拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
96 / 122
第10章:神槍

第5話:反撃の狼煙

しおりを挟む
 ロック=イートは非難が込められた視線を送られていたが、それを無視する形で神槍:ブリトニー=ノーガゥの顔面に右のこぶしをめり込ませる。ロック=イートのパンチにより、孔雀の尾羽が取り付けられた兜が宙を舞うこととなる。そして神槍:ブリトニー=ノーガゥは石畳の上に二本の線を描きながら、後ろへ飛ばされることとなる。

 神槍:ブリトニー=ノーガゥが強固な兜を被っていなければ、それで試合は決まっていたかもしれない。彼は未だにその両足で石畳の上に立っていた。ベッ! と口から血の色をした唾を吐き、聖槍:ロンギヌスをグルングルンと両手で回し始める。ロック=イートが先祖返りジュウジンモードを発動した以上、彼がロック=イートに手加減する必要性など、どこにも存在しないのであった。

 ロック=イートはウオオオンッ! と力強く吼える。そして、筋肉が肥大化し毛むくじゃらとなった左腕を下から上へとかち上げる。だが、ロック=イートの左のアッパーは神槍:ブリトニー=ノーガゥが時計回りに高速に回す槍の動きに防がれる形となる。それでもロック=イートは攻撃を止めずに、次は右のフックをかます。それもブリトニー=ノーガゥが持つ槍に弾かれる。

 ならばとロック=イートは回転の中心部に左のストレートをお見舞いする。円運動は内から外に向かってエネルギーが発散されていくモノであり、その中心部が一番弱い。そこを突く形を取るロック=イートであった。そして、ロック=イートの予想通り、左のストレートが回転の中心にぶち当たるや否や、神槍:ブリトニー=ノーガゥはクッ! と苦痛の声をあげて、槍の回転を止めてしまうのであった。

 槍の回転が止まるや否や、ロック=イートは両腕を交互に前へと押し出し、その先にあるこぶしを次々と神槍:ブリトニー=ノーガゥの身体にぶち当てる。彼は未だに頭に受けた衝撃が抜けきっていなく、その場から動けずじまいであった。出来ることと言えば、槍を左右前後に動かし、ロック=イートの連打を少しでもまともに喰らわぬことであった。最小限の動きで最大限の効果を発揮させることに注力する神槍:ブリトニー=ノーガゥである。

 だが、それでも彼は被弾は免れない。ロック=イートは左右の連打の回転を段々と上げていたからだ。捌ききれぬと察した神槍:ブリトニー=ノーガゥであるが、それでもその場から動けないのはやはり頭部へのダメージが大きかったからである。それゆえに彼は選んだ。被弾するのを覚悟で槍を振り上げたのだ。がら空きとなった胴部分にロック=イートが立て続けにこぶしを叩きつける。神槍:ブリトニー=ノーガゥは身体が軋み悲鳴を上げるが、その声を無視して振り上げた槍をロック=イートの左肩に叩きつける。

 ロック=イートはグアアアッ! と苦痛の声を上げると同時に右腕で左肩を抑える。左腕は骨という支えを失い、ブランブランとぶら下がる形となる。神槍:ブリトニー=ノーガゥはロック=イートとの賭けに勝つこととなる。槍の柄が深々とロック=イートの左肩にぶち当たることで、彼の肩の骨を折ってみせたのである。先祖返りジュウジンモードを発揮した者の身体をここまで痛めつけるだけの膂力を発揮しただけでも、さすがは神槍と呼ばれることはあると言えよう。

 ロック=イートは攻撃を無理やり止められたことにギリギリと歯ぎしりする他無かった。ズキンズキンと激しく痛む左肩を右手で抑え、回復に努めようとする。先祖返りジュウジンモード状態では回復力が通常の10倍に跳ね上がるため、1分も経てば骨が折れたとしても繋がることは繋がる。しかし、その1分間を与えるほど、神槍:ブリトニー=ノーガゥも甘くなかった。

 神槍:ブリトニー=ノーガゥは槍を上下左右に大きく振り回し、ロック=イートの右脇腹、ぶら下がっている左腕、そして今度は右肩へ槍の柄をぶち込んでいく。ロック=イートは右腕で左肩を抑える姿勢となっているために、まともに彼の攻撃を捌くことなど出来ないでいた。ならばとばかりにロック=イートは左肩をかばうのをやめる。そして回復に努めることすらやめてしまう。今やるべきことが何かをはっきりと決めたのである。

 それは神槍:ブリトニー=ノーガゥを倒すことであった。だからこそ、自分の体内で巡る魔力の全てを攻撃をするための力へと変換する。

「ロケット・疾風!!」

 ロック=イートは両足に魔力を集中させて、左右へじぐざぐに動く。聖槍:ロンギヌスを振り回す神槍:ブリトニー=ノーガゥに接近するために回復力を突進力に変えたのである。その動きは神槍:ブリトニー=ノーガゥですら全てを捉えきれるモノではなかった。右にロック=イートが見えたと思った次の瞬間には彼は左へと移動していた。しかも、残像を残しつつだ。その残像が眼に焼き付き、ますます神槍:ブリトニー=ノーガゥはロック=イートの位置を把握できないでいた。

 だが、ロック=イートの動きに翻弄される彼であるが、結局のところ、ロック=イートが攻撃を繰り出してくるのは自分の前方からであることは間違いないと踏む。どこまでも真っ直ぐなロック=イートの性格ゆえにそうなることは百も承知であった。そのため、神槍:ブリトニー=ノーガゥは腰を落とし、槍を基本の構えで持ち直し、ロック=イートの動きに惑わされぬように努めたのだ。

「ロケット・パーーーンチッッッ!!」

 ロック=イートは聖槍:ブリトニー=ノーガゥから見て、やや左側から必殺のロケット・パンチを放とうとする。ロック=イートはここでひとつの間違いを犯していたことに気づいていなかった。左右にジグザグに動いたためにロケット・パンチを放つまでに若干のタイムラグを生じさせていたのである。そこを見逃すほど神槍:ブリトニー=ノーガゥは甘くはなかった。

 彼は槍の穂先をそっと押し出すようにロック=イートの左胸にあてがう。それはロック=イートが自分の推進力で自分の心臓を差し出す恰好となってしまう。神槍:ブリトニー=ノーガゥはこの直前までロック=イートの命を奪わないように細心の注意を払ってきた。だが、事ここに至り、ルールを護ることで自分が試合に負けてしまうことを忌避したのである。彼が槍の穂先をセットしたところにロック=イートは勢いを止めることが出来ずに突っ込む形となる。聖槍:ロンギヌスの先端はロック=イートの心臓へ吸い込まれていく……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...