【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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4-4 理外回帰編:始まりの地の異変

220 ターン制で戦うボスとの戦い方

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 直径20メートル程の岩石と土で作られた空間。

 下位迷宮の5階層目に存在するそこは『ボス部屋』と称され、それまでの階層より濃く出ている魔素によって強個体が作り出される場所だ。

 迷宮内に含有されている様々な魔素が入り混じり、その中でも特別多かった系統の魔素によって形作られ、出現をする。

 迷宮内にいる魔物は特段凶暴化し、迷宮攻略を望む冒険者一党を襲うようになっている。原因は未だに究明をされてはいないが、仮説として「単に縄張り意識が強い」や「全てが魔素で作られたことによる複雑的思考への弊害」などが上げられる。

 どのみち、勝つか負けるかの勝負をしかけてくるのに変わりない。

 そしてそれも、この魔物に関しても例外ではない――ハズ。

 聞き耳を立てていたら――聴覚などないが――いつの間にか静かになっていた。

 ゴゴゴと鈍い音を立て骸骨騎士が顔を上げてみると、そこには二人の侵入者が横になっている。
 死んだ? 敵意は感じられない。寝ているのか。
 目で確認――眼球などないが――しても、これは、おそらく。


 好機。


 寝ていた場合に起こさないよう体を動かし、防御の構えから攻めの構えへと転じる。
 端に追いやられていた体をズシリズシリと前進させ、二人が横になっているところで制止。
 ぐおんっと鎧が擦れる音。黒炎を纏う大剣を振り上げた。
 同時に殺れる、絶好の機会。
 そして、その重く鋭い大剣を振り下ろした――……。

「本当に来るとは」

『……!?』

「──『風よ』!」

 クラディスは体をおこしながら手を突き出した。脳内ではエリルの解説が響いていた。

 ――いいですか? ますたー。よく聞いてくださいね?

 吹き荒れた風が大剣に纏っている黒炎が骸骨騎士側へと黒炎を煽り、煌めかす。
 同時、消していた魔素を一気に爆発させてアンが跳ね起きた。

 ――魔素は有限、そう言いましたよね?

「アン、今だ!」

 ――ならば、全てを同時に熟す事なんてできっこないんですよ!

 エリルの言った言葉を思い出しながら、少年はホワイトボグの小刀を手元へ取り出して。

 ――あの魔物はおそらく攻めと守りを同時にできません。
 
「核を狙って……最大威力の……」

 アンが無慈悲ナ一撃カディッツオロを撃つ為の貯め動作に入る。ぐぐぐと黒い拳殻が引かれ、クラディスの目には白い魔素が視界いっぱいに広がった。
 間髪入れずに攻撃をしてこようとする骸骨騎士の大剣を小刀で受け止め、風で煽る。

 ――だから、カウンターパリィが効くんです!
 
「……レヴィさん、早速使わせてもらいますね……!」

 クラディスはアンが撃ち出す寸前に反対の手に魔法杖を召喚。
 魔法攻撃や魔素伝達速度上昇が付与された杖を持つということは、撃つ攻撃はやはりこれ。

 ――ですが、魔石が通常より硬い可能性も考慮し……修復不可能な一撃をぶつけてやりましょう!

「『小範囲爆発エクスプロージョン』!」

「『無慈悲ナ一撃カディッツオロ』……!」

 重ね合わせた大技二つ。
 それは、ゴゴゴ、と狭い空間が揺れるほどの威力。
 純粋なモンスターであれば、これで片がついていただろう。

 しかし────骸骨騎士は、片方の剣を盾にして、それを凌いだ。



      ◇◇◇



「なっ」

「これは……!?」
 
 そうか。……そうか!! そうだ。
 攻撃する時に剣は堅く、重たくなる。攻撃時の魔素の行き先は──剣。

 ──今の攻撃でも……倒せないのかっ!?

「……」

 顔に絶望が覆いかぶさった。
 緩めていた手を、ぼくは再び強く握りしめた。

「……い、やっ、ちがうだろ……っ! そうじゃない、こうじゃないッ」

 ぼくは、絶望をするのに慣れすぎだ。
 希望を見出せ。コイツの武器の内、一本を壊せれたんだ。
 骸骨騎士の次の動作は護りだろう。
 それに向かって、魔素が移動しているはず。 
 だから、やるべきことは──

「おい、バケモノ!! いつまでそうして逃げるつもりだよ……!!」

『……』

「こっちは全力出してオマエを倒せなかったんだぞ。騎士っていうくらいなら、正々堂々戦ってみろよ!!」
 
 魔素が尽きかけの身体。震えながらぼくはそう叫んだ。
 こっちは満身創痍。全力を一気に出したから、息も絶え絶え。

「なんだよ。ビビってんのか……? かかってこいよ!」

 しばしの沈黙の後、骸骨騎士はこわれた剣を修復しながら、ぼくの目の前に剣を構えた。

「……乗ってくれんのか。助かるよ、ホントに」

 大技の反動で壁の近くで倒れ込んでいるアンの前に立ち、鋭く息を吐いた。

「あるじ……」

「任せて。……倒すから」

 アンが驚いたように目を開いている。
 でも、ごめん。
 こうでもしなきゃ、ぼくたちは勝てないんだ。

「……恵まれてるよな、ほんと」

 自分が死を感じた相手と戦うのは、これで何回目だろうか。

 ティナ先生とやった訓練の初日の狼を相手にした時とそして今……二回かな。
 詳しく言えばもっとあるか。でも大きなところで言うとここら辺だろう。

「ふぅ~……ッ……」
 
 死ななかっただけで幸運、ましてやトラウマになりかける前に挑戦させてもらえることなんてそうそうない。

 ここで、こいつを倒しておかないと、一生ズルズルと引きずる。
 アンと協力をして戦えないのなら、僕が、一体一で倒さないと。

「行くぞ、化け物……!」

 僕の声に呼応するように、向こうも戦闘態勢になった。
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