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第7章:淫蕩の王
第4話:鼻っ柱
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ベル=ラプソティは聞き捨てならないアリス=ロンドの台詞によって、一瞬で頭に血が昇ってしまうが、それでもどうにか煮えたぎる頭を冷やして、アリス=ロンドに今の一言はいったいぜんたい、どういうことだと問うことになる。
「七大悪魔のひとりであるアスモウデスを相手に、今のベル様では瞬殺されると言っているのデス。ベル様だって気づいていますヨネ? アスモウデスがまったく本気を出していないことクライ」
「わかってるわよっ! あいつが10パーセント程度しか呪力を発揮していないことくらいっ! でも、今のあの油断している状態だからこそ、こっちにも勝機があるんでしょっ!?」
「ベル様の言う通りデス。ボクはベル様と意見が合って、嬉しい限りデス」
ベル=ラプソティは会話にならないアリス=ロンドをこのままアスモウデスに向かってぶん投げたい気持ちになってしまう。アスモウデスは腹から生えている竜の口から焔の弾を撃ち出してはいるが、こちらがギリギリで躱せる程度の大きさと速度で放っているのだ。こんな相手を舐め切っているアスモウデスをどうにかして、本気にさせてやりたいとすら思ってしまうベル=ラプソティであった。
油断が命取りという言葉通り、あの4つある頭部の内、全部を一度に叩き潰してやろうという気概こそは持っているが、それを為すには、アリス=ロンドの神力がどうしても必要だ。いくら腹立たしい気持ちになっても、アリス=ロンドをあいつに向かってぶん投げられるわけではない。
「良い!? もう1度、言うわよ!! わたくしたちが囮になるから、アリスは隙を見て、あいつの頭を全部一度に叩き潰してっ!」
「そそれなら簡単なのデス。わざわざベル様が囮になる必要はありまセン。あいつの体内にある4つの核を一度に潰してこいと言われるのであれば、躊躇しますケド」
アリス=ロンドの発言に我慢ならなかったベル=ラプソティはやれるものならやってみろとばかりにアリス=ロンドを槍投げのようにアスモウデスに向かって、ぶん投げてしまう。そうした後、ベル=ラプソティはハッ! と我に帰り、自分のしでかしたことで顔が真っ青になってしまうのであった。
ベル=ラプソティにぶん投げらたアリス=ロンドは加速を入れるために背中の片羽から光の鱗粉をまき散らす。背中側から今のは無しよっ! というベル様の声が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろうと思ったアリス=ロンドはさらに加速力を増して、アスモウデスへと向かって突っ込んでいく。アスモウデスは4つある頭部に笑みを浮かべ、右手に持つ黒い槍でアリス=ロンドを串刺ししてしまおうとする。
しかし、アリス=ロンドは突き出された黒い槍の穂先を寸でのところで回避し、さらに加速力を増し、アスモウデスの腹に生えている竜の鼻先へとオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面をぶつける。そして、自分の頭を基点として、アリス=ロンドは半回転し、両足の踵をニンゲンと雄羊の鼻っ柱と叩きこむ。
アスモウデスは堪らず呻き声をあげる。行儀の悪い男の娘には折檻が必要だとばかりに黒い槍を手放し、右手でアリス=ロンドの細い胴を掴もうとする。だが、アリス=ロンドはさらにそこから身体を捻り、アスモウデスの首から上にあるふたつの頭を蹴っ飛ばす。アスモウデスは右手で何もない空気を握り潰すことになる。
幸い、左の雄牛頭は何も攻撃を喰らってないため、アリス=ロンドの動きを追うこが出来た。自分の頭ふたつを蹴り飛ばした小生意気な片翼の天使は氷上のお姫様の如くに空中で三回転半を決めようとしている真っ最中であった。アスモウデスは左手で持つ軍旗を振り回し、蝿のように舞う片翼の天使を叩き落とそうとする。
しかしながら片翼の天使は蝿ではなく、蝶のように舞い、鉢のように刺す動きを見せる。横方向から振り回されてきた軍旗を蹴飛ばし、さらに回転数を増やしたのだ、片翼の天使は。しかも本来なら宙へと飛んでいくはずが、直角に折れ曲がって、両足を揃えて、牛頭の鼻っ柱にドロップキックをかましたのであった。
「ベル様の命令通りとはいきませんでたけど、鼻っ柱は折っておきまシタ。及第点をもらっても良いでショウカ?」
「わたくしから合格点をもらう前に、もっと深刻なダメージを与えなさいよっ! 変にプライドを傷つけてるだけよっ!?」
「舐め切った態度をかましてくる相手にはこれくらいがちょうど良いと思ったのデスガ。わかりまシタ。ベル様が望むのであれば、もっと痛い目に合わせておきマス」
ベル=ラプソティは心底から恐怖した。それは七大悪魔のひとりであるアスモウデスに対してではない。いくらこちらを舐め切っている相手だとしても、わざわざ怒らせるようなことをするアリス=ロンドに対してだ。顔を右手で抑えつつ、怒りに燃えたぎり、さらには身体のあちこちから魔素を噴き出しているアスモウデス相手に、真正面からスタスタとまるで今からお花摘みに向かうかのような足取りで近づいていくアリス=ロンドに開いた口が塞がらなくなってしまうベル=ラプソティであった。
そして、次にアリス=ロンドがしたことで、ベル=ラプソティの開いた口はさらに広がりを見せ、ついには顎がはずれかけるほどの間抜け面をさらすことになる。
「ゆる……さんぞっ! ここまで虚仮にされたのは、星皇相手くらいだそぉぉぉ!」
「はて? いったい、何代前の星皇様のことを指しているのでショウカ? 当代の星皇様なら嬉しいのデスガ」
アスモウデスは4つある頭の全てに怒りの表情を浮かべる。もう少し遊んでやろうと思っていたが、今すぐにでもこの出来損ないをバラバラにして、殺して、犯して、焼いて、消し炭にしてやろうと思った。そして、そう思ったと同時に右手に持ち直した黒い槍は異形な姿とへと変貌し、竜の首級をそのまま引っこ抜いたかのような形となる。
黒き竜の槍と化した槍を片翼の天使に向かって、突き出すと同時に、その槍は黒い瘴気に包まれる。穂先に触れる前に、纏わりつく瘴気に触れただけで、出来損ないの天使如きでは、身体だけでなく魂までも粉砕される威力を持っていた。アスモウデスはこの生意気な出来損ないをこの世から完全に消し去ろうとしていたのだ。
しかし、アリス=ロンドは右手を前へとかざし、その右手に神力を凝縮させていく。まるで『お前の攻撃など指先ひとつで止めてみせよう』とも言わんばかりの仕草である。アスモウデス側には躊躇など一切無かった。黒き竜の槍を真っ直ぐ、アリス=ロンドに向かって突き立てていく。
「これがシャイニング・エンジェル・フィンガーとやらデス!」
アリス=ロンドは右手からあふれ出す光の神力を惜しみなくアスモウデスが突き付けてくる黒き竜の槍に向かって解き放つ……。
「七大悪魔のひとりであるアスモウデスを相手に、今のベル様では瞬殺されると言っているのデス。ベル様だって気づいていますヨネ? アスモウデスがまったく本気を出していないことクライ」
「わかってるわよっ! あいつが10パーセント程度しか呪力を発揮していないことくらいっ! でも、今のあの油断している状態だからこそ、こっちにも勝機があるんでしょっ!?」
「ベル様の言う通りデス。ボクはベル様と意見が合って、嬉しい限りデス」
ベル=ラプソティは会話にならないアリス=ロンドをこのままアスモウデスに向かってぶん投げたい気持ちになってしまう。アスモウデスは腹から生えている竜の口から焔の弾を撃ち出してはいるが、こちらがギリギリで躱せる程度の大きさと速度で放っているのだ。こんな相手を舐め切っているアスモウデスをどうにかして、本気にさせてやりたいとすら思ってしまうベル=ラプソティであった。
油断が命取りという言葉通り、あの4つある頭部の内、全部を一度に叩き潰してやろうという気概こそは持っているが、それを為すには、アリス=ロンドの神力がどうしても必要だ。いくら腹立たしい気持ちになっても、アリス=ロンドをあいつに向かってぶん投げられるわけではない。
「良い!? もう1度、言うわよ!! わたくしたちが囮になるから、アリスは隙を見て、あいつの頭を全部一度に叩き潰してっ!」
「そそれなら簡単なのデス。わざわざベル様が囮になる必要はありまセン。あいつの体内にある4つの核を一度に潰してこいと言われるのであれば、躊躇しますケド」
アリス=ロンドの発言に我慢ならなかったベル=ラプソティはやれるものならやってみろとばかりにアリス=ロンドを槍投げのようにアスモウデスに向かって、ぶん投げてしまう。そうした後、ベル=ラプソティはハッ! と我に帰り、自分のしでかしたことで顔が真っ青になってしまうのであった。
ベル=ラプソティにぶん投げらたアリス=ロンドは加速を入れるために背中の片羽から光の鱗粉をまき散らす。背中側から今のは無しよっ! というベル様の声が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろうと思ったアリス=ロンドはさらに加速力を増して、アスモウデスへと向かって突っ込んでいく。アスモウデスは4つある頭部に笑みを浮かべ、右手に持つ黒い槍でアリス=ロンドを串刺ししてしまおうとする。
しかし、アリス=ロンドは突き出された黒い槍の穂先を寸でのところで回避し、さらに加速力を増し、アスモウデスの腹に生えている竜の鼻先へとオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面をぶつける。そして、自分の頭を基点として、アリス=ロンドは半回転し、両足の踵をニンゲンと雄羊の鼻っ柱と叩きこむ。
アスモウデスは堪らず呻き声をあげる。行儀の悪い男の娘には折檻が必要だとばかりに黒い槍を手放し、右手でアリス=ロンドの細い胴を掴もうとする。だが、アリス=ロンドはさらにそこから身体を捻り、アスモウデスの首から上にあるふたつの頭を蹴っ飛ばす。アスモウデスは右手で何もない空気を握り潰すことになる。
幸い、左の雄牛頭は何も攻撃を喰らってないため、アリス=ロンドの動きを追うこが出来た。自分の頭ふたつを蹴り飛ばした小生意気な片翼の天使は氷上のお姫様の如くに空中で三回転半を決めようとしている真っ最中であった。アスモウデスは左手で持つ軍旗を振り回し、蝿のように舞う片翼の天使を叩き落とそうとする。
しかしながら片翼の天使は蝿ではなく、蝶のように舞い、鉢のように刺す動きを見せる。横方向から振り回されてきた軍旗を蹴飛ばし、さらに回転数を増やしたのだ、片翼の天使は。しかも本来なら宙へと飛んでいくはずが、直角に折れ曲がって、両足を揃えて、牛頭の鼻っ柱にドロップキックをかましたのであった。
「ベル様の命令通りとはいきませんでたけど、鼻っ柱は折っておきまシタ。及第点をもらっても良いでショウカ?」
「わたくしから合格点をもらう前に、もっと深刻なダメージを与えなさいよっ! 変にプライドを傷つけてるだけよっ!?」
「舐め切った態度をかましてくる相手にはこれくらいがちょうど良いと思ったのデスガ。わかりまシタ。ベル様が望むのであれば、もっと痛い目に合わせておきマス」
ベル=ラプソティは心底から恐怖した。それは七大悪魔のひとりであるアスモウデスに対してではない。いくらこちらを舐め切っている相手だとしても、わざわざ怒らせるようなことをするアリス=ロンドに対してだ。顔を右手で抑えつつ、怒りに燃えたぎり、さらには身体のあちこちから魔素を噴き出しているアスモウデス相手に、真正面からスタスタとまるで今からお花摘みに向かうかのような足取りで近づいていくアリス=ロンドに開いた口が塞がらなくなってしまうベル=ラプソティであった。
そして、次にアリス=ロンドがしたことで、ベル=ラプソティの開いた口はさらに広がりを見せ、ついには顎がはずれかけるほどの間抜け面をさらすことになる。
「ゆる……さんぞっ! ここまで虚仮にされたのは、星皇相手くらいだそぉぉぉ!」
「はて? いったい、何代前の星皇様のことを指しているのでショウカ? 当代の星皇様なら嬉しいのデスガ」
アスモウデスは4つある頭の全てに怒りの表情を浮かべる。もう少し遊んでやろうと思っていたが、今すぐにでもこの出来損ないをバラバラにして、殺して、犯して、焼いて、消し炭にしてやろうと思った。そして、そう思ったと同時に右手に持ち直した黒い槍は異形な姿とへと変貌し、竜の首級をそのまま引っこ抜いたかのような形となる。
黒き竜の槍と化した槍を片翼の天使に向かって、突き出すと同時に、その槍は黒い瘴気に包まれる。穂先に触れる前に、纏わりつく瘴気に触れただけで、出来損ないの天使如きでは、身体だけでなく魂までも粉砕される威力を持っていた。アスモウデスはこの生意気な出来損ないをこの世から完全に消し去ろうとしていたのだ。
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