84 / 202
第9章:クロマニョン王国
第2話:七忍の御使い
しおりを挟む
「1000忍斬りのアンドレイって……。ぷふっ! 名誉な異名じゃねえかっ!」
「ちょっと、アリス殿の前で言わないでください。変な意味で取られたら、私の威厳が底打ちしますよ!?」
「……? そんなにおかしな異名デスカ? ひとりで1000人も斬り伏せたのでショウ?」
「そりゃ、腰に履いている長剣で斬り伏せたんだろうから、名誉そのものよっ! いや、反り具合から言わせれば、三日月刀?」
「いい加減にしないと怒りますよ? 股間の三日月刀で斬り伏せたのは、せいせい両手で数えれるほどです」
アンドレイのその言いに、クハハハハハッ! と盛大に笑うのがベリアルであった。暗殺者は別名『忍』とも呼ばれる。そして、忍の中でも女性は『くノ一』とも呼ばれた。アンドレイ=ラプソティはその『くノ一』たちを殺すのは忍びないと、股間の三日月刀で懐柔してきた経歴持ちであった。
そもそも、餅は餅屋という言葉があるように、レオン=アレクサンダーを暗殺しようとする者たちを防ぐ集団を必要としたのだ、レオン=アレクサンダーの守護天使は。そして、暗殺者たちを殺すのに最適なのが『忍』たちなのである。金で雇われる『忍』たちはとにかく金にうるさい。それゆえに、依頼者の倍の金を出すと言われて寝返ったとしても、彼らに咎は無い。そもそも金の多寡でどちらにでも転ぶ相手なのだ。
ならば、その金で転ぶ相手を確実に味方に引き込むにはどうすれば良いのか? 答えは簡単だ。金以外の利益を与えれば良いのだ。それが『情』なのである。アンドレイ=ラプソティは男の忍は腰に佩いた長剣でことごとく斬り伏せたが、『くノ一』の一部は、腰の三日月刀で懐柔したのである。
そして、アンドレイ=ラプソティの腰の三日月刀によって、懐柔された『くノ一』たちは、別名『七忍の御使い』と呼ばれるようになる。その七忍はさまざまな人種で構成されており、レオン=アレクサンダーはついにアンドレイ=ラプソティも直々の部下を手に入れたのかと賞賛したが、アンドレイ=ラプソティはこの『七忍の御使い』のことを、自分の恥部だと恥じたのである。
「逃げろっ! 全速力で逃げろっ! アンドレイ様に逆らうなっ!?」
「お頭ぁぁぁ! 俺の腕がぁぁぁ!」
「足が無いっ! 俺の足があんなところに転がってるぅぅぅ!」
衛兵隊長はこの場から逃げるようにと、部下たちに指示を飛ばす。しかし、その前に濃い影がアンドレイ=ラプソティの背中から飛び出したとか思った瞬間、アンドレイ=ラプソティに向かって、槍の穂先を向けていた衛兵たちの手足が宙を舞い、ドサッドサッ! という音と共に、草地の地面に転がることになる。
「ほぅ……。存外にやる。さすがはアンドレイが見込んだ忍なだけはあるなっ」
「感心されても困るんですが。ミサ殿。何時、私があなたの助力を請いました!?」
「ふふ~~~ん。アンドレイ様に危害を及ぼそうとしているのですニャン! あちきがアンドレイ様のために危険を排除するのは当たり前ですニャン!」
忍装束に身を包んだ半猫半人の女性が褒めて褒めてとばかりにアンドレイ=ラプソティに纏わりつく。しかし、そんな彼女の右手には紅く染まる短剣が握られていた。その紅く染まる短剣を憎々しく見るしかなかったアンドレイ=ラプソティは本日3度目となる嘆息を吐くしかなかった。
「あのぉぉぉ。どちら様なのデス? ボクがまともに見えるくらいに物騒な方ですケド?」
「貴女は貴女で十分、物騒ですよっ! ああっ! ツッコミ疲れましたっ!」
「ツッコんでぶっ放すなら、あちきの膣奥にお願いしますニャン! 奉公には御恩をっ! 忍は無料で働いてはいけない掟ですニャンっっっ!」
アンドレイ=ラプソティはついにがっくしと両肩を落とすしかなかった。神聖マケドナルド帝国に近づけば近づくほど、彼女たちが合流してくれるのは自明の理であった。だがしかし、それにしてもトルメキア王国とクロマニョン王国の国境で、ミサ=ミケーンが合流してくるのは計算違いであったのだ。
関所を護る衛兵たちは、アンドレイ=ラプソティたちが言い合いをしている間に、全員、逃げてしまっていた。残された乗り合い荷馬車の面々は、どうしていいものかわからず、その場で立ち往生するしかなかった。
「乗り合い荷馬車の御者が困っています。すみません、私たちを置いて、先に進んでも良いですよ」
「そ、そりゃそうしたいが、この関所で大暴れしたことは、すぐにクロマニョン王国中に知れ渡ることになっちまうよ。あんたたちを置いていったら、逆にどうしたら良いかわからなくなっちまう……」
御者が言うことはもっともであった。自分たちは巻き込まれただけだと主張しようにも、暴れた張本人たちがどこかに雲隠れしてもらっては、それはそれで困るのであった。ここまで来たら旅は道連れなのである。御者は何としても、この6枚羽の熾天使様と同行せねばならない事情が出来てしまったのである。
それを察したアンドレイ=ラプソティはベリアルに無言で目配せする。ベリアルは『怠惰』の権現様である。しかしながら、生来からの面倒くさがりであるが、この騒動の火種となったアンドレイ=ラプソティと同行すれば、あちらから騒ぎがやってくる。こんな楽しいことに巻き込まれずにいられるはずの無いベリアルは満面の笑みで、うんうんと首級を縦に振るのであった。
「おう。何かあったら、我輩とアンドレイ=ラプソティ様が何とかしてやるっての。あんたは大船に乗ったつもりで、荷馬車をクロマニョン王国の大きな都市へと向かってくれやっ!」
「へ、へえ……。何かありましたら、全ての責任をそちらにおっかぶせますからね!?」
御者は荷馬車の荷台部分に、アンドレイ=ラプソティたちが全員乗り込んだのを確認すると、御者台に上り、荷馬車と結ばれている馬たちに鞭を入れる。関所の門をくぐり、後ろを振り向いたアリス=アンジェラは、思わず首級を傾げてしまうことになる。
「ベリアルがハリボテと言っていた意味がようやくわかったのデス。アリスは見た物の印象をそのままに受けすぎていたのデスネ」
「おうよ。ガワだけ取り繕っていただけだぜ。んで、大きな街道を塞ぐようにしてはいるが、普通、こんな開けた場所に建てるわけもねえ。壁も適当な造りすぎる」
ベリアルの言う通り、トルメキア王国側から見れば、立派な石造りの門と背は低いが石造りの壁が南北に続いているように見えた。しかし、いざ、くぐり抜けてみれば、木製の足場が剥き出しになっている。まさにクロマニョン王国がどんな国なのかを象徴するにふさわしい関所であったのだ。
「ちょっと、アリス殿の前で言わないでください。変な意味で取られたら、私の威厳が底打ちしますよ!?」
「……? そんなにおかしな異名デスカ? ひとりで1000人も斬り伏せたのでショウ?」
「そりゃ、腰に履いている長剣で斬り伏せたんだろうから、名誉そのものよっ! いや、反り具合から言わせれば、三日月刀?」
「いい加減にしないと怒りますよ? 股間の三日月刀で斬り伏せたのは、せいせい両手で数えれるほどです」
アンドレイのその言いに、クハハハハハッ! と盛大に笑うのがベリアルであった。暗殺者は別名『忍』とも呼ばれる。そして、忍の中でも女性は『くノ一』とも呼ばれた。アンドレイ=ラプソティはその『くノ一』たちを殺すのは忍びないと、股間の三日月刀で懐柔してきた経歴持ちであった。
そもそも、餅は餅屋という言葉があるように、レオン=アレクサンダーを暗殺しようとする者たちを防ぐ集団を必要としたのだ、レオン=アレクサンダーの守護天使は。そして、暗殺者たちを殺すのに最適なのが『忍』たちなのである。金で雇われる『忍』たちはとにかく金にうるさい。それゆえに、依頼者の倍の金を出すと言われて寝返ったとしても、彼らに咎は無い。そもそも金の多寡でどちらにでも転ぶ相手なのだ。
ならば、その金で転ぶ相手を確実に味方に引き込むにはどうすれば良いのか? 答えは簡単だ。金以外の利益を与えれば良いのだ。それが『情』なのである。アンドレイ=ラプソティは男の忍は腰に佩いた長剣でことごとく斬り伏せたが、『くノ一』の一部は、腰の三日月刀で懐柔したのである。
そして、アンドレイ=ラプソティの腰の三日月刀によって、懐柔された『くノ一』たちは、別名『七忍の御使い』と呼ばれるようになる。その七忍はさまざまな人種で構成されており、レオン=アレクサンダーはついにアンドレイ=ラプソティも直々の部下を手に入れたのかと賞賛したが、アンドレイ=ラプソティはこの『七忍の御使い』のことを、自分の恥部だと恥じたのである。
「逃げろっ! 全速力で逃げろっ! アンドレイ様に逆らうなっ!?」
「お頭ぁぁぁ! 俺の腕がぁぁぁ!」
「足が無いっ! 俺の足があんなところに転がってるぅぅぅ!」
衛兵隊長はこの場から逃げるようにと、部下たちに指示を飛ばす。しかし、その前に濃い影がアンドレイ=ラプソティの背中から飛び出したとか思った瞬間、アンドレイ=ラプソティに向かって、槍の穂先を向けていた衛兵たちの手足が宙を舞い、ドサッドサッ! という音と共に、草地の地面に転がることになる。
「ほぅ……。存外にやる。さすがはアンドレイが見込んだ忍なだけはあるなっ」
「感心されても困るんですが。ミサ殿。何時、私があなたの助力を請いました!?」
「ふふ~~~ん。アンドレイ様に危害を及ぼそうとしているのですニャン! あちきがアンドレイ様のために危険を排除するのは当たり前ですニャン!」
忍装束に身を包んだ半猫半人の女性が褒めて褒めてとばかりにアンドレイ=ラプソティに纏わりつく。しかし、そんな彼女の右手には紅く染まる短剣が握られていた。その紅く染まる短剣を憎々しく見るしかなかったアンドレイ=ラプソティは本日3度目となる嘆息を吐くしかなかった。
「あのぉぉぉ。どちら様なのデス? ボクがまともに見えるくらいに物騒な方ですケド?」
「貴女は貴女で十分、物騒ですよっ! ああっ! ツッコミ疲れましたっ!」
「ツッコんでぶっ放すなら、あちきの膣奥にお願いしますニャン! 奉公には御恩をっ! 忍は無料で働いてはいけない掟ですニャンっっっ!」
アンドレイ=ラプソティはついにがっくしと両肩を落とすしかなかった。神聖マケドナルド帝国に近づけば近づくほど、彼女たちが合流してくれるのは自明の理であった。だがしかし、それにしてもトルメキア王国とクロマニョン王国の国境で、ミサ=ミケーンが合流してくるのは計算違いであったのだ。
関所を護る衛兵たちは、アンドレイ=ラプソティたちが言い合いをしている間に、全員、逃げてしまっていた。残された乗り合い荷馬車の面々は、どうしていいものかわからず、その場で立ち往生するしかなかった。
「乗り合い荷馬車の御者が困っています。すみません、私たちを置いて、先に進んでも良いですよ」
「そ、そりゃそうしたいが、この関所で大暴れしたことは、すぐにクロマニョン王国中に知れ渡ることになっちまうよ。あんたたちを置いていったら、逆にどうしたら良いかわからなくなっちまう……」
御者が言うことはもっともであった。自分たちは巻き込まれただけだと主張しようにも、暴れた張本人たちがどこかに雲隠れしてもらっては、それはそれで困るのであった。ここまで来たら旅は道連れなのである。御者は何としても、この6枚羽の熾天使様と同行せねばならない事情が出来てしまったのである。
それを察したアンドレイ=ラプソティはベリアルに無言で目配せする。ベリアルは『怠惰』の権現様である。しかしながら、生来からの面倒くさがりであるが、この騒動の火種となったアンドレイ=ラプソティと同行すれば、あちらから騒ぎがやってくる。こんな楽しいことに巻き込まれずにいられるはずの無いベリアルは満面の笑みで、うんうんと首級を縦に振るのであった。
「おう。何かあったら、我輩とアンドレイ=ラプソティ様が何とかしてやるっての。あんたは大船に乗ったつもりで、荷馬車をクロマニョン王国の大きな都市へと向かってくれやっ!」
「へ、へえ……。何かありましたら、全ての責任をそちらにおっかぶせますからね!?」
御者は荷馬車の荷台部分に、アンドレイ=ラプソティたちが全員乗り込んだのを確認すると、御者台に上り、荷馬車と結ばれている馬たちに鞭を入れる。関所の門をくぐり、後ろを振り向いたアリス=アンジェラは、思わず首級を傾げてしまうことになる。
「ベリアルがハリボテと言っていた意味がようやくわかったのデス。アリスは見た物の印象をそのままに受けすぎていたのデスネ」
「おうよ。ガワだけ取り繕っていただけだぜ。んで、大きな街道を塞ぐようにしてはいるが、普通、こんな開けた場所に建てるわけもねえ。壁も適当な造りすぎる」
ベリアルの言う通り、トルメキア王国側から見れば、立派な石造りの門と背は低いが石造りの壁が南北に続いているように見えた。しかし、いざ、くぐり抜けてみれば、木製の足場が剥き出しになっている。まさにクロマニョン王国がどんな国なのかを象徴するにふさわしい関所であったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる