蒼星伝 ~マッチ売りの男の娘はチート改造され、片翼の天使と成り果て、地上に舞い降りる剣と化す~

ももちく

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第6章:眠れぬ夜

第2話:女の敵は女

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 クォール=コンチェルト第1王子付きの近衛兵たちは顔を見合わせ、さらには胸の前で腕を組み。どうしたものかと思案に暮れる。そして、早いうちに言っておいたほうが良いだろうと思い、マリーヤ=ポルヤノフに衝撃の事実を伝える。

「なん……じゃと!? クォール殿下の想い人はあの娘なのかえ!? 乳袋どころか、絶壁じゃぞぉぉぉ!?」

 マリーヤ=ポルヤノフは頭の中でガーンガーンガーン! と教会の鐘が鳴る音が連続で響き渡る。その頭痛に等しい衝撃でマリーヤ=ポルヤノフは頭を両手で抑えつけつつ、草地に倒れ込むことになる。

「ふふっ、ふふっ。ふふふ……。殿方の中には乳袋が小さいのを好む者もおるっ! あちきが真に負けたということではないのじゃっ!」

 マリーヤ=ポルヤノフは両腕、両足に力を込めて、なんとか立ち上がろうとする。自分の武器は乳袋だけでは無いと言い聞かせ、アリス=ロンドとやらから、クォール=コンチェルト第1王子の眼を奪ってみせようと心に誓う。

 しかしながら、そう誓ったと同時に、クォール=コンチェルト第1王子付きの近衛兵たちはそんなマリーヤ=ポルヤノフに対して、さらに追い打ちをしてしまう発言をする。

「なん……じゃとぉぉぉ!? あやつは女の子ではなく、男の娘じゃとぉぉぉ!? あちきはおちんこさんはついておらぬわぁぁぁ!!」

 マリーヤ=ポルヤノフはアリス=ロンドに完全に負けたと自覚する。彼女は身体をブリッジ状態にしながら発した絶叫は一団の内側から外側へと響き渡る魂の絶叫を終えたマリーヤ=ポルヤノフは力尽き、背中から草地へと着地する。その様子を一部始終見ていた近衛兵たちがマリーヤ=ポルヤノフに出来ることは、ただただ両手を合わせて、ナムナム……と呟くことだけであった……。

 旅の一座のおさが倒れたことで、にっちもさっちも行かなくなった彼らは結局のところ、それが幸いして、一団と合流を果たすことになるのは皮肉であった。しかしながら、クォール=コンチェルト第1王子は旅の一座まで巻き込んではならぬと主張し、一団の最後部へと移動させることで、決着と相成る。

 それよりも問題なのはクォール=コンチェルト第1王子が教皇と話し合った内容である。教皇が言うには、ベル=ラプソティたちをさらに安全な位置につけるために、替え玉を用意しはどうだ? という提案してきたのである。

 しかし、ベル=ラプソティは良い意味でも悪い意味でも目立つ存在だ。もちろん、クォール=コンチェルト第1王子にとって、1番、眼に入ってしまうのはアリス=ロンドである。それはさておき、教皇の言いを袖にすることは出来ず、クォール=コンチェルト第1王子はベル=ラプソティの替え玉を聖地の生き残りたちから探し出そうとする。

「ダメだな。どの娘たちもベル殿のような勇ましさを持ちつつ、それでいて美貌を兼ね備えている者などいない。いや、そもそもとして、無理難題すぎるっ!」

「クォール殿下。心中、お察しします。ベル殿の代わりを務められる者がいれば、それこそ星皇様が放っておくわけがないほどの女性となりますから」

「ああ、いっそ、アリス殿の替え玉を用意しろとおっしゃってくれていたならばっ! 俺自身がアリス殿の替え玉になっていたというのにっ!」

 クォール=コンチェルト第1王子がこれでもかというほどに口惜しいと言ってみせたために、彼付きの近衛兵たちはハァァァ……と長い嘆息を吐くしかなくなるのであった。そして、これ以上、教皇の狂言に付き合ってられぬとばかりにクォール=コンチェルト第1王子にはっきりと替え玉を準備することは不可能だということを教皇様に示すべきだと主張する近衛兵たちであった。

「うむ。わかった。俺の方から探してみたが、ベル殿の代わりになりそうな人物は居ないと言っておこう。そもそも天使族とニンゲンたちでは存在感が違い過ぎるのだ」

「心中、お察しします。ベル殿ほどのおっぱいのサイズと等しき者をまず探さねばなりませぬ。そして、おっぱいのサイズが適合した後はさらに腰のくびれ、尻のでかさと来ますから。プロポーションだけで言うのであれば、マリーヤ=ポルヤノフ殿になりますが」

 近衛兵のこの一言は、まさに余計な一言であった。クォール=コンチェルトはムム……? と唸り声をあげ、そう言えば旅の一座のおさがベル殿と背格好が近しいことを思い出す。念のため、2人に横並びになってもらおうと思い、近衛兵たちに2人をこの場に呼んできてほしいと頼むことになる。

「えっと……。事情がよくわかっていませんけど、とりあえず、呼ばれたので参上いたしましたが」

「なんじゃ? お主は男の娘を愛でておるのじゃろ? あちきに今更、何用じゃ?」

 ふたりがふたりとも、訝し気な表情でクォール=コンチェルト第1王子の眼の前に現れることになる。クォール=コンチェルト第1王子は教皇の言いをそのままに伝えると、ベル=ラプソティとマリーヤ=ポルヤノフは互いの身体を舐めるように見合うことになる。

「教皇様のおっしゃることは絶対と言えども、わたくしは誰かに犠牲になってほしいとは思っておりませんわ。てか、そもそも、この方がわたくしの替え玉?」

 ベル=ラプソティのこの発言にカチンと来たマリーヤ=ポルヤノフは強めの視線でベル=ラプソティを睨めつける。そして、彼女の身体の凹凸を隅々まで観察した後に、売り言葉に買い言葉と言った感じで攻めの言葉を投げつける。

「そうじゃのぉ。こんな男も知らぬような女子おなごに変装しろなどと、あちきには出来ぬのじゃ。あちきの身体は男たちの手で、全身くまなくマシュマロのように柔らかくされているからのぉ?」

 このマリーヤ=ポルヤノフの発言にイラっとくるのは当然であるベル=ラプソティであった。確かにマリーヤ=ポルヤノフの言う通り、自分が男にけがされた部分は尻穴だけである。ほどよく筋肉が身体についているため、柔らかいという表現はなかなかに当てはめにくい時分であるが、ビッチにそんなことを言われる筋合いはないとばかりに反論し始める。

「わたくしはみさおを捧げる相手は星皇様と生まれながらにして決めていましたの。ですので、ところかまわず男を漁っているような貴女とは違って当然ですわ」

「ほほぅ……。言うてくれる。あちきはかれこれ100年以上、生きてきた半狐半人ハーフ・ダ・コーンであるが、ここまであちきに敬意を払わぬ女子おなごは初めてじゃ。さぞかし、星皇様もベル様にはてこずっておられるじゃろうて。寝室にすら足を運んでもらえぬのじゃろう?」

 マリーヤ=ポルヤノフのこの一言にブチッ! と心の中にある堪忍袋の緒が半分ちぎれそうになってしまうベル=ラプソティである。まるで寝室を共にしなくなった原因が星皇にあるのではなく、ベル=ラプソティ自身に問題があるかのような発言は、さすがに聞き捨てならなかった。

「あんた。わたくしと一戦交える気かしら?」

「いいぞ、いいぞ。あちきはこう見えても武芸達者なのじゃ。旅の一座のおさ程度と思ってもらっては困るぞえ?」
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