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第一章:大英雄の産声《ルクス・ゲネシス》
エピローグ
しおりを挟む吐息も凍らす大地に、彼らは立てり。
氷上の城。空を穿つ三つ巨塔。
全て弾き壊す城主の塒は塔の頂にて。
立ちはだかる無数の氷像。
降り注ぐ大型弩砲の斉射。
あぁ、城門を護るは二大の巨像。
振り下ろす青炎の大鎌。
触れし先に凍り、崩れゆきき。
身凍る。
剣鈍る。
目揺らぐ。
食料も凍り、足も動かぬ。
城内に忍び込むも吹雪に視界も開けず。
その時、光を宿す短剣が空を駆く。
たけき者を導く、光なり。
ただ真っすぐ敵陣へと延ぶる光は氷塔切り落とす。
あぁ、白雷が目の前に落ちし。
――城の王の現れなり。
「あぁ、そいつ。武器奪って首刎ねて殺したぞ」
雨宿りの最中にエレがとうとう口を挟んだ。
村の倉庫の中。自由に使っていいと言われた空間の中心でオーレはぽかんと口を開ける。
「もう! これからがいいところだったのに!!!」
「そうですよエレさん!? なに考えてるんですか!?」
「エレ酷いヤツ!」
「ブルルルルルル!!」
その場にいた全員──馬にまで──に非難を浴びせられ、さすがのエレも申し訳なさそうに頬を掻いた。
「あー、悪い。続けてくれ」
「もう台無しだ! このまま続きをしてもいいけど……また、みんなが忘れた頃にするから。じゃあ、次は『天を駆けき一矢』の詩をやります!」
「あぁ、谷岳の賊主か。そいつなら確か――」
「お兄ちゃんは黙ってて!! アレッタちゃん、口塞いでて!」
「アイアイサ!」
とびかかってきたアレッタに押し倒され、そのまま誰にも邪魔はされることもなくオーレの詩は続いた。
雨が続く中、やげて村人たちも集まり始め、時間も忘れてオーレの詩を聞いていた。語られる者が犬の腹の上で寝ていることなど気が付く訳もなく、英雄の詩は一晩中、その村を盛り上げていた。
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