【完結】冷徹宰相と淫紋Hで死亡フラグを『神』回避!? ~鬱エロゲー溺愛ルート開発~

愛染乃唯

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「!!」

 ぎょっとした拍子に、中のヴィンセントをぎゅうっと締めつけてしまった。
 彼の形がまざまざとわかった気がして、私はぶるっと震える。
 ヴィンセントが口を塞いでいてくれてよかった。
 そうでなければ、声を出してしまっただろう。

 それにしても……これからどうしたらいい? 
 逃げるような時間はない。
 大きな柱が視界を遮ってくれているし、廊下の隅はひどく暗い。
 静かにしていればやりすごせるかもしれないけれど……もし見つかってしまったら?

 考えている間にも、足音は近づいてくる。
 近づいてきて――止まった。

「おいー。どうして俺の近衛兵が、こんなとこで寝てんだよ!」

「はっ! 申し訳ございません……!」

 皇帝の声が近い。ヴィンセントが倒した兵士に気づいたのだ。
 私は柱にすがったまま、柱の向こうを見ようと目をこらす。
 その間も、私を貫いているものは萎える気配もない。ボタンを押してしまったからには仕方ないんだろうか。こうも硬く貫かれたままでは、私の思考もすぐに蕩けてしまう……。

「しかもまあ、丸出しで、かっこ悪いこと。やってる最中にぷっつんきたのか?」

「すぐに処理いたします」

 会話に耳をそばだてているうちに、ヴィンセントが軽く腰を引いた。
 抜いてしまうんだろうか、と思うと、ひどく切ない気持ちになる。
 腰が勝手に彼を追いかける。
 すると、ヴィンセントも私の心を読んだかのように、ぐぷ……と中に戻ってくる。
 じわじわした快感に、私は奥歯をかみしめた。

「そうしてやって。さっきリリアが届けてくれた茶でもぶっかければ元気になるかな?」

「どうでしょう……あのお茶、そんなに効いたんです?」

「そりゃあもう、バリバリよ。王妃のところの次に、リリアに礼に行かないとな」

 ぬぷ、ぐぷ、と浅く出し入れされながら、会話の断片を受け止める。
 リリアは、もう皇帝にお茶を差し入れたみたいだ。
 酔っ払っていたはずなのに、とにかく行動が早い。
 このまま皇帝がリリアに傾いてくれるよう、手助けを続けなくてはいけない。
 皇帝さえいなくなれば……ヴィンセントの死の結末は変わるはず。

「それと、今日中にもう一人回りたいなあ」

 堕落しきった皇帝の声。
 リリアのお茶は、ゲーム的にはプレイヤー皇帝の行動力を回復させるものだ。
 にしても、一日に三人も女性の間を渡り歩くのは、やりすぎじゃないだろうか。
 側近も同じ気分だったようで、驚いた声を出す。

「もう一人ですか!?」

「うん。どうしてもそそられるんだよな~。あの、ヴィンセントのさ」

 ヴィンセント、という名が出た途端、彼の動きが止まる。
 私もこっそり呼吸を整えて、聴覚に集中する。

「ああ! あの、堅物宰相の!」

「そー! 男装の女。普段はツンとして色気も何もねえのに、ヴィンセントに抱かれた途端にめちゃくちゃ乱れてただろ」

「なんというか、はい。確かに」

 あ……これ、私の話だ。
 狙われているのは、私。
 私……私?
 
 元々のゲームにいないはずの私が、狙われている?
 それってつまり、どうなるんだろう?

 私が考えこんだとき、ヴィンセントの動きが再開された。
 ゆっくりと、けれど、はっきりと体の中の一部分をえぐられる。

「っ……! ぁ……」

 そこ、駄目。そこは、いいところだ。
 その場所を中からこすられると、全然抵抗できずに目の前が蕩けてしまう。
 漏れ出そうになった悲鳴は、ヴィンセントの手のひらの中で消えていく。

「ああいうのを、横から奪ってめっちゃくちゃにしてやりたいんだよねぇ……」

 粘っこい皇帝の声が耳から入ってきて、私はぶるっと震える。
 それを阻止するように、ヴィンセントが私の耳を噛んだ。

「んん……!」

 軽く噛んだあとに、ぐ、ぐぐ、と力を入れられる。
 痛いはずだった。なのに、もう、感覚が壊れていて、痛いなんて感じられなかった。
 感じられるのは、拾えるのは、快感だけ。
 耳から痺れるように快感が広がり、背筋に落ちてくる。
 それが消えないうちに、ぐり、ぐりと、体の中のいいところをこすられ続ける。
 さっきと違って激しい動きなんか全然ない。
 なのに、この快感は、消えない。
 流れていかずに、どんどん降り積もっていってしまう。

 快感が体の中に積もって、膨らんで、このまま体一杯になってしまったら……。
 多分、私、達してしまう。
 声を控えられる自信が、ない。

「それは、まぁ、はい……」

「なんだぁ、その返事。俺のことバカにしてんじゃねーだろうな?」
「まさか! むしろ、その。ちょっと、わかるな……と思いまして」
「あっはっは、そうだろぉー!」

 若い不良たちみたいな会話をしながら、皇帝陛下と側近の声が遠ざかっていく。
 もっと、遠くへ行ってほしい。
 もっと、声が届かないくらいに遠くへ。
 じゃないと、大変なことになる。
 ヴィンセントもそれはわかっているんじゃないだろうか。
 私が達してしまわないよう、きっと、緩めてくれるはず……。

「そんときは、お前もやらせてやるよ」

「っ……よ、よろしくお願いします!」

「んくぅッ……!!」

 ぐりゅん、とえぐるように最後の一撃が加えられ、私の視界は吹っ飛んだ。
 体の中も、外も、全部真っ白になってしまうような快感。
 悲鳴にも似た嬌声は、あと一歩のところでヴィンセントの手のひらで押さえこまれる。
 それでもしばらくは快感が逃げ切らず、私はほとんど無意識のまま、口を押さえるヴィンセントの指を噛んだ。
 骨張った指の噛み心地は、不思議なくらい気持ちいい。
 私が歯に力をこめると、彼の指はびくんと動き、じっとこらえるように静止する。そのあとゆるゆると動き始め、指先が私の口の中へ押し入った。
 彼の指先が、ぎゅっと私の舌を押す。
 それだけで気持ちよさが走ってしまい、私は震えた。

「ふ……」

 かすかに熱い吐息が漏れる。
 そのとき、こつん、と足音が止まった。

「……どうされました?」

「んー? いやぁ、ちょっとな。なんかさっきから、いい匂いしない?」

 怪訝そうな皇帝の声。
 ……気づかれた。
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