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第4章:真の|神力《ちから》
第5話:|熾天使《セラフィム》
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スルトは見た。右眼が光槍で貫かれる前に。確かにそこには黄金色に光り輝く衣を纏った天使が居た。その天使は自分の右眼を長大な穂先を持つ光槍で抉り取り、さらには返す刀で、左手の人差し指と中指を斬り飛ばしてみせた。
スルトは左眼までもその天使によって抉られぬようにと、左手で顔面の左側を防御してみせる。だが、その動作によって、黄金色に光り輝く衣を纏う天使が為そうとしていることを見逃すことになる。
「グアァァァ……!?」
黄金色の衣を纏う天使はスルトの右眼を抉り出し、返す刀で左手の人差し指と中指を斬り飛ばす。左眼までも持っていけないと察し、そのまま、垂直に落下する。そして、その勢いのままに長大な穂先を持つ光の槍でスルトの左ももを深々と貫く。こうなっては、スルトは巨体を支えることが出来ず、左斜め後ろへとズズーーーン! と地響きを立てながら倒れるしかない。
この時になって、ようやくスルトは自分が先ほどまで戦っていた相手が下位の天使では無く、上位の天使であることに気づく。精々、2枚羽の天使が何故に炎の国王に対して、威勢よく歯向かってくるのか不思議でたまらなかった。スルトは残された左眼で、黄金色の衣を纏う天使が6枚羽であることを知るに至る。
「ミカエル!? いや、違う。奴は8枚羽ダッ! 熾天使が何故、地上界に居るのだ!?」
スルトの疑問も当然であった。6枚羽の熾天使クラスとなれば、今は悪魔の御大将であるハイヨル混沌様が引き連れている軍団と天界で戦わなければならない存在である。そういった現状を鑑みれば、地上を護るために派遣されるのは、せいぜい2枚羽の天使及び、ぎりぎり4枚羽の範疇に入る主天使クラスまでである。そして、スルトは今の今まで、2枚羽の連中と戦っていた。
どこをどう間違えれば、高位も高位の熾天使と自分が戦うことになるのかと思わざるをえなかった。スルトは悪魔位階中の上といったところである。魔界の爵位から言わせてもらえば、下から数えて2番目の子爵である。そして、熾天使を天界の爵位で言うならば、公爵となる。これだけで、双方の実力の差は顕著に現れる。
スルトはこの時点で死を覚悟していた。黄金色の衣を纏う天使がもう一度、長大な穂先を持つ光槍を振るえば、自分は首級を刎ねられると覚悟していた。だが、スルトは運が良いことに、その光り輝く天使の手にかかることはなかった。
「ハハ……、ガーハハッ! 魔素濃いこの地で熾天使が活動できるはずがナイッ! 我の勝ちダッ!」
スルトは心底から安堵した。光り輝く6枚羽の天使が、いきなり動きを止めて、自分の身を掻き毟るかのように身もだえし始めたからだ。そして、徐々に、高度を下げていき、地面で四つん這いになってしまう。スルトはそのような状態になった熾天使の命を刈り取ろうと、両手で大剣を下手に持ち、全体重をその切っ先に乗せていく。
「馬鹿ナッ!?」
熾天使にトドメを差そうとしたその矢先、スルトの動きはある存在によって、邪魔をされることになる。熾天使を護るように立つその人物は自分に向けて、右腕を真っ直ぐ伸ばし、さらには右手をめいいっぱい開いている。そして、その開かれた右手の先で大剣が自分の体重ごと受け止められてしまう。
それを為したのが片羽しかない天使である。スルトから見て、その天使の背中には右にしか羽根しか無く、そのような天使は不良品、もしくは天使とニンゲンのハーフである証でもあった。自分が熾天使にコテンパンにやられたのはしょうがないと思えたが、この半天半人と呪力と神力のぶつかり合いにおいて、拮抗せねばならぬほどの矮小な存在ではないという自負はある。
それゆえにスルトはこめかみに何本もの青筋を立てて、あらん限りの呪力を炎の大剣へと込めた。炎の大剣からは地獄すらも炎で包み込みそうなほどの勢いをもった焔が噴き出す。しかし、その焔が半天半人を焼くことは一切無かった。
「これがボクに新しく備わった神力。シャイニング・エンジェル・フィンガーデス」
半天半人が抑揚のない口調で、そう言ってみせる。その途端、彼女の右手が光って唸る。さらには光の奔流が巻き起こり、炎の大剣を光の波で洗い流してしまう、スルトはただただ眼を丸くさせて、驚くしかなかった。この焔の大剣自体に『スルト』と冠されるほどの逸品である。
それを多大に溢れる神力のみで粉々に粉砕したのだ。スルトはデタラメすぎると思うしかなかった。熾天使がこれを為したのであれば、まだ負けを素直に認められた。だが、地獄の炎で出来ている自分の身体を単純な神力のみで押し流し、さらには掻き消そうとする存在が半天半人であることをどうしても理解できなかった。
「きさ……まは何……モノダ……」
スルトは自分の身体が光の奔流で崩れ落ちていく中、それを為した人物に質問をする。対して、質問された側はケロッとした表情で答えを返してくる。
「ボクは星皇様の妾であるアリス=ロンドなのデス。それ以上でもそれ以下でもありまセン」
「アリス……。我を倒したことを代々の誉れとするが良イ!!」
スルトは最後の最後にそう言い残し、地上から完全に消え去る。クレーターのあちこちで噴き出し、天を焦がしていた炎柱も同時に勢いを失くし、地中へと隠れていく。そんな中、アリスは首級を傾げ、何言ってんだコイツという表情を顔に浮かべるのみである。
「すっごい大物感を出していましたけど、ボクは貴方にまったく興味がありまセン。しいて言えば、ベル様に危害を加えようとしたいち悪魔という認識程度デス」
アリス=ロンドはそう反論するが、すでにその言葉を聞くべき相手は地上から消え去っていた。アリス=ロンドはもう1度、首級を傾げた後、その存在に興味を失くしてしまう。
その後、アリス=ロンドは6枚羽の熾天使に近づき、優しく背中側から抱きしめる。
「ベル様。無茶をしちゃダメなのデス。地上で神力をフルに行使できる天使は限られているのデス」
「わかってるわよっ! でも、わたくしがどうにかしなきゃ、カナリアやコッシローが死んじゃうところだったのっ!」
「ベル様はお優しいヒトなのデス。ボクにはその感情が理解できまセン。だって、この世界で一番大切なヒトは、星皇様とベル様のふたりだけなのですカラ……」
スルトは左眼までもその天使によって抉られぬようにと、左手で顔面の左側を防御してみせる。だが、その動作によって、黄金色に光り輝く衣を纏う天使が為そうとしていることを見逃すことになる。
「グアァァァ……!?」
黄金色の衣を纏う天使はスルトの右眼を抉り出し、返す刀で左手の人差し指と中指を斬り飛ばす。左眼までも持っていけないと察し、そのまま、垂直に落下する。そして、その勢いのままに長大な穂先を持つ光の槍でスルトの左ももを深々と貫く。こうなっては、スルトは巨体を支えることが出来ず、左斜め後ろへとズズーーーン! と地響きを立てながら倒れるしかない。
この時になって、ようやくスルトは自分が先ほどまで戦っていた相手が下位の天使では無く、上位の天使であることに気づく。精々、2枚羽の天使が何故に炎の国王に対して、威勢よく歯向かってくるのか不思議でたまらなかった。スルトは残された左眼で、黄金色の衣を纏う天使が6枚羽であることを知るに至る。
「ミカエル!? いや、違う。奴は8枚羽ダッ! 熾天使が何故、地上界に居るのだ!?」
スルトの疑問も当然であった。6枚羽の熾天使クラスとなれば、今は悪魔の御大将であるハイヨル混沌様が引き連れている軍団と天界で戦わなければならない存在である。そういった現状を鑑みれば、地上を護るために派遣されるのは、せいぜい2枚羽の天使及び、ぎりぎり4枚羽の範疇に入る主天使クラスまでである。そして、スルトは今の今まで、2枚羽の連中と戦っていた。
どこをどう間違えれば、高位も高位の熾天使と自分が戦うことになるのかと思わざるをえなかった。スルトは悪魔位階中の上といったところである。魔界の爵位から言わせてもらえば、下から数えて2番目の子爵である。そして、熾天使を天界の爵位で言うならば、公爵となる。これだけで、双方の実力の差は顕著に現れる。
スルトはこの時点で死を覚悟していた。黄金色の衣を纏う天使がもう一度、長大な穂先を持つ光槍を振るえば、自分は首級を刎ねられると覚悟していた。だが、スルトは運が良いことに、その光り輝く天使の手にかかることはなかった。
「ハハ……、ガーハハッ! 魔素濃いこの地で熾天使が活動できるはずがナイッ! 我の勝ちダッ!」
スルトは心底から安堵した。光り輝く6枚羽の天使が、いきなり動きを止めて、自分の身を掻き毟るかのように身もだえし始めたからだ。そして、徐々に、高度を下げていき、地面で四つん這いになってしまう。スルトはそのような状態になった熾天使の命を刈り取ろうと、両手で大剣を下手に持ち、全体重をその切っ先に乗せていく。
「馬鹿ナッ!?」
熾天使にトドメを差そうとしたその矢先、スルトの動きはある存在によって、邪魔をされることになる。熾天使を護るように立つその人物は自分に向けて、右腕を真っ直ぐ伸ばし、さらには右手をめいいっぱい開いている。そして、その開かれた右手の先で大剣が自分の体重ごと受け止められてしまう。
それを為したのが片羽しかない天使である。スルトから見て、その天使の背中には右にしか羽根しか無く、そのような天使は不良品、もしくは天使とニンゲンのハーフである証でもあった。自分が熾天使にコテンパンにやられたのはしょうがないと思えたが、この半天半人と呪力と神力のぶつかり合いにおいて、拮抗せねばならぬほどの矮小な存在ではないという自負はある。
それゆえにスルトはこめかみに何本もの青筋を立てて、あらん限りの呪力を炎の大剣へと込めた。炎の大剣からは地獄すらも炎で包み込みそうなほどの勢いをもった焔が噴き出す。しかし、その焔が半天半人を焼くことは一切無かった。
「これがボクに新しく備わった神力。シャイニング・エンジェル・フィンガーデス」
半天半人が抑揚のない口調で、そう言ってみせる。その途端、彼女の右手が光って唸る。さらには光の奔流が巻き起こり、炎の大剣を光の波で洗い流してしまう、スルトはただただ眼を丸くさせて、驚くしかなかった。この焔の大剣自体に『スルト』と冠されるほどの逸品である。
それを多大に溢れる神力のみで粉々に粉砕したのだ。スルトはデタラメすぎると思うしかなかった。熾天使がこれを為したのであれば、まだ負けを素直に認められた。だが、地獄の炎で出来ている自分の身体を単純な神力のみで押し流し、さらには掻き消そうとする存在が半天半人であることをどうしても理解できなかった。
「きさ……まは何……モノダ……」
スルトは自分の身体が光の奔流で崩れ落ちていく中、それを為した人物に質問をする。対して、質問された側はケロッとした表情で答えを返してくる。
「ボクは星皇様の妾であるアリス=ロンドなのデス。それ以上でもそれ以下でもありまセン」
「アリス……。我を倒したことを代々の誉れとするが良イ!!」
スルトは最後の最後にそう言い残し、地上から完全に消え去る。クレーターのあちこちで噴き出し、天を焦がしていた炎柱も同時に勢いを失くし、地中へと隠れていく。そんな中、アリスは首級を傾げ、何言ってんだコイツという表情を顔に浮かべるのみである。
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アリス=ロンドはそう反論するが、すでにその言葉を聞くべき相手は地上から消え去っていた。アリス=ロンドはもう1度、首級を傾げた後、その存在に興味を失くしてしまう。
その後、アリス=ロンドは6枚羽の熾天使に近づき、優しく背中側から抱きしめる。
「ベル様。無茶をしちゃダメなのデス。地上で神力をフルに行使できる天使は限られているのデス」
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