【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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3-2 残穢足枷編:彼女の幸せは

147 またこれか

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 僕は727番の子と一緒に帰って寝たはずだ……。
 直近の記憶を思い返してみるが、僕の目の前に広がる空間に見覚えがなかった。そして、また体が自由に動かない。

(はぁ……またこれか)

 この世界に来た時に一度だけ経験したことあるこの感覚。
 あれはまだムロさん達と会って数日とかの話だったっけ。
 あの時は……この空間がタイルがひっくり返るようにパタパタと色つけられていったな……。
 暗い空間を見つめていると、前回と同じように空間に色がついて行ったのだが、前回の洞窟のような場所とは違った。
 周りが木々に囲まれ、僕以外の人は……いないか? 
 見覚えのない森林だ。ケトスとあった場所やティナ先生と訓練していた場所とは少し違う気がする。

「前にあった時から成長をしていないな」

 僕の背中から、聞いたことが無い声が聞こえてきた。
 声にも若干の曇りが入り、声の高さなどが微妙に分からないようになっている。

「楽しくない、全くと言ってもいいほどだ。不快感すら覚える」

 僕の前に出てきて、ようやく顔が見えたかと思うとまだ顔にモヤがかかってよく見えなかった。空中に浮かび、こちらを見下ろしている。服装は……これもぼやけているか。 
 手も足も何も動かないから前と同じようにその人の言葉を待っていると、景色が一度揺らいだ。

「俺を楽しませてくれ。それが君の――であり、――だ。その実力で楽しめるとは思えないが、それは仕方ない」

(この人は……ぼくに怒っているのか?)
  
 楽しませる? 成長をしていない? それに所々にノイズが走り、聞き取れないところがあった。

(なんではじめましての人に煽られないといけないんだよぉ)

 最近こういうの多いよ、知らない人に一方的に言われるの。辛いんだからね。
 何らかのメッセージ性があるのかな? 目は自由に動くから拾える情報を得ようと目を動かしても、森林、目の前に顔も分からない人がいること以外分からない。
 エリルが言ってたように僕の記憶とかそういうのに異物が混じったんだな。前も声が明確に聞き取れなかったし……。転生っていう時のバグみたいな感じだと思えばいいか。

 そう思っていると、前を歩いていた人の足が止まって世界が静止した。
 木から落ちていた葉が止まり、風で揺らいでいた風景がそのままの状態になる。

「……で、目が覚める、と。はぁ……」

 結局、夢っていうの以外情報がないんだよな。

「……んっ…………」

 床に敷いている布団で少女が寝返りをうっているのを見て、夢なんかどうでも良く思えて体を起こした。

「せっかくの休みなのに早く起きたな……。眠い……」

 外はまだ明るくないし、今日の予定なんか考えて無かった。この子を買うってこと以外頭になかったからな仕方ないけど……ゆっくり何かしながら考えたらいいか。
 予定何てそんなポンポン出てくるわけでもないしな。

 音を立てないようにキッチンまで行って料理を始めた。



      ◇◇◇



「朝は……そうだな、スープとパンと目玉焼き……とかでいいかな。好みとかわからないし」

 とりあえず、無難なやつを用意しておこう。
 
「それにしても……あの端末をつくれるまで技術が発達してるなら家電とかも刻印魔法や魔石を使わずに、科学力だけでどうにかなりそうなものだけどなぁ」

 ネットとかは使えないにしろ、何かしら応用は効くような気がする。
 あ、魔石やそういう研究が進んでる方が安心感があるのかな。金持ちのああいう場所で使う限定で開発された技術なのかもしれない。
 中央広場にあるモニターのようなモノも、魔法技術の応用で作られた映像記録や伝達する媒体を何かして何かしたモノなんだろう。アレができるということはカメラみたいな物もありそうだ。

(新聞には写真があったか。写真は少なくともいけて……割と文明が進んでるみたいだ)

 料理を作ったり色々準備をしながら昨日のことや、この世界の技術力のことを寝ぼけてる頭で考えていると、ベッドの方から軋むような音が聞こえてきた。

「あ、起きた~? おはよ」

「す、す、すみません……あるじより寝てしまっていて……」

「いいのいいの、そんな気を使わないで~。僕が訳分からない時間に起きただけだから」

「しかし……」

「あ、だったらお皿とか出しておいてくれない? そこの棚にあるから……の前に、朝起きたから顔洗う? まだ眠たいでしょ」

「いえ……大丈夫です」

「ホント? この部屋にあるモノなら自由に使っていいからね」

 流石にまだ慣れてないのか、よく眠っていたと思ったら罪悪感で押しつぶされそうな表情をして起きてきた。
 毎日どんな生活をしていたのか詮索するのは苦だよな。

「あのっ、お皿は……」

「二人分だから、平べったいのとスープが入りそうなそこが深いやつを2つずつかな」

「私にも頂けるのですか……?」

「そうだよ? え、要らなかった?」

「いえ、そんなことは……。ただ、今まで朝食など食べたことがなかったので」

「だったらゆっくり食べてね、無理だったら無理して食べる必要はないし」

 あまり広くないキッチンで二人で当たらないように盛り付けて、テーブルまで運んで向かい側に座ってと促した。しかし僕が座るまで立ったままだったので早く座った。

「あるじ」

「『あるじ』じゃなくてさ、名前で呼んでよ。クラディスって名前だからさ」

「……あるじ」

「あー、名前で呼ぶのはできない?」

「名前で呼ぶなど……そんな分不相応なこと、できません」

「そっか。強要するものでもないし、呼びやすい方でいいよ」

 エリルにも『ますたー』って呼ばれるし、ナグモさんにも『クラディス様』って呼ばれてるから今更何て呼ばれてもいいんだけどさ。『あるじ』か『あるじ』ねぇ……うーんモゾモゾする。

「……あっ、飲み物持ってきてなかった」

「! それは私が」

「いーよ、座っててー。ミルク? それともお茶? 何がいいかな」

「え、な、あの……」

「一緒に決める? そうしよっか」

「は、はい」

 ゆっくりと朝食を食べて、お皿を流しに持っていくと皿洗いをしようとしたので一緒に皿洗いをした。

 その間も明らかに僕に対してへりくだった態度を続け、リラックスも出来ない少女を見て、僕は頭を悩ました。

(どうしたらリラックスをしてくれるのか)

 この子は何がしたいんだろうか、女の子が好きなのってなんだろう。佳奈が好きだったのは、美味しいもの食べて、服を買って、化粧品を……。
 
「……っ、ぅ……」

 座って落ち着かない様子の少女を見て、あれこれ考えるのは辞めた。

「ね、今日はお出かけしよっか」

「お出かけ……ですか?」

「どこに行くかって言うのは僕もわからないけど、楽しみにしててね」

「分かりました」

 何を悩む必要があるんだ。この子に楽しく生きてもらいたいから僕は教えれることをできるだけ教えるんだ。好き嫌いが分からないんだったら探って行けばいい。それだけの時間はたっぷりある。

 寝巻きから外に出るようの服を着て、少女にも昨日買った服を着てもらった。
 ぼくは袖あまりの服。寒くなってきたからね。少女はボーイッシュな見た目になった。
 ふむ、ペルシェトさんが似合うと思って選んでくれた服だけど、この子とボーイッシュなファッションは似合っていると思う。

「よし、街に向かってれっつごー!」

「ご、ごー……」

 今日でこの環境に慣れてくれるとは思わないけど、少し楽しいことでも見つかってくれたら嬉しい。


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