85 / 202
第9章:クロマニョン王国
第3話:ボーリダック
しおりを挟む
クロマニョン王国の領土の内、北西側の3分の1はアルピオーネ山脈に支配されていた。そのアルピオーネ山脈のすそ野とそこに添うようにクロマニョン王国が展開されていたのである。これは国防という面において、優れた立地とも言えた。北西にアルピオーネ山脈があるということは、隣接する国は2か国しかない。南東に位置するトルメキア王国くらいなのだ、脅威となるのは。
西には地中海が広がり、イタリアーナ王国からの侵入が心配さられたが、そのイタリアーナ王国は北部をアルピオーネ山脈で完全に蓋をされているために、どうしてもクロマニョン王国と友好を結ぶしかない。何かあった時に頼る国がクロマニョン王国しか無いからである。
そして、クロマニョン王国は立地の上で、トルメキア王国さえ注意しておけば良い。西エイコー大陸と中央エイコー大陸の玄関口であるトルメキア王国よりかは国土を護りやすかったのである。しかしながら、その常識を打ち破ったのが神聖マケドナルド帝国であった。わざわざ東に大回りに神聖マケドナルド帝国が侵攻してきたため、クロマニョン王国は為す術なく神聖マケドナルド帝国兵に踏みつぶされるしか無かったのだ。
神聖マケドナルド帝国という巨大な帝国が出来上がっても、クロマニョン王国は平然と平等な国交を神聖マケドナルド帝国と結ぼうとしていた。だが、神聖マケドナルド帝国はクロマニョン王国の北や北東に位置するブルガスト王国、セシリア王国をたった1カ月ほどで征服してしまったのだ。慌てたクロマニョン王国の王族・貴族たちはそれでも、神聖マケドナルド帝国はそれらの国々で一旦、足を止めると思い込んでいた……。
「神聖マケドナルド帝国が樹立された後にも、対等な立場で物申す国々が乱立したのですニャン。でも、レオン=アレクサンダー帝のすごいところは、それらを武力で平定してしまったことですニャン」
「すごいのデス。さすがは創造主:Y.O.N.N様に『覇王の天命』を与えられたことだけはあるのデス!」
『七忍の御使い』のひとりであるミサ=ミケーンが鼻高々にしながら、アリス=アンジェラに神聖マケドナルド帝国の偉業を解説するのであった。しかしながら、アンドレイ=ラプソティは心臓がバックンバックン! と跳ね上がって仕方が無い。その帝国の帝の天命を奪ったのが、ミサ=ミケーンが講釈を垂れている相手なのだから。
もし、レオン帝の天命を奪った張本人がアリス=アンジェラだと知ったら、ミサ=ミケーンはどのような態度をアリス=アンジェラに取るのか? と思うと、気が気ではないアンドレイ=ラプソティであった。
「ごほんっ! レオンが志半ばに命を落としたのは非常に残念ですが、今、神聖マケドナルド帝国はどうなっているのですか?」
「あちきもよくわかっていませんのニャン。義妹たちから送られてくる伝書鳩からは、各国で独立運動が計画されているというくらいの情報しか……。ですが、それはまだまだ時間がかかりそうですニャン」
アンドレイ=ラプソティは無理やり、レオンのことから別の話へとミサ=ミケーンを誘導した。アリス=アンジェラが口を滑らせないようにするためも含めてだ。しかしながら、ミサ=ミケーンからもたされる情報は限定的であった。アンドレイ=ラプソティ直属の忍集団である『七忍の御使い』たちは各国で情報収集するために散らばってはいるが、きな臭い話は聞こえてきても、実際に動きを見せる国は未だに現れていないとのことであった。
「あくまでも様子見といったところですニャン。しかしながら、神聖マケドナルド帝国の首都に近い国が蜂起すれば、それは野原に放たれた火の如く、神聖マケドナルド帝国を燎原に変える可能性はありますニャン」
「そう……ですか。まだ神聖マケドナルド帝国の威厳は完全には損なわれてはいないわけですね?」
「はいですニャン! いくら3歳児と言えども、レオン様が後継ぎを指名してくれていたおかげでもあると思いますニャン! ミハエル様が無事に帝位に就けば、くすぶっている蜂起の芽も潰せるはずですニャン!」
ミサ=ミケーンの言うことは予測に過ぎないが、確かに光明とも言える内容であった。しかし、アンドレイ=ラプソティには懸念があった。そう、自分を堕天から救った人物の存在である。その人物が自分にもっと苦しんでほしいと願っている。そのため、その人物がレオンの遺児であるミハエル=アレクサンダーの命を狙っていることは明白であった。
「ダン=クゥガー? どこかで聞いた気がするのですニャン」
「どうにかして思い出してくれませんか?」
「わかりましたニャン。義姉たちに聞いてみますニャン。伝書鳩でやりとりはしますけど、数日お時間を頂くことはご了承してほしいのですニャン」
アンドレイ=ラプソティは出来る限りのダン=クゥガーの身体的特徴をミサ=ミケーンに伝える。しかしながら、ミサ=ミケーンの頭の中には、名前と外見がマッチングする相手は存在しなかった。だがそれでも、何かが引っかかるモノがあると言い、義姉たちにも聞いてみると言ってくれるのであった。アンドレイ=ラプソティは頼みましたよ……とミサ=ミケーンにその件についての情報収集を任せるのであった。
一方、蚊帳の外に置かれていたアリス=アンジェラたちは、先ほど、ならず者たちに暴力を振るわれた親子と会話を楽しんでいた。
「旅をしている真っ最中なのデス? 仕事か何かなのデス?」
「はい……。神聖マケドナルド帝国の首都近郊で商売ができないかと、模索しておりまして。ボーリダック商会というのをご存じで?」
「いえ、まったく知らないのデス!」
アリス=アンジェラが力強くそう言うと、ボーリダック商会の幹部であるカゲツ=ボーリダックはがっくしと両肩を落とし、背中を丸くしてしまうのであった。彼はボーリダック商会を構成する親族のひとりであった。カゲツ=ボーリダックの名前は知らぬとも、ボーリダック商会の名前くらいは耳にしているだろうという自尊心を持っていた。
ボーリダック商会は中央エイコー大陸では、それなりに名前が知られた商会である。特に織物の仲介業をやっており、東エイコー大陸の絹を大陸中央へと運び入れている。シルクロードと呼ばれるエイコー大陸を横断する商路はボーリダック商会が切り開いたという自尊心を持っていたのだ。しかし、眼の前の少女と白いネズミは首級を横に振り、まったくもって知らないと言ってみせる。ますます、身体から力が抜けていくカゲツ=ボーリダックは、ついには額を荷台の床へと着けてしまうほどに落ち込んでしまうのであった。
「良いんです、良いんです。シルクロードは今や、誰かが独占する商路ではありませんし。歴史に名前が埋もれてしまうのは当然ですよね……」
西には地中海が広がり、イタリアーナ王国からの侵入が心配さられたが、そのイタリアーナ王国は北部をアルピオーネ山脈で完全に蓋をされているために、どうしてもクロマニョン王国と友好を結ぶしかない。何かあった時に頼る国がクロマニョン王国しか無いからである。
そして、クロマニョン王国は立地の上で、トルメキア王国さえ注意しておけば良い。西エイコー大陸と中央エイコー大陸の玄関口であるトルメキア王国よりかは国土を護りやすかったのである。しかしながら、その常識を打ち破ったのが神聖マケドナルド帝国であった。わざわざ東に大回りに神聖マケドナルド帝国が侵攻してきたため、クロマニョン王国は為す術なく神聖マケドナルド帝国兵に踏みつぶされるしか無かったのだ。
神聖マケドナルド帝国という巨大な帝国が出来上がっても、クロマニョン王国は平然と平等な国交を神聖マケドナルド帝国と結ぼうとしていた。だが、神聖マケドナルド帝国はクロマニョン王国の北や北東に位置するブルガスト王国、セシリア王国をたった1カ月ほどで征服してしまったのだ。慌てたクロマニョン王国の王族・貴族たちはそれでも、神聖マケドナルド帝国はそれらの国々で一旦、足を止めると思い込んでいた……。
「神聖マケドナルド帝国が樹立された後にも、対等な立場で物申す国々が乱立したのですニャン。でも、レオン=アレクサンダー帝のすごいところは、それらを武力で平定してしまったことですニャン」
「すごいのデス。さすがは創造主:Y.O.N.N様に『覇王の天命』を与えられたことだけはあるのデス!」
『七忍の御使い』のひとりであるミサ=ミケーンが鼻高々にしながら、アリス=アンジェラに神聖マケドナルド帝国の偉業を解説するのであった。しかしながら、アンドレイ=ラプソティは心臓がバックンバックン! と跳ね上がって仕方が無い。その帝国の帝の天命を奪ったのが、ミサ=ミケーンが講釈を垂れている相手なのだから。
もし、レオン帝の天命を奪った張本人がアリス=アンジェラだと知ったら、ミサ=ミケーンはどのような態度をアリス=アンジェラに取るのか? と思うと、気が気ではないアンドレイ=ラプソティであった。
「ごほんっ! レオンが志半ばに命を落としたのは非常に残念ですが、今、神聖マケドナルド帝国はどうなっているのですか?」
「あちきもよくわかっていませんのニャン。義妹たちから送られてくる伝書鳩からは、各国で独立運動が計画されているというくらいの情報しか……。ですが、それはまだまだ時間がかかりそうですニャン」
アンドレイ=ラプソティは無理やり、レオンのことから別の話へとミサ=ミケーンを誘導した。アリス=アンジェラが口を滑らせないようにするためも含めてだ。しかしながら、ミサ=ミケーンからもたされる情報は限定的であった。アンドレイ=ラプソティ直属の忍集団である『七忍の御使い』たちは各国で情報収集するために散らばってはいるが、きな臭い話は聞こえてきても、実際に動きを見せる国は未だに現れていないとのことであった。
「あくまでも様子見といったところですニャン。しかしながら、神聖マケドナルド帝国の首都に近い国が蜂起すれば、それは野原に放たれた火の如く、神聖マケドナルド帝国を燎原に変える可能性はありますニャン」
「そう……ですか。まだ神聖マケドナルド帝国の威厳は完全には損なわれてはいないわけですね?」
「はいですニャン! いくら3歳児と言えども、レオン様が後継ぎを指名してくれていたおかげでもあると思いますニャン! ミハエル様が無事に帝位に就けば、くすぶっている蜂起の芽も潰せるはずですニャン!」
ミサ=ミケーンの言うことは予測に過ぎないが、確かに光明とも言える内容であった。しかし、アンドレイ=ラプソティには懸念があった。そう、自分を堕天から救った人物の存在である。その人物が自分にもっと苦しんでほしいと願っている。そのため、その人物がレオンの遺児であるミハエル=アレクサンダーの命を狙っていることは明白であった。
「ダン=クゥガー? どこかで聞いた気がするのですニャン」
「どうにかして思い出してくれませんか?」
「わかりましたニャン。義姉たちに聞いてみますニャン。伝書鳩でやりとりはしますけど、数日お時間を頂くことはご了承してほしいのですニャン」
アンドレイ=ラプソティは出来る限りのダン=クゥガーの身体的特徴をミサ=ミケーンに伝える。しかしながら、ミサ=ミケーンの頭の中には、名前と外見がマッチングする相手は存在しなかった。だがそれでも、何かが引っかかるモノがあると言い、義姉たちにも聞いてみると言ってくれるのであった。アンドレイ=ラプソティは頼みましたよ……とミサ=ミケーンにその件についての情報収集を任せるのであった。
一方、蚊帳の外に置かれていたアリス=アンジェラたちは、先ほど、ならず者たちに暴力を振るわれた親子と会話を楽しんでいた。
「旅をしている真っ最中なのデス? 仕事か何かなのデス?」
「はい……。神聖マケドナルド帝国の首都近郊で商売ができないかと、模索しておりまして。ボーリダック商会というのをご存じで?」
「いえ、まったく知らないのデス!」
アリス=アンジェラが力強くそう言うと、ボーリダック商会の幹部であるカゲツ=ボーリダックはがっくしと両肩を落とし、背中を丸くしてしまうのであった。彼はボーリダック商会を構成する親族のひとりであった。カゲツ=ボーリダックの名前は知らぬとも、ボーリダック商会の名前くらいは耳にしているだろうという自尊心を持っていた。
ボーリダック商会は中央エイコー大陸では、それなりに名前が知られた商会である。特に織物の仲介業をやっており、東エイコー大陸の絹を大陸中央へと運び入れている。シルクロードと呼ばれるエイコー大陸を横断する商路はボーリダック商会が切り開いたという自尊心を持っていたのだ。しかし、眼の前の少女と白いネズミは首級を横に振り、まったくもって知らないと言ってみせる。ますます、身体から力が抜けていくカゲツ=ボーリダックは、ついには額を荷台の床へと着けてしまうほどに落ち込んでしまうのであった。
「良いんです、良いんです。シルクロードは今や、誰かが独占する商路ではありませんし。歴史に名前が埋もれてしまうのは当然ですよね……」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる