悪役令嬢の兄

宵霧月

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第一章 出会い

緑の精霊

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『お前の魂に惹かれたんだ』

「は?」

  思わず阿呆な声をあげてしまった。魂に惹かれる?どういう事だ?

『その様子だと全然ピンと来ていないという感じだな』

  くつくつと喉の奥で笑いながら目の前の精霊は言う。

『お前の魂はとても美しかったんだ。透き通るような清らかさだった。これでも万単位で生きているが、ここまで美しい魂は見たことが無かったんだ。だから、どんな奴の魂なのか一目見ようとここまで来た。普通の人間なら殆どの場合、俺の声になんて反応しない。だが、お前ならと思ったんだ。だから声をかけた。声が届いて良かった』

「そう、なのか」

  どうやら、俺はこの精霊に気に入られたらしい。精霊に気に入られるというのはとても名誉な事だ。契約できる確率も一気に上がる。だが、俺は正直ファンタジーな存在に会えたことで結構満足していた。だがそこで、ふと、ある可能性を思いつく。

「癒しの力とは、万能なものなのか?それか、病気の知識があるか?」

『それはわからない。だが今までの病気は全て治せたし、どんな病気かも一目見れば分かる』

  ならば、この精霊に頼めば母の病気が治せるのではないか?治せなくとも原因を突き止めることが出来るのではないか?などと考えを巡らせていると、それにしてもと精霊が珍しそうにこちらを見ながら口を開く。

『大抵の人間は私と契約がしたいという欲望が少なくともあるが、お前はないな。いつもなら打算に塗れた言葉をかけられるというのに』

  ああ、そういう事か。確かに精霊と契約してみたいという気持ちはある。だが、他人に自分の欲求を押し付けるつもりはなかったし、それに精霊と会えるという事の方がインパクトが強すぎてそこまで考えていなかった。

「それは多分、俺がそこまで精霊と契約する事の重大さを分かっていないからではないか?まあ、分かっていたとしても自分の欲求を他人に押し付けるつもりは無かったし、俺にそこまでの価値があるとは思えないからな」

『へえ・・・。気に入った。お前と契約してやるよ』

  ん?今なんて言った?幻聴か?というかーーーーー

「そんな簡単に契約してしまっていいのか?俺がこういう事を演技でするヤツで、お前を利用する事しか考えてないかもしれないぞ?」

『それは、俺の見る目が無かったって事だろ?それくらいの覚悟はある。それに、出会い頭から俺とタメで話す奴なんてお前が初めてだからな』

  だから、契約すると・・・全然考えを変えなそうな精霊を説得することを諦めた俺は精霊と契約することを決めた。

『名前をつけてくれ。それで契約は成立する』

「わかった」

  俺は契約の仕方を知らなかったので本人に聞くと名前をつける事だという。さて、どんな名前がいいだろうか・・・
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