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3-2 残穢足枷編:彼女の幸せは
148 ケトスなら何か知ってそう
しおりを挟む「で、僕のとこに来たって訳?」
「そう、ケトスなら何かオススメな場所を知ってるんじゃないかって思ってさ」
僕が訪ねたのは毎度お世話になっているティータのケトスくん。
彼はおさぼりポイントとか、くつろげる場所を知ってそうな気がする。ゆっくりしたい時とか、自分でのリラックスの仕方とかを知っていると思ったのだ。だから突撃した。
「知ってるには知ってるけどさ~。その前にどうしたの、その左の怪我」
「これは……ちょっと魔物にやられちゃったんだ。骨とかちょっと色々と……はは」
「訓練のやつ?」
「うん」
「はぁ……。ね、えーとそこの女の子さ、クラディスの事よろしく頼むよ。無茶するやつだから止めてあげてね」
僕の後ろに立ってケトスのことを睨んでいた少女はその言葉に無反応で返した。
「で、その子が今話題の子って訳か」
「話題って……? なんの話?」
「新聞に書いてた。同じ顔が載ってたよ」
「まじ……?」
「まじまじ」
元戦闘奴隷727番の知名度を僕は侮っていた。それもそうか連勝記録を樹立して、30連勝達成後に買われたんだ。顔写真付きで載るのも納得が行く。
だったらどうしよう、それで一々絡まれるのは僕もこの子も大変だから……。
「顔を見せない様にしたらいいんじゃない? 何か持ってない?」
「お、そういういことなら昨日買ったモノが役に立ちそう」
僕は袋に収納していた帽子を取り出して、深く被らせた。
「うん! やっぱり」
「おぉ、それなら顔が見えない」
「服を買った時に一緒に買ってて良かった。日差しが強い時があるからとそれ用にと思ってたんだ、男物だけど我慢してね」
長い髪の毛の上に、深く被れるような少し後ろに長い紺色の帽子を被せた。
うん、僕のセンス的には似合っていると思う。
「それならゆっくり出来そうだね。じゃあ案内するよ」
「よろしく頼みます」
ケトスが先頭に立って、二人は後をゆっくりとついて行く形で歩いていく、どんな場所に着くのか楽しみだ。
しばらく歩いて来た場所は今まで一度来たことがない広く開けた空間だった。
風通りが良く、木がそこらに生えている。だけど視界不良とならない程度の自然が身近に感じられる場所。
広い公園みたいな……遊具こそないが、ベンチなどが点在してゆっくり休めれそうな場所だな。
そこに入って行くと、ケトスはある場所で止まった。
「はい、ここが僕のお気に入りお昼寝スポット」
そこはいくつも並んでる木が作る木陰で覆われている場所だった。
太陽が登り始めても木陰で日光が当たらないし、沈み始めてもギリギリ木陰になるような場所に、二つの背もたれがないベンチが並んでいた。灰皿とか用意されてそうな休憩スポットだ。
「気温が高い時とかにここで休むと最高だろうなぁ」
「でしょ、わかってくれると思ってたよ。それに僕はここでよく寝てるから、見つからなかったらここに来てね~」
「……それはさすがに不用心じゃない?」
「それは安心して。ここって元々憲兵の訓練場の一部だったんだよ」
「憲兵?」
「国に仕える兵士の中で、悪いことした人らを罰する兵士さんのこと。その人らの西部の拠点がこの後ろにある大きな建物」
ベンチで寝転び出したケトスが言う方向を見てみると、ナグモさん達がいるギルドより少し小さめな建物が見えた。同じような造りだけどギルドのようなウェルカム感は無い。どこか厳格で厳かで立ち寄れない雰囲気がある。警察署みたいなものか。
「ここでたまに訓練してるよ。だからここは安心出来るってわけさ、憲兵の建物からここって見えるし、寝てても平気」
「悪いことするとすぐ捕まる場所か……。だけど万が一のことを考えたら」
「襲われても返り討ちにするよ、魔物で慣れてる」
「森で過ごしてる人にとっては、安心なんだろうねぇ……んー」
「――そこの眼帯のおにーさん!」
ケトスの隣に座って木陰を見上げていると、サッカーボール程の大きさの玉を持った子どもたちが駆け寄ってきた。
「どーしたの?」
「一緒に遊ばない? 人数足りなくて!! 暇そうだし!!」
「暇、暇……ではあるけど。……いいよ、遊ぼっか」
「よっしゃ! ありがとー!」
「それならわたしも……」
「そしたらまた人数足りなくなるからそこで休んでていいよ。ケトスはやらないでしょ?」
寝転んでメガネを外しているケトスに話を振ると、手を横に振って「参加しませんよ」とアピールをしてきた。
「分かった。じゃあ、行ってくるね――おにーさんは玉遊び苦手だけど大丈夫?」
「俺らがルール教えるから大丈夫!」
「なら安心だ、よーし、やるぞー!」
骨折した腕を極力動かさないように玉遊びをしようと思うけど、僕がいない間、ケトスと二人でどんなことを話すのだろうか? 気にはなるけど、喧嘩はしないだろう。
子どもの説明を受けている間、二人の様子を見ていたら注意を受けた。「説明してるでしょ!」と言われたので、真面目モードの頭を切りかえた。
久々の息抜き、全力で相手してやるよお子さん達! 僕を本気にさせたのを後悔させてやる!
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