拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
31 / 122
第3章:コープ=フルール

第10話:策謀

しおりを挟む
 ロック=イートがコープ=フルールの屋敷に到着してから、三日後、コープ=フルールの言う通りに、事が運ぶこととなる。ロック=イートとそのトレーナー兼サポーターであるセイ=レ・カンコーが二頭の馬が繋げられた立派な箱馬車に乗ることになる。同席していたのは、コープ=フルールとその娘であるリリー=フルール。そして、向かい合わせの席にロック=イートとセイ=レ・カンコーが座ることとなる。

 はっきり言って、コープ=フルール親子とロック=イートたちの恰好は非常に差があった。ロック=イートたちは恥をかかない程度の格好に対して、コープ=フルールはアイロンがよくきいた黒のタキシードを羽織って、蝶ネクタイといった正装をしているし、娘のリリー=フルールは王族たちの舞踏会にでも出席するかのように麗しい紅いドレスに身を包み込んでいる。ロック=イートとしては、馬子にも衣装とはまさにこのことだなと感心せざるをえないのであった。

「ごほん。そんなに愛しの我が娘をジロジロ見ないでくれませんかね? 馬車から突き落としたい気分になりますので」

「あ……。すいません。リリー様が大変、美しく見えて」

 ロック=イートは心に思ったことをそのまま口に出してしまった。現にあのはねっかえりのリリー=フルールとは思えないほどの美しさである。白い肌を隠すかのような紅いドレスは彼女を大人の女性レディに仕立て上げている。ニンゲン、着るものが変われば、ここまで印象が変わるモノかと思い知らされるロック=イートであった。しかし、褒められた側のリリー=フルールは唇をアヒルのくちばしのようにしている。

「わたくしは元々、美しいのっ。それこそ、このシュマルカルデン一番の美人と噂されているほどよ?」

 リリー=フルールがそうつっけんどんな態度と共に手厳しく言いのけるので、言われた側のロック=イートとしては、たはは……と零す他いたしかたなかった。黙ってれば、文句なしの美人であるのに、何故に口を開けば、ここまで毒を含んだ言い方が出来るモノかと呆れを通り越して、感心せざるをえないロック=イートである。そんな彼が隣に座るセイ=レ・カンコーに助け舟を出してもらおうと目配せするのだが、セイ=レ・カンコーは眼を閉じ、胸の前で腕組をし、寝たふりを敢行し始めたのである。

(セイさんめっ! 面倒事に巻き込まれたくないからって、狸寝入りしてやがるっ!)

 ロック=イートが一発、セイ=レ・カンコーを右のこぶしで小突いてやろうかとさえ思うが、セイ=レ・カンコーはもう食べれないですぜ~とわざとらしい寝言を言い出す始末であった。後で覚えていろよと思いつつ、逃げ場の無い箱馬車の中で、嫌に上機嫌に鼻歌を鳴らすコープ=フルールの相手をするしかなくなったロック=イートであった。

「ふんふんっ。あ~、裏武闘会に出席するのは、いつぶりでしょうか。血沸き肉躍る男たちの闘いは観ているだけで、こちらも興奮します」

「お父様。たった2カ月前にも貴族のご招待を受けて、行ってきたばかりでしょ? わたくしは血生臭いことは嫌なのですわ」

 2人の会話からロック=イートは、コープ=フルールが今回初めて、裏武闘会とやらに出席するわけではないことを今頃になって知ることになる。なんせ、何の情報も与えてくれないのだ。自分のご主人様は。この三日間、コープ=フルールがちらちらと屋敷の中庭の方を視察していたのは、ロック=イートも感づいていた。だが、彼がロック=イートに声をかけてくることは一切無かった。屋敷内でロック=イートが彼に出くわした折りに、どんな感じの武闘会なのでしょうか? と尋ねたこともある。だが、問われておきながら、安心シテクダサイと片言の返事を繰り返すのみである。これで不安にならないニンゲンがいるなら、そいつの胸をナイフで切り開いて、心臓にタワシのような毛が生えているのかを確認したくなるくらいだ。

「あの……。いい加減、話してくれますよね? 俺が出場することになっている裏武闘会がどういうことをする場所なのかを」

 コープ=フルールとその娘であるリリー=フルールが談笑しあっているところに割り込みを入れるのは悪いと思いつつも、馬車が揺れるたびに、ロック=イートの不安感も増してきていた。そして、ついに耐えかねて、ロック=イートは失礼を承知で2人の間に割って入ることなる。

「う~~~ん。そんな捨てられた子犬のような眼で、私に訴えかけられましてもねえ……?」

 ロック=イートは意識しているわけでは無いが、不安感で自分の顔が情けないモノになってしまったのかと、両手で頬を撫で上げる。確かに、頬の筋肉が知らずしらずに強張っていたことに気づくのであった。そんな挙動不審のロック=イートに対して、リリー=フルールがため息交じりに助け舟を出すことになる。

「お父様は本当に意地悪なのよ。そんな困った顔で頼むと余計にからかわれましてよ? 三日前にお父様に毅然な態度を取った時のことを思い出してみましては?」

「ははっ! それは逆効果にもなるので、お勧めできませんねっ! 私は相手が強気でも弱気でも、痛めつけてやろうと思う時にはとことんやる男ですからねっ!」

 嬉しそうにそう言うコープ=フルールに対して、リリー=フルールは辟易とした顔つきになってしまう。何故にこんな底意地の悪い父親の下に育って、自分はひねくれ曲がった性格にならなかったのかが不思議でたまらないのである。彼女と同様にロック=イートもまた、このひとはどこまでいっても喰えぬヒトなんだなとげんなりとした顔つきであった。リリー=フルールとロック=イートは眼が合うと同時に、2人揃ってハァァァとため息をつくしかなかった。

「まあ、2人をからかうのはさておいて、実のところ、私にもロック=イートくんの相手がどんなヒトなのか、わからないんですよ」

「それって、どういうことです? コープ様も何も知らされていないんです?」

 コープ=フルールはやれやれと嘆息し、大袈裟に両腕を広げてみせる。彼が言うには、貴族たちが裏武闘会の主催であり、自分はあくまでも招かれている立場であることを。そして、武器の使用についてはさすがに事前に教えてもらえるようだ。こちらが剣における腕利き自慢を用意したというのに、素手で闘えとか後で言われたりしないためにも、そういったことだけは事前通達だったと。しかし、相手がニンゲンなのか魔物モンスターなのかまではわからないそうだ。

「あと、相手の人数とこちらの人数をどうするかの取り決めくらいでしょうかね? いやあ、困りました。こちらはロック=イートくんひとりだと言うのに、ロックくんが東の果てイースト・エンドでも手が付けられない囚人だっと自慢したら、あちらは3人も準備するって言い出しましたよっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...