拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第2章:東の果ての囚人

第6話:モトカード流拳法 第2条

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「へいへいっ! 可愛い顔してんじゃないのー! うひょー! おじさんと今晩、しっぽり楽しまないかーい?」

「ヒュゥー! 引き締まった良い身体してんじゃないかっ! 掘る方が好きかい? それとも掘られるほうかい!?」

 看守長との面会が終えた後、ロック=イートたちが連れられてきた場所は服役者が収容所内で寝泊まりする牢屋であった。一部屋2人~8人が寝泊まり出来るようになっており、それぞれの部屋の出入り口は鉄格子で塞がれており、三方は石灰岩と砂を混ぜ合わせて作ったコンクリートと呼ばれる石壁であった。その牢屋の中にあるのは臭いシーツが敷かれた硬いベッドに、外から丸見えの洋式トイレと、ちょっとした鏡付きの洗面台のみであった。そんなところで長年暮らせば、いやがおうにも心が腐ってしまうのは囚人たちを見れば、一目瞭然であった。

「おい、お前ら、少しは静かにしろっ!」

 ロック=イートたちを引き連れていた半犬半人ハーフ・ダ・ワンの看守が騒ぐ囚人たちを脅すために長さ15センチメートルほどのウッド・クラブでガンガンッ! と牢屋の鉄格子を叩く。だが、それでも囚人たちは鉄格子を両手で掴み続けて、キャンキャンと吼える。上半身裸で連行されているロック=イートの筋肉で包まれた身体がそれほどまでに眩しく映ってしょうがないのだ。自分たちは長年の収容所暮らしで、すっかり身体はやせ細り、気も萎えてしまっている。ならば、そんな宝石のように美しいロック=イートを手籠めにしたいと思うのは致し方なかったかもしれない。

「夢も希望もない牢獄:東の果てイースト・エンドへようこそぉ! あんたの夢はここで潰えるんだよぉぉぉ!」

「夢が潰える? 誰がそんなことを決めたんだ?」

 囚人の1人が鉄格子越しにさも残念だったなぁ! とばかりに悲壮な雄叫びを上げる。今の今まで囚人たちの罵詈雑言に対して、無視を決め込んでいたロック=イートであったが、『夢』という言葉に反応したのであった。ロック=イートは両の手首に手錠をはめられたというのに、その手錠と手錠を繋ぐ金属製の鎖をいとも簡単に引きちぎる。彼を率いていた看守はそんな行動に出たロック=イートに対して、腰を抜かしてしまう。強面の半熊半人ハーフ・ダ・ベアですら、その金属製の鎖を引きちぎることはそうそう出来ることではない。だが、ロック=イートは綿あめを引き延ばすかのように、いとも簡単にそれを成してしまったのである。

 そして、今まで罵詈雑言を吐いていた男の前に立ち、まるで親の仇が如くにその男の眼を鋭い眼光で威圧する。睨みつけられた男はへなへなと腰砕けになり、何も言えなくなってしまう。しかしだ、その男にヤジを飛ばせと指示していた男が居た。今の今まで牢屋の奥であぐらをかき、胸の前で腕組みをしていた半虎半人ハーフ・ダ・タイガであった。彼が新入りにここのルールを教えてやれとばかりに、皆を扇動していたのである。

 半虎半人ハーフ・ダ・タイガの男は子分が腰を抜かしたのを見て、右手で後頭部をボリボリと掻く。そして、のっそりと立ち上がり、鉄格子の前にドスンドスンと威嚇するような音をわざわざと立ててやってくる。ロック=イートもその半虎半人ハーフ・ダ・タイガを真っ直ぐと睨みつけるが、ケッとばかりにその男は意に介さない。そして、ロック=イートの前に躍り出てくるやいなや、開口一番

「お前は終わってんだよっ! 俺たちのようになっ! だからこそ、利口にその尻尾を振っていろってんだよっ!」

「言っている意味がわからない。俺は俺の夢を諦める気は断じて無いっ!」

 鉄格子を挟んで半虎半人ハーフ・ダ・タイガの男とロック=イートが対峙する。鋭い視線を交わし合い、今にも2人の間には火花が起きそうであった。だが、それを無理やり中断させたのは半虎半人ハーフ・ダ・タイガのほうであった。彼はカーーーッ! と口の中で唾を貯めて、それをロック=イートの頬に向かってペッ! と勢いよく吐きかける。ロック=イートはその汚れたタン混じりの唾をよけもせずにまともに右頬に喰らう。半虎半人ハーフ・ダ・タイガの男はケッケッケッと笑う。

 収容所における序列はどれほどに相手に自分のすごみを見せつけられるかどうかから始まる。まだ青年とは言い難い年齢であろう半狼半人ハーフ・ダ・ウルフの頬に唾を吐きかけて、自分の優位性を示そうとしたのだ。だが、囚人の中でトップの序列であろうその半虎半人ハーフ・ダ・タイガの男は判断は見誤った。

「ぶべぼぉぉぉ!?」

「モトカード流拳法、第2条。武人は言葉で語るな、こぶしで語れ」

 なんと、ロック=イートは義腕で出来た右腕で鉄格子をぶっ叩き、それを無理やりに捻じ曲げる。そしてロック=イートの右のこぶしはそこで勢いを若干鈍らされただけに収まり、さらには捻じ曲がった鉄格子の隙間を縫って、半虎半人ハーフ・ダ・タイガの顔面に突き刺さったのである。半虎半人ハーフ・ダ・タイガの男の運が良かったことは、鉄格子の存在があったことであろう。もし、それが無かったならば、その男の顎の骨は砕け散り、彼は一生、カユしか食えぬようになっていたかもしれない。

 さすがにやりすぎだとばかりに先ほどまで腰を抜かしていた看守が右胸のポケットに入れていたホイッスルを取り出し、甲高い音を吹き鳴らす。その音を聞きつけて、他の看守たちがウッド・クラブ片手に集まりだし、ロック=イートを取り囲んでしまう。

「何事だっ! 東の果てイースト・エンドでの掟を知っての狼藉かっ!」

 怒声を上げながら現れたのは収容所のNo2である看守副長:ツール=ビロンであった。彼はろくに働かぬ看守長に代わり、実質、この東の果てイースト・エンドを治めている男である。彼が眼にしたのは手錠の鎖を引きちぎっている若い半狼半人ハーフ・ダ・ウルフの男と、へし曲がった鉄格子、それにその近くで口から紅い色をした泡を噴き出している半虎半人ハーフ・ダ・タイガであった。

「入所初日からやってくれたものだなっ! 貴様には栄えある独房生活を送ってもらうぞっ! しかしながら、さすがはキョーコ=モトカードの弟子なだけはある……。30年振りに入所初日から独房へ放り込まれるのは、師弟共々と言うことかぁぁぁっ!!」
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