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1-4 世界把握編:小さき転生者、冒険者ギルドで暮らす
44 ポーションの犯人発見しました
しおりを挟むみんなで本を片付けて、スタッフの食堂で三人で日替わりランチをもぐもぐと食べていると、ペルシェトさんがいち早く食べ終わって、ゆっくり食べる丸さんが食べ終わるのを横で暇そうに待ってる。
(ほんとうに美味しそうに食べるし、体型も太ってる訳でもないのに凄いよなぁ)
ちなみに美味しいのかイマイチなのは耳の動きでよく分かる。今日の日替わりランチは当たりみたいだ。
「丸リーダーも最近は楽しそうに勉強を教えてるよね~」
「当たり前よ。もはや憩いの時間と言っても過言ではないわ」
「クラディス君がいい子だからね~。スタッフのみんなは『外で遊んでないから心配だ』って言ってたけど、毎晩頑張ってるってわからないのかな?」
「まぁ……外の子は大体うるさ――いや、元気だからね。クラディス君も元気なんだけど、けがをしない程度に元気って感じ」
「何言ってるんですか、頬の小さな擦り傷、袖から見える腕の打撲痕、足のズボンの裾と靴下の少しの隙間に見えるテーピング。頑張ってる証拠ですよ」
僕の外に見える怪我を全て言って見せた。
「え、なんでわかったんですか……?」
「へっへーん、わたし治癒士だからさ」
「さすが、ペルシェトね気づかなかった」
「ま、私が作ったポーションを使ってると思うからさ、傷とかはすぐ治るよ! 気になってるようだったら診察もするし!」
親指を立てて、どや顔をして見せた。
多分、僕の体をペタペタと触っていた時に見えた傷なんだろうな。
「……っていうか、アレを作ったのペルシェトさんなんですね……」
「そう! 私の特別製よぉ! フフフ、ナグモさんが作って~って言ってきたから、空いた時間でパッと作ったんだ。ちゃんと安全だし、クラディスくんの体に合わせた調合だから安心せい!」
そのポーションを気絶する度にぶっかけられているとは思ってもみない様子で、僕も本人の前で「なんてものを作ってくれたんですか……!」の憤慨する訳にもいかないから苦笑いをしながら食べ進めた。
◇◇◇
「そういえば、今日ってスタッフさんの数が少ないですよね」
丸さんが食べ終わる前に食堂に着いてから気になっていたことを聞いてみた。
いつもは昼時になると溢れかえっている食堂が、目に見えて少なくて食べている人も急いで食べていたのだ。
勉強会の時の話だけど、ここのギルドって本当に広くてスタッフの数がとても多い。
この『デュアラル王国』と呼ばれる国のギルド本部で、この国の中にある支部のギルドの情報を総括しているという話を聞いた。本来なら、ギルドと言われる場所はこれほどまでに広くなく、できることも限られるらしい。
そんなギルドのスタッフの昼食をまとめて提供しているこの食堂はもちろん規模が広く、それでも収まりきれない程の多くの人が昼食時には集まり混雑をする。
だから異様なまでの人の空き具合で何事かと思ったのだ。
「あー、それね。明日のことの準備で忙しいからだよ」
「明日……?」
「あれ、何も聞いてないの?」
そういって、丸さんの方を向いた。
すると、口に含んだものを焦りながら飲み込んでいた。
「んぐっ……ん、ぁ、私は言ってないわ。ナグモが言ってるものだと思ってたのだけど……」
「ふ~ん、そっか……。まぁ隠すことでもないんだけどね。えーとね、明日は冒険者登録の日って忙しい日なの」
「ぼ、冒険者……! その話、詳しく教えてください!」
僕にとって冒険者になるというのは夢への第一歩だ。
ムロさん達と旅をすることになると、冒険者でなくては生計が成り立たなくなってしまう。
三人が冒険者なのに僕だけギルドスタッフやパン屋さんや村人だった場合、クエスト完了後の報酬金も僕には入ってこないということになるのだ。
冒険者ギルドだからいつかは冒険者に登録しようと思っていたけど……そんな日があるとは好都合だ。
「冒険者登録の日っていっても、一月に三回あるんだけどね。この時期は冒険者になりたいって人が殺到して、毎年毎年忙しいの」
「なるほどなるほど」
「だから明日と明後日は勉強会も休みにさせてもらわないといけないの、訓練は今日から明後日まで休みになる感じかな」
「はいはい……え? お休みなんですか?」
「うん、それだけ忙しいってこと! あ~今から億劫だよぉ~」
「あはは……聞いてるだけですけど、大変そうですね」
「うむぅ……。あぁ! そうだ! いい機会だからさ、クラディス君も登録したらどう? なりたいんでしょ? 冒険者」
「あ、そうね。受付が終わった後にで良ければさせてもらうけど、どう?」
「あっ、いいんですか!? はい! お願いします!」
忙しそうだったから無理だと思っていたけど、出来るんだったらお願いしたい。
「わかったわ。なら、明日の夜九時過ぎにスタッフルームに来てね。ちょうどその頃受付終了してるから」
僕は、丸さんの言葉に大きく頷いた。
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