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第14章;レオのかつての親友
第1話:解き放たれる暴力
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――北ラメリア大陸歴1495年3月7日 バージニア王国とミシガン王国の国境線にて――
レオナルト=ヴィッダーたちはこの日の昼に差し掛かろうという時に襲撃を受ける。コボルト、小鬼、大鬼合わせて100匹にも及ぶ軍団が一斉にレオナルト=ヴィッダーたちに牙を剥く、
「リリベル、この戦況を打開するでッチュウ! エクレア、デーブ、荷馬車を護るでッチュウ!」
戦闘の指揮を執るコッシロー=ネヅは普段の冷静さを欠いていた。商隊を襲うには多すぎる魔物の群れが忽然とどこからともなく現れたことに、切歯扼腕となるコッシロー=ネヅであった。彼はギリギリとネズミ歯を噛みしめ、徐々に戦線が後退していくのを黙って見ているしかなかった。
リリベル=ユーリィとエクレア=シューは力尽き、片膝をついて、はあはあと肩で息をしていた。レオナルト=ヴィッダーたちのメイン戦力であるふたりがその状態であることは、イコール、デーブ=オクボーン、クルス=サンティーモ、マリア=アコナイトはとっくの昔に地に伏している。
「皆、下がってろっ! 俺が何とかするっ!! 素戔嗚、俺の全てを持っていきやがれっ!!」
「駄目っ! レオ、あなたは大人しくしててっ!!」
「うるせえ、リリベル! がたがた抜かす余裕があるなら、クルスとマリアを避難させろっ! 俺が俺でいられるうちにっ!!」
コボルト、小鬼、大鬼は3小隊を組み、波状攻撃をレオナルト=ヴィッダーたちに繰り返していた。第1波、第2波を押し返したが、つづく第3波で、レオナルト=ヴィッダーたちは壊滅寸前にまで追いやられる。レオナルト=ヴィッダーは次々と倒れていく仲間をその眼で見ていることしかできなかった。
ついにレオナルト=ヴィッダーは素戔嗚に自分の全てを捧げる覚悟を決める。彼の左の腕先に食い込んでいる紅い波模様が走る黒を基調とした手甲が歓喜の雄叫びを上げる。
それと同時に、レオナルト=ヴィッダーが装着していた黒を基調とした部分鎧が素戔嗚と共鳴しだす。部分鎧はパーツを増やし、レオナルト=ヴィッダーは全身鎧を全身に装着するに至る。部分鎧から全身鎧に進化したその鎧の変化はそれだけにとどまらない。
素戔嗚の表面に走る紅い波模様が全身鎧にまで伝染しはじめる。レオナルト=ヴィッダーの身体を包む黒の全身鎧全体に血管が走っているかのように緋の色が縦横無尽に駆け巡る。
ついには、レオナルト=ヴィッダーの頭部を覆う、獣の頭を模したような兜にまでその緋色が到達し、彼の姿を見る者にはレオナルト=ヴィッダーが血の涙を流しているかのように映る。
「うおぉぉぉんんん!!」
レオナルト=ヴィッダーは吼えた。まるで野や山を駆ける猛獣のようにだ。いや、レオナルト=ヴィッダー自身が吼えたのではない。一個の獣と化した全身鎧が震え、空気を振動させて、吼え声と成ったのだ。レオナルト=ヴィッダーは獣のように4本足で草地を蹴り、コボルト、小鬼、大鬼の群れの中心へと駆けていく。
右手の先まで金属製の塊に包まれたソレがコボルトの頭を粉砕する。膝蹴りが小鬼の腹に突き刺さると、小鬼の背中側から背中の筋肉を突き破って、内蔵が外側へと爆ぜる。レオナルト=ヴィッダーの左手は大鬼の頭の右側を掴むと、グリンッ! と捻じ曲げて、大鬼の丸太のように太い首の骨をねじ切ってしまう。
時間として、1分も経たぬうちに、黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーはコボルト、小鬼、大鬼の1小隊を壊滅させてしまう。一瞬のうちに、保有する戦力の3分の1を失えば、魔物の群れと言えども、恐慌状態に陥るはずであった。
しかし、コボルト、小鬼、大鬼の3小隊は最初から正気を失っていたかのように、レオナルト=ヴィッダーたちを襲ったのだ。魔物の群れは黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーに肉塊にされようが、レオナルト=ヴィッダーの身に向かって、その手に持つ武器を打ち下ろす。
レオナルト=ヴィッダーは大鬼が持つ大木のような棍棒で、強くその身を打ち払われてしまう。地面で数度、バウンドしながらも、すぐに体勢を整え直し、自分の身に攻撃してきた大鬼の首元に黒い狼歯を突き立てる。
レオナルト=ヴィッダーが戦えば、戦うほど、彼の身を包む黒い全身鎧は形状を変化させていた。全身鎧のあちらこちらから、鋭い刃が飛び出す。竜の全身を覆う硬い鱗が逆立ち、そのまま鋭い刃になっているかのようでもあった。
レオナルト=ヴィッダーが前方へと跳躍しつつ、縦方向へ三十重回転する。それと同時に、レオナルト=ヴィッダーの身を包む黒い全身鎧の表面に生えていた鋭い刃が魔物の群れへとすっ飛んでいく。短剣の雨あられに晒された魔物の大軍はその身を散々に切り刻まれることとなる。
レオナルト=ヴィッダーの身体から飛ばされてきた短剣の雨あられを喰らい、魔物の群れは足を止めるしかなかった。そして、足を止めた魔物の群れに対して、レオナルト=ヴィッダーは身体を右から左へと横に三十重回転する。
レオナルト=ヴィッダーの尻にはいつの間にか、二本の尻尾が生えていた。ネコのようにしなやかに動くその尻尾は鋭い刃が連続で繋がって出来ていた。刃の鞭が魔物たちの身体を上半身と下半身のふたつに分断する。この攻撃によって、魔物の群れはさらに3分の1の戦力を失う。残り30体ほどとなったコボルト、小鬼、大鬼の混成部隊は、それでも、レオナルト=ヴィッダーを襲うことを止めない。
(チュッチュッチュ。これは明らかに魔物を指揮している存在が居るでッチュウ。ここまでの道中、どう考えても、ぼくたちは魔物に眼をつけられすぎでッチュウ)
コッシロー=ネヅは幌付き荷馬車の幌の上で、エクレア=シューに代わり、魔術障壁を展開していた。それと同時に戦場の隅々を観察していた。コッシロー=ネヅは自分たちに魔物をけしかける存在を探すために、カラシ色の双眸で戦場を睨みつけていた……。
レオナルト=ヴィッダーたちはこの日の昼に差し掛かろうという時に襲撃を受ける。コボルト、小鬼、大鬼合わせて100匹にも及ぶ軍団が一斉にレオナルト=ヴィッダーたちに牙を剥く、
「リリベル、この戦況を打開するでッチュウ! エクレア、デーブ、荷馬車を護るでッチュウ!」
戦闘の指揮を執るコッシロー=ネヅは普段の冷静さを欠いていた。商隊を襲うには多すぎる魔物の群れが忽然とどこからともなく現れたことに、切歯扼腕となるコッシロー=ネヅであった。彼はギリギリとネズミ歯を噛みしめ、徐々に戦線が後退していくのを黙って見ているしかなかった。
リリベル=ユーリィとエクレア=シューは力尽き、片膝をついて、はあはあと肩で息をしていた。レオナルト=ヴィッダーたちのメイン戦力であるふたりがその状態であることは、イコール、デーブ=オクボーン、クルス=サンティーモ、マリア=アコナイトはとっくの昔に地に伏している。
「皆、下がってろっ! 俺が何とかするっ!! 素戔嗚、俺の全てを持っていきやがれっ!!」
「駄目っ! レオ、あなたは大人しくしててっ!!」
「うるせえ、リリベル! がたがた抜かす余裕があるなら、クルスとマリアを避難させろっ! 俺が俺でいられるうちにっ!!」
コボルト、小鬼、大鬼は3小隊を組み、波状攻撃をレオナルト=ヴィッダーたちに繰り返していた。第1波、第2波を押し返したが、つづく第3波で、レオナルト=ヴィッダーたちは壊滅寸前にまで追いやられる。レオナルト=ヴィッダーは次々と倒れていく仲間をその眼で見ていることしかできなかった。
ついにレオナルト=ヴィッダーは素戔嗚に自分の全てを捧げる覚悟を決める。彼の左の腕先に食い込んでいる紅い波模様が走る黒を基調とした手甲が歓喜の雄叫びを上げる。
それと同時に、レオナルト=ヴィッダーが装着していた黒を基調とした部分鎧が素戔嗚と共鳴しだす。部分鎧はパーツを増やし、レオナルト=ヴィッダーは全身鎧を全身に装着するに至る。部分鎧から全身鎧に進化したその鎧の変化はそれだけにとどまらない。
素戔嗚の表面に走る紅い波模様が全身鎧にまで伝染しはじめる。レオナルト=ヴィッダーの身体を包む黒の全身鎧全体に血管が走っているかのように緋の色が縦横無尽に駆け巡る。
ついには、レオナルト=ヴィッダーの頭部を覆う、獣の頭を模したような兜にまでその緋色が到達し、彼の姿を見る者にはレオナルト=ヴィッダーが血の涙を流しているかのように映る。
「うおぉぉぉんんん!!」
レオナルト=ヴィッダーは吼えた。まるで野や山を駆ける猛獣のようにだ。いや、レオナルト=ヴィッダー自身が吼えたのではない。一個の獣と化した全身鎧が震え、空気を振動させて、吼え声と成ったのだ。レオナルト=ヴィッダーは獣のように4本足で草地を蹴り、コボルト、小鬼、大鬼の群れの中心へと駆けていく。
右手の先まで金属製の塊に包まれたソレがコボルトの頭を粉砕する。膝蹴りが小鬼の腹に突き刺さると、小鬼の背中側から背中の筋肉を突き破って、内蔵が外側へと爆ぜる。レオナルト=ヴィッダーの左手は大鬼の頭の右側を掴むと、グリンッ! と捻じ曲げて、大鬼の丸太のように太い首の骨をねじ切ってしまう。
時間として、1分も経たぬうちに、黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーはコボルト、小鬼、大鬼の1小隊を壊滅させてしまう。一瞬のうちに、保有する戦力の3分の1を失えば、魔物の群れと言えども、恐慌状態に陥るはずであった。
しかし、コボルト、小鬼、大鬼の3小隊は最初から正気を失っていたかのように、レオナルト=ヴィッダーたちを襲ったのだ。魔物の群れは黒い獣と化したレオナルト=ヴィッダーに肉塊にされようが、レオナルト=ヴィッダーの身に向かって、その手に持つ武器を打ち下ろす。
レオナルト=ヴィッダーは大鬼が持つ大木のような棍棒で、強くその身を打ち払われてしまう。地面で数度、バウンドしながらも、すぐに体勢を整え直し、自分の身に攻撃してきた大鬼の首元に黒い狼歯を突き立てる。
レオナルト=ヴィッダーが戦えば、戦うほど、彼の身を包む黒い全身鎧は形状を変化させていた。全身鎧のあちらこちらから、鋭い刃が飛び出す。竜の全身を覆う硬い鱗が逆立ち、そのまま鋭い刃になっているかのようでもあった。
レオナルト=ヴィッダーが前方へと跳躍しつつ、縦方向へ三十重回転する。それと同時に、レオナルト=ヴィッダーの身を包む黒い全身鎧の表面に生えていた鋭い刃が魔物の群れへとすっ飛んでいく。短剣の雨あられに晒された魔物の大軍はその身を散々に切り刻まれることとなる。
レオナルト=ヴィッダーの身体から飛ばされてきた短剣の雨あられを喰らい、魔物の群れは足を止めるしかなかった。そして、足を止めた魔物の群れに対して、レオナルト=ヴィッダーは身体を右から左へと横に三十重回転する。
レオナルト=ヴィッダーの尻にはいつの間にか、二本の尻尾が生えていた。ネコのようにしなやかに動くその尻尾は鋭い刃が連続で繋がって出来ていた。刃の鞭が魔物たちの身体を上半身と下半身のふたつに分断する。この攻撃によって、魔物の群れはさらに3分の1の戦力を失う。残り30体ほどとなったコボルト、小鬼、大鬼の混成部隊は、それでも、レオナルト=ヴィッダーを襲うことを止めない。
(チュッチュッチュ。これは明らかに魔物を指揮している存在が居るでッチュウ。ここまでの道中、どう考えても、ぼくたちは魔物に眼をつけられすぎでッチュウ)
コッシロー=ネヅは幌付き荷馬車の幌の上で、エクレア=シューに代わり、魔術障壁を展開していた。それと同時に戦場の隅々を観察していた。コッシロー=ネヅは自分たちに魔物をけしかける存在を探すために、カラシ色の双眸で戦場を睨みつけていた……。
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