拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
28 / 122
第3章:コープ=フルール

第7話:コープの娘

しおりを挟む
 ロック=イートとセイ=レ・カンコーの2人が中庭で三日後の試合に向けて調整をおこなっている。かれこれ15分ほどミット打ちを続けていると、2人に向かって、うるさいとばかりに文句をつけに来た客人が現れたのであった。

「あんたたちっ! いったい、誰の許可をもらって、こんなところでうるさい音を立てているかしらっ!」

 いきなり文句を言われて、つい、ロック=イートたちは手を止めてしまうことになる。文句をつけてきたのは金髪碧眼の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットの小娘であった。しかしながら、真っ白な肌に、それを包み込むような桜色のワンピース。そして、汗臭くなってしまった中庭を洗い流すような可憐な秋桜コスモスのような匂いがその娘から発せられる。ロック=イートが手を止めたのは、文句を言われたからというより、その彼女の存在感に圧倒されたほうが正しいと言えるのであった。

「え、えっと……。俺たちはコープ=フルール様に三日後に試合に出てもらうって言われたから、それに向けて調整しているわけで」

「お父様? それに調整? 何を言っているのか全然、話が繋がらなくてよっ! 大体、良い大人が上半身裸で、うちの家の中庭で何しているの? って聞いてるわけ、わかる?」

 半兎半人ハーフ・ダ・ラビットの小娘がロック=イートに向かって、右腕をまっすぐ伸ばして、さらに人差し指でロック=イートを指さしてくる。ロック=イートはどうしたものかと思うわけだが、まず、この女性が誰なのかもわからない。お父様と言っている以上はコープ=フルールの娘であろうことは想像できるのだが、それでも確認は怠ってはいけないだろうと、ロック=イートはまずは名前を尋ねることとする。

「あの、すいません。俺たちのほうもよくわかってなくて。とりあえず、俺の名前はロック=イート。1週間ほど前にここのご主人であるコープ=フルール様に買われた使用人……ってところであってるのかな?」

「なんでそこで疑問符なのかしら? まあ、自分から名前を名乗るだけはまだ紳士であることは認めますわ」

 明らかに上から目線で話しかけてくる小娘に、少しだけムッとするロック=イートである。だが、ここで言い争いをしていても何も解決しないのは明白だ。だからこそ、彼は彼女に名前を教えてほしいと願い出る。彼女は、ハンッ! と鼻を鳴らす。ロック=イートはやっぱり文句をつけておくべきだったかと後悔するが、何か言う前に彼女が口を開き

「わたくしの名前はリリー=フルールですわ。コープ=フルールはわたくの父でございます。他に聞きたいことはありまして?」

 あくまでも挑発的な態度を崩さないんだなとロック=イートは思うが、自分の主人であるコープ=フルールの娘が相手なら、あまり波風立てないようにすべきだと思うことは思うのだが、鼻もちならぬ小娘に下手したてに出るのも面白くない。だからこそ、ロック=イートは一計を案じ

「はいはい、リリー=フルールお嬢様ですね。名前を教えてくれてありがとう。じゃあ、向こうに行っててくれないか? 俺たちは貴女のお父様に喜んでもらわなきゃならないんでな?」

 ロック=イートはまるで犬を追い払うかのようにグローブをつけたままの右手でシッシッ! と追い払うような仕草をする。そうされたことで、カチンと来たのか、リリー=フルールは白い頬をほんのりと紅潮させて、ガミガミと文句を言い出すのであった。ロック=イートとセイ=レ・カンコーは両手でそれぞれ狼耳と猫耳を塞ぎ、彼女の雨あられのように続く文句を聞き流そうとする。リリー=フルールの登場により、中庭が騒がしくなったために屋敷の使用人たちがどうしたとばかりに、その中庭に集まりだす。彼らが中庭に足を踏み入れると、リリー=フルール嬢が知らない男たちに向かって、躍起になって吠えたてている現場に出くわすこととなる。

「リリーお嬢様。どうかなされましたかな? ロック=イートとセイ=レ・カンコーが何か不手際をおこないましたかな?」

「ちょうど良いところに来てくれたわね、ゴーマ。彼らを中庭からだけでなく、我が家から追い出してほしいのよ」

 騒ぎが大きくなったことで、フルール家の執事であるゴーマ=タールタルまでもが中庭にやってくることになる。彼としてはフルール家に所属する料理長との打ち合わせの真っ最中であり、それを邪魔されたことで、少しばかり不機嫌であった。なんといっても、さきほどリリーお嬢様には新入りが2名ほど、屋敷に配属されたことを伝えていたはずなのにだ。その時、リリーお嬢様は読書がてらにティータイムを楽しんでいたために、多分、話半分も聞いていなかったことは容易に想像できたのである。ゴーマ=タールタルは右眼にかけている片メガネを右手でわざとらしくいじり、その後、ごほんと咳払いをする。

「この2人は旦那様にとって、貴族たちと友好を深めるための大事な駒ですじゃ。それを追い出す権限は残念ながら、それがしは持ち合わせておりませぬ」

「あっ、そう。なら、お父様に直接、頼み込みますわ。我がフルール家にこんな野蛮人共は不似合いだと主張させてもらいますわよ?」

 ロック=イートは初対面でここまで嫌われるモノかと逆に感心してしまう。ひとそれぞれに合う合わないはあるが、これはさすがにそんなことではなく、彼女から見て、自分たちのような下賤なやからとは折り合いをつける気がなさそうに感じたのである。確かに上半身真っ裸の男が両手にグローブをはめて、自分の家の中庭を占拠していたら、そう思うのは致し方ない部分はある。だが、これはコープ=フルールのためであり、しいてはそれがこの小娘のためになることくらいわからないのかと言いたい気持ちになってしまうロック=イートである。

「あのさぁ。俺たちはコープ=フルール様に命令されたからこそ、この中庭を借りているわけでだな?」

「あらそう? じゃあ、わたくしの許可も得なさいよ。確かにここはお父様の屋敷ですけど、同時にわたくしもこの屋敷の所有者なのですわよ?」

 ああ言えば、こう言うの典型とはまさにこのことであった。ロック=イートは右手にグローブをはめたまま、頭をボリボリと掻いてしまう。一体、どうすれば、自分とまともに話し合うような態度を取ってくれるのかと思案するが、良い案が思い浮かぶ前に、彼女の父親が登場することになる……。

「リリー。そこまでにしておきなさい。パパは貴女をそんな聞き分けのない娘に育てた記憶はありませんよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...