拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第3章:コープ=フルール

第5話:大都会

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 ロック=イートはフルール家に到着するなり、使用人としての仕事を覚える前に、まずは裏武闘会で殴り合ってこいとコープ=フルールに命じられることとなる。アンゴリア大王国に向かう道すがら、そんなことを他の従者から聞かされてはいたが、まさか長い道中を進み終わったその直後に、その機会がやってくることにはさすにがロック=イートも眼を白黒させてしまうのであった。

「ちょっと待ってほしいんですが……。それがどのような場所で執り行われて、どんなルールで戦うかもわからないのに、どうしろと言うんです?」

 ロック=イートの言いはもっともであった。知らない土地に足を踏み入れ、右も左もわからない状況だというのに、まずは闘えと言われてはたまったものではない。アンゴリア大王国は色々な人種のニンゲンが集まって構成されている国である。特に商業都市:シュマルカルデンは商人たちが集まり、その品を目当てに、人の流動は激しく、その熱にすっかりと当てられてしまったロック=イートである。もちろん、一緒に買われたセイ=レ・カンコーも同様である。2人は商業都市:シュマルカルデンに足を踏み入れると同時に、どこの田舎からやってきたのかと思わせるほどに頭を左右に振り、目に映るモノ全てに感嘆の声をあげていたのである。

 まさにザ・大都会と言っても何の差支えもないほどの都市であった、シュマルカルデンは。大通りを馬車がせわしなく行きかい、その大通りの傍らには露天商が店を構えている。そして、赤レンガ造りの家々が立ち並び、これは誰かの屋敷なのかと聞けば、庶民たちが共同で住む言わば『アパートメント』であることを告げられる。2~3階建ての赤レンガの家が何件も立ち並び、その1~2部屋ごとに別の家族たちが住んでいると聞かされて、ロック=イートたちはまたしても驚いてしまうのであった。しかも、このアパートメント地帯はそこら中にあるから、珍しくもないと言われてしまう始末だ。このことから、いったい、このシュマルカルデンには何人が住んでいるのかと推測しようとしたロック=イートたちであるが、頭が追いついていかずに計算することすら諦めてしまうのであった。

 見る物全てが目新しいことばかりで、ロック=イートとセイ=レ・カンコーが困惑してしまうのは致し方なかったことであった。そこに追い打ちをかけるようにコープ=フルールが自分の屋敷に到着するなり、思い出したかのようにロック=イートに裏武闘会に出席してもらいますと言い出したというわけである。

「なーに。ルールと言われても私にもわかりません。当日、その場に向かわなければ、その辺りの説明なんて受けれませんので。武器の使用はさすがに先んじて教えてもらえますが、勝敗をどう決めるのかなどは、私にもわかりません。ただひとつ言えるとしたら、殺し合いにまでは発展しないだろうということでしょうか?」

 コープ=フルールが屋敷の正面ドアノブに手をかけながら、ロック=イートに説明にもなってない説明をおこなう。そして、試合ではどんな格好を好むのかだけをロック=イートに尋ね、彼からカラテ着でお願いしますと受けて、うんうんと頷き、そのままドアを開いて、屋敷の中へと消えていってしまうのであった。ロック=イートたちと言えば、屋敷の中に入らずに、そのままの恰好で屋敷の脇道を通り、中庭のさらに先にある使用人たちが生活する木造平屋建てに移動させられることとなる。

 そこで使用人のおさである半犬半人ハーフ・ダ・ワンのゴーマ=タールタルに、この屋敷においての仕事と生活について説明を受けることとなる。執事らしく彼はアイロンがしっかりとかかった黒色の燕尾服に身を包み、柔らかな雰囲気と同時に威厳をその身体から醸し出していた。下手をするとコープ=フルールではなく、こちらがフルール家の家長なのでは? とさえ思わせるほどの気品正しい壮年の男性であった。

「ごほん……。旦那様から色々と説明をしておくように仰せつかっておるのじゃ。まずはロック=イートくんの序列じゃが……」

 ゴーマ=タールタルは何とも歯切れの悪い感じであった。それもそうだろう。彼が次に口から出した言葉は、彼にとっても苦々しいことであったのだ。なんと、昨日今日、この屋敷に招かれたばかりの使用人が、他の使用人を飛び越えて、いきなりコープ=フルール付きの特別待遇の従者に指名されたからである。セイ=レ・カンコーは第2下僕であり、使用人見習いからのスタートであった。何故に2人にそんな差をつけるのかの理由はゴーマ=タールタルも軽くコープ=フルールから聞かされているが、それでもすんなりと納得できることではなかった。

(こんな若造を従者に据えるのは納得いかないのじゃ。だがしかし、この屋敷内において、コープ=フルール様の言いは絶対じゃ……)

 思うことは多々あるが、ゴーマ=タールタルは不満を腹の中に飲み込むことにする。どうせ、裏武闘会で痛い目を見て、従者じゃなくて、普通に第2下僕からやり直させてくれと自分から頼み込むであろうと。ゴーマ=タールタルのロック=イートに向ける視線には明らかに侮蔑が込められていた。だが、その視線を向けられている当の本人には、彼の思惑を探っていられるほどの余裕など皆無だった。それもそうだろう。どんな場所でどのような相手とどうやって闘うかもわからない状況に放り込まれているのだ。いくら執事から訝しく思われようが、今は構っていられる心境ではなかったのである。

「ごほん……。使用人の朝は5時起床。そして、コープ=フルール様
のために働き、夜22時には就寝してもらうのじゃ。セイ=レ・カンコーはまずは雑巾掛けから覚えてもらう予定じゃ」

「へ、へい……。あっしはそれで良いですけど、ロックさんの方はどうなるんですかい?」

 セイ=レ・カンコーが了承しつつも、ロック=イートの身を案じるのであった。ここまでの道中、一週間ほどかかったが、その間、ロック=イートはまともな鍛錬も出来ずにいたからだ。それなのに三日後によくわからないところで闘えと言われている始末である。こんな状況でベストコンディションに持っていくには至難の業だ。だが、そんなことは知ったことかとばかりにゴーマ=タールタルは突き放すように言いのける。

「ロック=イートくんは、裏武闘会が近いゆえに、自主鍛錬をしてもらうことになっておるのじゃ。まあ、いきなりの話ゆえにトレーナーを雇う時間も無いのじゃがなっ!」
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