悪役令嬢の兄

第一章 出会い

妹と仲良くなった

  俺はどうやったらシルビアがちゃんと支度するかを考えた。

「お嬢様！そんな我儘を言わないで下さいませ！すぐに終わりますから！」

「やだ！にいしゃまもいっしょ！」

「お嬢様～！」

  このように一緒がいいの一点張りだ。俺としては一緒にいてもいいが流石に着替えまで一緒というのは遠慮したいし、今後の事も考えるとやめておいた方がいい。

「シルビア」

「なぁに？にいしゃま」

「俺は我儘を言う子は嫌いだな」

「えっ？」

  そう言って驚いたあと見る見るうちに目に涙が溜まってきた。

「や、やだ！にいしゃま、きらいにならないで！」

  シルビアは俺の服を掴むと懇願するような眼差しを向けてきた。

「じゃあ、シルビア。兄様の言う事聞いてくれるか？」

「うん！きく！きくから！」

  シルビアをよしよしと優しく撫でながら俺は口を開く。

「なら、ルーザのいうことを聞いてちゃんと支度をする事！俺は部屋の外で待ってる。お前が出てくるまでちゃんと待っていてやるから、早く支度をしておいで？」

  そう優しく問うとシルビアはこくっと頷きルーザの元へ行った。

  なので俺はそっと部屋から出るとそこにはルーズベルトがいた。そしてありがとうございますと頭を下げてきたのだ。何の事か分からず首をかしげているとルーズベルトは言った。

「シルビア様は自分の元に全く訪れないリン様が自分の事を嫌いだから来ないんだと思い、塞ぎ込むような形になっていたのです。ルーザや他の者達もその事を心配していたのですが、しかし、今日リン様がシルビア様の元を訪れてくださった事で解決致しましたので」

  それを聞いた俺は、今までの自分に悪態をつく。なぜ会わなかったんだと。まあそれを言っても仕方が無いのですぐにやめるが。

「それはお前が感謝することではない。そもそも俺がシルビアに会いに行かなかったことが原因なんだ。まあでも、シルビアがあんな風に俺のことを思っていたのは予想外だったが」

「最近になってよくメイドに自分はリン様に嫌われているのではと相談なさっていたのです。ですが、私達からリン様にシルビア様に会いに行けなどと進言することは不敬に当たりますので、困っていたところなんです」

  不敬、か。自分が公爵の息子という自覚が足りないかもな。ここで、自分には何でも言ってほしいと許可を出す事は可能だが、公爵としてそれはいただけないものだろう。だが、ある程度、親切にする程度ならば好印象となるし、何より俺がそれがいいのだ。

「そうだったのか。話してくれてありがとう。次からは周りにも目を配って気をつけるようにするよ」

「感謝される謂れはありません。公爵として、周りに目を配るのは良いことです。精進してくださいませ」

「ああ」

  そう言って微笑み一礼するとルーズベルトは去っていった。  

  それから間もなくして支度が整ったシルビアが部屋から出てくる。髪は梳かして綺麗にし、服は淡い緑色のリボンのついた服だ。シルビアの目の色と合わせていてとても似合っている。

  そうしてじっとシルビアを見つめているとその視線に耐えられなくなったシルビアが不安そうな顔をして口を開いた。

「その、にいしゃま。わたち、にあってましぇんか？かわいくないでしゅか？」

  どうやら俺が無言で見つめていた為悪い方向に考えたようだ。誤解を解くために正直に言う。

「いや、とても可愛いよ。シルビアの目の色と合わせたそのドレスが似合っていて、少し見惚れてただけだよ。だからそんな不安そうな顔をしないで？」

  優しく言葉とともに頭を撫でてやると可愛らしく頬を染め、嬉しそうに笑った。