は、カタエン世界に転生したのだ。
「やった……」
呆然とつぶやき、そっと拳を握ってポーズを取る。
夢と希望で目の前がちかちかして、私は何度も、何度も深呼吸をした。
そこから数時間後。
私は――執着していた推しキャラにめちゃくちゃ犯されることになった。
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