【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第17章:襲来

第1話:SMに目覚めるレオン

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――北ラメリア大陸歴1495年3月25日 ミシガン王国:首都:ジカーゴにて――

 レオナルト=ヴィッダー一行は五大湖での舟遊びを終えた後、ジカーゴの観光区画近くにある安宿に入る。この安宿は元々、SM用の愛し合う宿アイラブユー・ホテルを改装したものである。近年、アブノーマルプレイを好む客がめっきりと減り、SM用の愛し合う宿アイラブユー・ホテルの大家が泣く泣く、普通の宿として経営する運びとなった。

 しかしながら、大家の奥さんは久方ぶりにアブノーマルプレイに勤しむレオナルト=ヴィッダーたちを気に入り、蔵に押し込んでしまったSM用の大人のおもちゃをレオナルト=ヴィッダーに貸し出すこととなる。

「わたしゃの若い頃はそりゃ旦那が毎晩のように鞭とろうそくで楽しんでくれてねぇ。ほら、リリベルちゃん。火傷しない程度の温度の蝋がたれるろうそくと、ゴム製のロープ。ろうそくが足りなくなったら、また遠慮なく言ってちょうだいね?」

「は、はい……。レオがここまで変態だって思ってなくて、ろうそくをがんがん消費して申し訳ないとおもってます……」

 リリベル=ユーリィは大家の奥さんであるオレンジ=フォゲットに案内され、安宿の裏庭にある蔵の中に招き入れられていた。そこにはリリベル=ユーリィが頭の中にハテナマークをこれほどかと言わしめるばかりに浮かび上がってしまう用途不明の謎の器具が木箱の中に入っていた。

 あからさまに拘束具とわかるモノや木製のおちんこさんの形をしたモノが何のためにこの世に存在しているかは、それとなくわかる。だが、赤い穴だらけのボールに革ベルトがついているモノを始めとして、他のモノについては、皆目、使用方法がわからなかった。

「ああ、これらかい? まあ、まだ経験値の浅いリリベルちゃんには、お勧めできないわね。まずは縄の縛り方から勉強することよ。今はまだゴム製だし、麻製でも怪我をしないくらいにレベルアップしたら教えるわ」

 SMプレイの初心者が縛りプレイをする際に気をつけなければならないことは、縄の締め加減と締めている時間の徹底管理である。SMプレイとはSがMを傷つける行為と思われがちだが、それは間違いだとはっきり言っておこう。ノーマルプレイでも、アブノーマルプレイでも『愛』が全てなのだ。

 愛の無い行為はノーマルプレイでもアブノーマルプレイでも、相手をいたずらに傷つけるだけの行為と化してしまう。もちろん、相手を一方的に痛めつけ、血だるまにするのを好む『獣』のような性癖持ちも世の中には存在する。しかしながら、それはさすがに猟奇的と断言せねばならないだろう。

 恋人同士がSMプレイをする際は、お互いに『愛』をもってして望むこと。これが基本であり、ここから逸脱してはいけないと、大家の奥さんであるオレンジ=フォゲットが口酸っぱくリリベル=ユーリィに言うのであった。

「痛い! って相手が叫んだら、それがいやよいやよも好きの内なのか、本気で痛がっているのかを敏感に察知するのよ? それが自然とわかるようになったら、女王様と名乗っていいわ」

「オレンジ=フォゲットさんには頭が下がる一方です。わたしは高見を目指してみようと思います」

 リリベル=ユーリィはSMプレイについて親切丁寧に教えてくれるオレンジ=フォゲットに対して、礼儀正しくお辞儀をする。オレンジ=フォゲットはそんな彼女に革製のボンテ―ジを渡したくてうずうずしてしまう。

(だめだめ。アレは呪物ですもの……。今のレベルのリリベルちゃんじゃ、飲み込まれてしまうわ……)

 大家の奥さんであるオレンジ=フォゲットはリリベル=ユーリィに多大な期待を抱いていたが、まだ、彼女にアレを手渡すのは時期尚早だと考えた。最低でも1年、M役のレオナルト=ヴィッダーくんを調教してから渡すのが筋であろうと考え、思いとどまる。

「じゃあ、続きを楽しんでらっしゃい。昼食の準備はこちらに任せてもらうわね?」

「何から何までありがとうございます。わたしはレオの鞭であり、ろうそくの蝋になりたい」

「ふふっ。じっくりよ。じっくりことこと調理するの。豚肉のブロックをとろとろの煮込みにするように慌てずに。『女王様への道は一日にしてならず』。これをゆめゆめ忘れてはダメよ?」

 若者は結果を求めしがいがちだ。時間がかかるのを嫌う。しかしながら、世の中の真理はそうではない。たゆまぬ努力を積み重ねることで、才能が花開くのだ。確かにヒトにはそれぞれに才能を持ち合わせ、その才能にも高低といった質の問題はある。しかし、質がどれだけ高かろうが、『努力』をしなければ、それは花開くことは無い。そして、才能の質如何に関わらず、『努力にかけた時間』の差で結果が大きく変わるのだ。

 大家の奥さんは願わくば、リリベルりゃんがレオナルトくんを立派な従者に仕立てあげることを願った……。それが叶わぬ夢だとしてもだ。

(リリベルちゃんには確かに才能がある。でも、リリベルちゃんのライバルであるクルスちゃんは天才だわ……。いくらリリベルちゃんを贔屓目で見ていても、クルスちゃんには勝てないかもしれないわ……)

 オレンジ=フォゲットは長年の経験で、女性の身長、体重、肉付き、そして、身体から発する匂いで、その女性がどれほどの『女王様としての才能』を持ち合わせているのかを知ることが出来るようになっていた。

 エクレア=シューはAランク。マリア=アコナイトはCランク。そして、リリベル=ユーリィはSランクになれる潜在能力を秘めていることがわかっている。しかし、これはあくまでも、将来的なランクである。

 そして、オレンジ=フォゲットが天才だと思っているクルス=サンティーモは、現時点でSランクなのだ。潜在的にSランクに達するであろうリリベル=ユーリィとは天と地の差が開いていた。しかし、それでもオレンジ=フォゲットはリリベル=ユーリィの応援をしたくてたまらなかった。

(リリベルちゃんからは『愛』を感じるの。クルスちゃんもレオナルトくんを愛しているわ。でも、リリベルちゃんからは自分の身を地獄の炎で焼いてしまいかねない情念を感じるの。SMは極めれば極めるほど、地獄行き。同じ地獄なら、リリベルちゃんにも勝機があるはずよ……)

 火傷しない程度の蝋をたらせるろうそくが敷き詰められた木箱をよっこさせと持ち上げ、宿屋の中へ戻っていくリリベル=ユーリィの背中を見ながら、オレンジ=フォゲットはそう思ってしまう。彼女を見ていると、若い頃の自分と重ねてしまうオレンジ=フォゲットである。

 今夜は久方ぶりに旦那にギャグボールを咥えさせ、亀甲縛りからの天井釣りをしようと思ってしまうオレンジ=フォゲットである。彼女は今年で齢42。女の情念が最も高まる年代である。オレンジ=フォゲットはリリベル=ユーリィの姿が見えなくなった後、蔵の中へ戻り、旦那を愛するための道具を選び始める……。
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