【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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4-1 理外回帰編:大規模クエスト

192 大規模クエストの終了

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 魔物モンスターに襲われたシルバーの子を連れて森から出る前に、前線をもう少し下げることをリーダーに代表した人に言っておいた。

(のっぽくん、頑張れ。あとは任せた)

 負傷していた子をペルシェトさんの所に預け、あの他種族パーティーが担当している場所を聞いてそこに走っていくとゴールド等級の冒険者が奮闘していた。僕達以外にも異変に気付いている人がいたみたいだ。

 匂い袋でおびき寄せられた魔物モンスターは中層程にいるゴブリン~オークまでが多く、シルバーの子では対応がしきれない。

(……これが「英雄になる」ということに必要なんだろうか)

 予定の3時間を待たずして、クエストは切り上げられた。
 結果、この試験運用の大規模クエストでの死傷者は数人、多くの負傷者が出てしまった。

「はぁ……嫌になる」

 苛ついた様子でペルシェトさんは髪を掻いた。

「あのパーティーを罰せられたりは出来ないんですか?」

「厳しい。それにフーシェンに入ってたんでしょ? 余計に手が出しづらい……匂い袋も多分入れ知恵だろうし」

「そんなに酷い血盟なんですね……」

「……君の体を貫いたのは? アンちゃんとクラディスくんを殺そうとした血盟の名前は? クラディス君たちが一番分かってることでしょ」

「そう、でしたね」

 スケアのパーティーがフーシェンに入っていたとは思ってもみなかった。
 「利害の一致」と言っていたけど……冒険者を殺すためには最適の隠れ蓑ってことか。
 自分たちは弱いから、自分を高めると同時に周りを陥れて、より際立つ存在になる……それが出来るのもまた才能なんだろう。普通はそこまで出来ない。

「ギルドの上の人らが勝手に呼んだから、何か起きると思ってたんだよなぁ…………ほんと、余計なことをしやがって」

「? 自由参加じゃないんですか?」

「そんな訳。最近、何かと危なっかしいから予めこっちでリストアップしてたよ。なのに『同年代ならば、彼らを呼ばねばなるまい』とか言ってゴリ押ししてきてさ~」

 こっちが事前に色々と下調べして作り上げた計画を、上役の人がその場で思いついたことをねじ込んで、台無しになる~って話は元の世界でも聞いたことがある。

「あはは……ギルドも大変みたいで」

 コッチの世界でもそういうのは変わりないのか。

「無能な上司を持つと苦労するよ。で、失敗は私に押し付けられると。知ってた知ってた。……今日は美味しいごはん食べよ。どうせ、明日には怒られるし」

 唇を突き出して不満をこぼしていたペルシェトさん。
 あの狼人ウェアウルフのパーティーは知名度はあるからなぁ。ソレ目的でやったんだろうけど。
 本当に、余計なことをしてくれやがった。


      ◇◇◇


 そこからは、どうも不完全燃焼な結果だったし、日も暮れてきたのでケトスに新しい部屋を紹介するのも兼ねて夕飯に招待。
 部屋の中をウキウキしながら探索しようとしていたのをアンが「散らかるからやめろ」と一括していた。
 二人がいがみ合ってるのを聞きながら冷蔵庫の中にある物で作るから注文を聞かずにシチューを作っていた。
 確か前来た時は……カレー、いやカリーをしたんだっけ。

「んー! 相変わらず美味しー!!」

「そりゃどーも」

「あ、そうだ。アンさんはクラディスの料理の味がわかるようになったの?」

「……嫌な事を思い出させるな」

「美味しいでしょ」

「普段伝えている、お前の前では言いたくない」

「アンはいつも美味しいって言ってくれるもんね」

「へぇ~! 前は分からないっていっグァ――」

「食事は黙って食え……!!」

 相変わらず美味しそうに食べてくれるケトスとアンが机を挟んで向かい合ってる姿を見て、何だか涙が流れそうだった。子の成長を見ている親の気分だ。
 アンはスプーンの持ち方も上手くなったし、言葉遣いも……まだちょっと厳しい時があるけど、伸び代だと思えば……うん。
 
「あるじ、どうしたのですか?」

「ううん、アンが可愛いなぁって思って」

「か、かわっ……なにを、この男の前で……可愛いと……わ、わたしは。嬉しいですが……でも、その……っ」

「あ、胃袋だけでなく心まで……」

「その言い方は若干引くけど……」

「クラディスも言い方に容赦なくなってきたよね」

「ケトスくらいにしか言わないよ」

「嬉しいような悲しいような」

 そう言うとシチューをペロリとたいらげてお代わりをしに行った。
 あのペースだと僕の分も無いかな、前みたいな感じだ。


      ◇◇◇


 かんっ。

「ぬぁ……」

 自分の分のシチューを食べていると、ケトスが2回目のお代わりをしに行った辺りで全部なくなった音が聞こえた。
 お代わりをしようとしていたアンの前でなった鍋の底からなった金属音。
 怒りに震えてケトスを攻撃しようとしたけど、シチューがこぼれるのを察して渋々と僕の隣の椅子に戻ってきた。

「僕のあげるよ」

「あるじは最近食べてないので、それは受け取れません」

「ええっ、でもアンもお腹すいてるでしょ?」

「そうですが……悪いのはこの男なので」

 前に座って2回目のお代わり、つまり3杯目を1杯目と同じテンションで食べてるケトスをキッと睨んだ。
 そんな視線もなんのその、逆に「いつも食べてるんだから、今日くらいは食わして」と言ってスプーンを口に運んだ。

「……って、そうだ。今日のことで聞きたかったんだけど、英雄ってみんな憧れるモノなの?」

「あ、あの狼人ウェアウルフの言ってたの?」

「そうそう、他人を蹴落として自分が上がるってやつ。そこまでしてなりたいって思えるものなのかな」

「ん~…………なりたいんじゃない? 

「へー、それはどうして?」

「小さい時から読み聞かせられたり、歴史を学んでたりしたらかつての英雄の話とかはすぐ耳にするし。だから冒険者って多いんだと思うよ」

「歴史か、そうだよな……じゃあ、ケトスもあれくらいやってまで英雄になりたいって思ってる?」

「……まぁ、あそこまでじゃないけど……んー、なんて言うんだろうね。なりたいとは思うけど、踏ん切りがつかないというか。他にやりたいことがあるって言うか。ちょっと複雑なんだよね。

 スプーンを口に入れたまま、

「僕ってどっちかっていうと、元々彼ら側だったし」

「へぇ、そうなんだ…………ん?」

 シチューをクルクルとスプーンでかきまわしてシレッと耳を疑うことを言った。
 
「それって、どういうこと……?」

「あれ? 僕って数年前まで【勇者】じゃなかったんだよ」

「…………え?」

 理解しようとした結果、さらに分からなくなるような返答をもらってしまった。
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