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第6章:眠れぬ夜
第7話:醜い争い
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ベル=ラプソティはカナリア=ソナタのその一言で、肩をがっくしと落とし、さらには蓄積した疲労感でその場から動けなくなってしまう。クォール=コンチェルト第1王子を襲っている女性淫魔が似せている姿が誰かなど、確認しなくてもわかるからだ。そして、その女性淫魔を視認した途端、アリス=ロンドがベル=ラプソティの許可無くフルバースト・エンジェルモードへと移行してしまうことも自明の理であった。
「こんな時、どんな顔すれば良いのかわからないわ」
「失笑しておくのが一番だと思うのですゥ……。って、あれれ? クォール殿下が居ると思われる天幕から女性淫魔が飛び出してきましたよォ?」
数ある天幕のひとつから天幕の入り口を覆っている布を跳ね上げて、飛び出してきた小柄な女性淫魔が居た。そして、その姿はアリス=ロンドに瓜二つであり、やっぱりね……と思うしかないベル=ラプソティであった。
しかもだ。その女性淫魔を追って、天幕から飛び出してきたのがクォール=コンチェルト第1王子、そのひとであった。しかも、かなり立腹しているらしく、尻餅をついているアリス=ロンド似で裸体の女性淫魔に向かって、銀色に輝く長剣の切っ先を突きつけている。
「俺のアリスたんを侮辱しおってぇぇぇ!! アリスたんにおちんこさんがついてないとはどういうことだっ! 女性淫魔たるもの、男の娘のオーダーをしっかりとその身体で示せっ!」
ベル=ラプソティは身体全体から力が抜けていくのを止めることは出来ず、その場で膝から崩れ落ちることになる。カナリア=ソナタは、アハハ……と失笑する他無かった。そして、立腹して当然であるはずの本物のアリス=ロンドは意外なことに冷静であった。
「可愛らしい男の娘だと思った? ざんね~ん。女の子でしたぁぁぁ! って奴デスネ。ちょっとだけクォールに同情しマス。ちょっとだけですケド」
アリス=ロンドとしては自分の姿に似せていようが、おちんこさんが付いてない時点で、それが自分とは似ても似つかぬ女性淫魔だという認識であった。それゆえにその女性淫魔をクォール=コンチェルトが蹂躙しようが知ったこっちゃないというのがアリス=ロンドの本音である。
「アリス。わたくしはどっと疲れがでましたことよ。クォール殿下に女性淫魔を退治してもらうのは無理だから、アリスが浄化してちょうだい」
「わかりまシタ。クォールが半狂乱になっている姿を見ているだけでも、嬉しいのですが、女性淫魔が必要以上に痛めつけらるのも見ていて忍びないですカラ」
悪魔を光で浄化できるのは天使だけである。いくら低級の低級である悪魔と言えども、ニンゲン如きに命まで取られることはない。それゆえにクォール=コンチェルトが眼の前の女性淫魔を散々に痛めつける残虐行為に走る前に、女性淫魔を光の向こう側へと送ってしまおうとするアリス=ロンドであった。
しかし、アリス=ロンドがそうしようとした間際、アリス=ロンドに似た女性淫魔の身体から魔素が噴き出し、アリス=ロンドは短めの短剣を振るうのを止めて、バックステップを繰り返し、女性淫魔から物理的に距離を開けることになる。
「ワレをいたずらに傷つけようとするのならば、ワレも本気を出そうゾっ!」
窮地に追いやられた女性淫魔は悪魔としての真価を発揮する。両足が溶けるように交わり合い、それは蛇の同体となる。上半身はアリス=ロンドに似ていたが、下半身は蛇の姿となる。さらには両手の先から長い爪が伸び、その爪で半狂乱となっているクォール=コンチェルト第1王子を串刺しにしてしまおうとする。
クォール=コンチェルト第1王子はさすがは凱旋王の長子なだけはあり、不意打ちに似た女性淫魔の反撃であったが、右手に持つ銀色に輝く長剣で致命の一撃を切り払ってみせる。
「すごいわね。女性淫魔からラミアへと昇格した悪魔の一撃を払いのけてみせたわよ? クォール殿下の評価を少しだけ上げないとダメかしら?」
ベル=ラプソティは素直に今のクォール=コンチェルト第1王子の反応の良さを褒めてみせる。女性淫魔は怒りにより、低級の低級から低級の上位ほどの悪魔へと進化してみせた。それなのにクォール=コンチェルト第1王子は自分の身に突き立てられてくる鋭い爪をこれでもかと、銀色に輝く長剣1本でかち上げ、打ち払い、さらには叩き落としてみせる。
クォール=コンチェルト第1王子の勇ましい姿に惚れ惚れとしてしまうのがマリーヤ=ポルヤノフであった。うっとりとした表情でラミアとクォール=コンチェルト第1王子の醜い争いを観戦し続けていた。
何故、醜い争いかと言えば、ラミアと化した女性淫魔とクォール=コンチェルト第1王子が口汚く互いを罵りあっていたからだ。クォール=コンチェルトとしては、素敵な淫夢を見せてくれるはずの女性淫魔におちんこさんがついていなかったことへのクレームを。女性淫魔としては、特殊な性的指向に関して、いちいち細やかに対応してられるかっ! という文句である。
敵を知り、己を知れば百戦危うからずという言葉がある。悪魔と天使は長い年月を血で血を洗う戦いをしてきた。それゆえに相手がどんな特徴を持っているかを知り尽くしているとも言って良い。そして、ベル=ラプソティたちはインキュバスや女性淫魔がどのような存在であるかも重々承知であった。
「時代も変わったってことかしら? 客のクレームに近い注文ですら、女性淫魔は喜んで承りまししたっ! って頭を下げるべきなの?」
「あたしが女性淫魔なら、そもそもそんな面倒くさいヒトを客として選ばないのですゥ。サービスを提供する側がお客様は神様だとのたまうよりかは、ターゲットとする客層を明確に絞ったほうが色々と効率的ですし、利益もしっかりと出るのですゥ」
カナリア=ソナタの的確すぎる指摘になるほどと思ってしまうベル=ラプソティであった。今の性的指向が何かしらの理由で捻じ曲がってしまっているクォール=コンチェルト第1王子に近づいたこと自体が間違いだったのだ、ラミアへと進化した女性淫魔は。それに関して、ラミアに助言したいベル=ラプソティたちであったが、そもそもとして、醜い争いが終わりを告げる気配もない。
ベル=ラプソティはやれやれと身体の左右に両腕を広げる仕草をした後、ギャラリーが集まり始めたのをきっかけとして、アリス=ロンドにラミアの相手をするようにと指示を出す。
「こんな時、どんな顔すれば良いのかわからないわ」
「失笑しておくのが一番だと思うのですゥ……。って、あれれ? クォール殿下が居ると思われる天幕から女性淫魔が飛び出してきましたよォ?」
数ある天幕のひとつから天幕の入り口を覆っている布を跳ね上げて、飛び出してきた小柄な女性淫魔が居た。そして、その姿はアリス=ロンドに瓜二つであり、やっぱりね……と思うしかないベル=ラプソティであった。
しかもだ。その女性淫魔を追って、天幕から飛び出してきたのがクォール=コンチェルト第1王子、そのひとであった。しかも、かなり立腹しているらしく、尻餅をついているアリス=ロンド似で裸体の女性淫魔に向かって、銀色に輝く長剣の切っ先を突きつけている。
「俺のアリスたんを侮辱しおってぇぇぇ!! アリスたんにおちんこさんがついてないとはどういうことだっ! 女性淫魔たるもの、男の娘のオーダーをしっかりとその身体で示せっ!」
ベル=ラプソティは身体全体から力が抜けていくのを止めることは出来ず、その場で膝から崩れ落ちることになる。カナリア=ソナタは、アハハ……と失笑する他無かった。そして、立腹して当然であるはずの本物のアリス=ロンドは意外なことに冷静であった。
「可愛らしい男の娘だと思った? ざんね~ん。女の子でしたぁぁぁ! って奴デスネ。ちょっとだけクォールに同情しマス。ちょっとだけですケド」
アリス=ロンドとしては自分の姿に似せていようが、おちんこさんが付いてない時点で、それが自分とは似ても似つかぬ女性淫魔だという認識であった。それゆえにその女性淫魔をクォール=コンチェルトが蹂躙しようが知ったこっちゃないというのがアリス=ロンドの本音である。
「アリス。わたくしはどっと疲れがでましたことよ。クォール殿下に女性淫魔を退治してもらうのは無理だから、アリスが浄化してちょうだい」
「わかりまシタ。クォールが半狂乱になっている姿を見ているだけでも、嬉しいのですが、女性淫魔が必要以上に痛めつけらるのも見ていて忍びないですカラ」
悪魔を光で浄化できるのは天使だけである。いくら低級の低級である悪魔と言えども、ニンゲン如きに命まで取られることはない。それゆえにクォール=コンチェルトが眼の前の女性淫魔を散々に痛めつける残虐行為に走る前に、女性淫魔を光の向こう側へと送ってしまおうとするアリス=ロンドであった。
しかし、アリス=ロンドがそうしようとした間際、アリス=ロンドに似た女性淫魔の身体から魔素が噴き出し、アリス=ロンドは短めの短剣を振るうのを止めて、バックステップを繰り返し、女性淫魔から物理的に距離を開けることになる。
「ワレをいたずらに傷つけようとするのならば、ワレも本気を出そうゾっ!」
窮地に追いやられた女性淫魔は悪魔としての真価を発揮する。両足が溶けるように交わり合い、それは蛇の同体となる。上半身はアリス=ロンドに似ていたが、下半身は蛇の姿となる。さらには両手の先から長い爪が伸び、その爪で半狂乱となっているクォール=コンチェルト第1王子を串刺しにしてしまおうとする。
クォール=コンチェルト第1王子はさすがは凱旋王の長子なだけはあり、不意打ちに似た女性淫魔の反撃であったが、右手に持つ銀色に輝く長剣で致命の一撃を切り払ってみせる。
「すごいわね。女性淫魔からラミアへと昇格した悪魔の一撃を払いのけてみせたわよ? クォール殿下の評価を少しだけ上げないとダメかしら?」
ベル=ラプソティは素直に今のクォール=コンチェルト第1王子の反応の良さを褒めてみせる。女性淫魔は怒りにより、低級の低級から低級の上位ほどの悪魔へと進化してみせた。それなのにクォール=コンチェルト第1王子は自分の身に突き立てられてくる鋭い爪をこれでもかと、銀色に輝く長剣1本でかち上げ、打ち払い、さらには叩き落としてみせる。
クォール=コンチェルト第1王子の勇ましい姿に惚れ惚れとしてしまうのがマリーヤ=ポルヤノフであった。うっとりとした表情でラミアとクォール=コンチェルト第1王子の醜い争いを観戦し続けていた。
何故、醜い争いかと言えば、ラミアと化した女性淫魔とクォール=コンチェルト第1王子が口汚く互いを罵りあっていたからだ。クォール=コンチェルトとしては、素敵な淫夢を見せてくれるはずの女性淫魔におちんこさんがついていなかったことへのクレームを。女性淫魔としては、特殊な性的指向に関して、いちいち細やかに対応してられるかっ! という文句である。
敵を知り、己を知れば百戦危うからずという言葉がある。悪魔と天使は長い年月を血で血を洗う戦いをしてきた。それゆえに相手がどんな特徴を持っているかを知り尽くしているとも言って良い。そして、ベル=ラプソティたちはインキュバスや女性淫魔がどのような存在であるかも重々承知であった。
「時代も変わったってことかしら? 客のクレームに近い注文ですら、女性淫魔は喜んで承りまししたっ! って頭を下げるべきなの?」
「あたしが女性淫魔なら、そもそもそんな面倒くさいヒトを客として選ばないのですゥ。サービスを提供する側がお客様は神様だとのたまうよりかは、ターゲットとする客層を明確に絞ったほうが色々と効率的ですし、利益もしっかりと出るのですゥ」
カナリア=ソナタの的確すぎる指摘になるほどと思ってしまうベル=ラプソティであった。今の性的指向が何かしらの理由で捻じ曲がってしまっているクォール=コンチェルト第1王子に近づいたこと自体が間違いだったのだ、ラミアへと進化した女性淫魔は。それに関して、ラミアに助言したいベル=ラプソティたちであったが、そもそもとして、醜い争いが終わりを告げる気配もない。
ベル=ラプソティはやれやれと身体の左右に両腕を広げる仕草をした後、ギャラリーが集まり始めたのをきっかけとして、アリス=ロンドにラミアの相手をするようにと指示を出す。
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